「円売り・日経平均先物買い」ポジション、「日経平均プット売り」ポジション整理進む

 7月11日~8月5日まで、日経平均を4万2,000円超えから3万1,500円以下まで急落させたのは、海外投機筋のデリバティブ売買でした。

 ただし、下げの前半と後半で、主なけん引役が異なります。

 4万2,000円超えから3万6,000円辺りまでの下げは、主に海外投機筋の「円売り・日経平均先物買い」ポジション解除の売りがけん引しました。3万6,000円より下の歴史的急落は、日経平均プット売りポジションの解除に伴う売りがけん引しました。

 詳細な説明は割愛しますが、以下のデータから、投機筋の「円売り」・「日経平均先物買い建て」「日経平均プット売り」が解消されていっていることが分かります。

日経平均と裁定買い残高の推移:2021年7月1日~2024年8月30日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

日経平均3万5,000円PUTオプション(8月限)の価格推移:2024年7月11日~8月8日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 8月限3万5,000PUTは、日経平均が4万2,000円を超えていた7月11日には10円でした。そこでPUTを100枚など、大量に売っていた投機筋がいたと考えられます。ところが、日経平均が3万5,000円を割れて急落した時には、一時4,000円以上まで上昇しました。デルタ値の急上昇によってリスクが急激に高くなったPUT買戻しの必要が出たと考えられます。

日経平均急落の最終局面でPUT解消の売りが出ることは多い

 日経平均下落の最終局面で、日経平均がサプライズとなる暴落に見舞われることがあります。2016年の下落(チャイナショック、ブレグジットショックの下げ)にも影響がみられました。

2016年の日経平均

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 今回の歴史的急落・急騰は、米景気への見方が揺れていることから起こったものですが、デリバティブ売買によって、過剰反応ともいえる大きな動きとなりました。

 株は、短期は需給、長期はファンダメンタルズで動きます。海外投機筋のデリバティブ売買の影響が短期的に極めて大きいものの、長期的な動きは、投機筋の売買では決まりません。ファンダメンタルズで決まります。

 日本株は割安で、5年以内に5万円まで上昇すると予測しています。

 ただし、短期的な波乱はまだ続く可能性があります。だからリスク管理が大切です。短期的な急落・急騰に惑わされることなく、時間分散しながら日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。

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