「ビジョン2030」と経済特区「NEOM」
危機感を持った、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2016年4月に「ビジョン2030」と題された、根本的な経済改革プランを打ち出しました。
それは「サウジ・アラムコ」をニューヨーク証券取引所にIPO(新規株式公開)し、それによって得られた資金でサウジアラビア経済をこれまでの石油一辺倒から、より多角化することです。
またサウジアラビアの西端で、紅海を挟みエジプトを望む過疎地域に5千億ドルをかけて「NEOM(ネオム)」という新都市を建設することが発表されています。
なぜ新都市建設が必要なのでしょうか?
サウジアラビアは「ワッハービズム」と呼ばれるイスラム原理主義の国で、いろいろな戒律が厳しいです。その関係もあってサウジアラビア社会は後進性をはらんでいます。いくら経済だけが速く変化して行こうと思っても、社会がそれを受け容れないリスクがあるのです。
そこでちょうど中国が計画経済から市場経済へ移行する際、経済特区を設けて試験的にそれを導入したように、サウジアラビアは宗教の面で「治外法権」的な経済特区を設けることで、既存の社会規範との軋轢を最小限に止めながら、急ピッチで新経済を構築する手法を打ち出したのです。
これにより(1)制約の多い雇用慣習、(2)労働者の教育水準のミスマッチ、(3)政府機関の非効率など、サウジアラビア経済の足を引っ張る要因となってきた問題を克服する考えです。