見事な立ち回りでリーマンショックを乗り切った
──エルさんは最初から米国株に投資していたわけではないんですよね。
新卒で入社したのが大手金融機関で、就職した2年目に、当時の上司から「社会勉強のため、株式投資でもやってみたらどうか」といわれたのがきっかけで投資を始めました。
本来、金融機関に勤務していると個別株投資はできないのですが、当時は今ほど厳しくなかったし、それに私はインサイダー取引の疑いをもたれるような立場ではなかったので、金融知識を得る勉強として、勧めてくれたのでしょう。
──最初は日本株から始めたのですね。
当時は米国株に投資している人なんてほとんどいなかったですからね。私も当たり前のように日本株を買いました。最初、新日鉄(現日本製鉄:5401)を買ったのを覚えています。
──成績はどうでした?
個別株だけでなく、投資信託──当時はインデックスファンドではなくアクティブファンドが主流でしたが──も買っていましたが、悪くはなかったですよ。
──成功事例があったら教えてください。
ファーストリテイリング(9983)です。1994年の上場時は、かなり高値がついたのですが、その後低迷した時期があったんです。
それで、今こそ買いだと思って購入したら、それからしばらくして「フリースブーム」が起こり、株価が急騰しました。投資金額は多くなかったのですが、そこそこまとまったリターンがあり、うれしかったですね。
──いい成功体験ですね! その後もずっと順調だったのですか?
順調だったのですが、ご多分に漏れず、リーマンショックでやられました(笑)。毎月それなりの金額を投資に回していたこともあり、すでに資産は数千万円に及んでいました。
そのすべてを株式に充てていたため、半分ほどに減ってしまいました。ただ、幸いなことに1、2年でピーク時まで戻すことができたんです。
──リーマンショック時は、なかなか苦境から脱することができない個人投資家も多かったですよね。どんな方法で取り戻したのですか?
1つは、焦って売りまくるのでなく、じっくり構えたのがよかったと思います。もう1つは銘柄構成を変えたことが功を奏しました。
大暴落が起こると、機関投資家はリスクをヘッジするため、売りに回ります。ところが、優良とはいえないような銘柄は、売りが殺到して、売りたくても売れなかったりします。
そこで、何が起こるかというと、本当は売りたくない超優良銘柄を手放すことがあるわけです。つまり、大暴落したときは、我々個人投資家にとって、普段は手が出せないような超優良銘柄を買うチャンスなんです。
リーマンショックのときも、優良銘柄が自分でも買える価格で売られていて、そのチャンスに買い集めました。
──本来は優良銘柄なのだから、相場が戻ったときの反発が早かったのですね。
そういうことです。
──見事な立ち回りですね。
すでに投資を始めてから何年もたっていたし、その間投資関係の本を読みまくったりもしたので、こういう状況になったらこうしよう、とシミュレーションできていたのだと思います。戻ってきたときはほっとしましたし、投資を続ける上での自信にもなりました。