11月28日
支援材料不足で調整圧力、新たな成長戦略の構築がカギに

BOCIは過去1カ月間に香港、北京、シンガポールの投資家100人超から話を聞いた上で、中国インターネット・セクターに対する市場の懸念要因として以下の点を指摘した。◇2016年7-9月期以降のネット企業の業績見通し、◇セクター全体の支援材料の欠如、◇主要銘柄の年初からの株価パフォーマンスの低迷――。11月初めに発行したリポートで、BOCIはネット事業の焦点が「ユーザー基盤の拡大」から「ビジネスのマネタイズ(収益化)」にシフトしたとし、ネットセクターの成長ステージが第2段階に突入したと指摘。同時にセクター全体が17年に向け、事業見通しを再設定しているプロセスにあるとし、新たな成長戦略を打ち出せるかどうかが、今後の値動きを左右する見通しを示した。中長期のカタリストとなるのは、「フィンテック」(スマートフォンやビッグデータなどを活用した金融ITサービス)やクラウド、O2Oなどの拡張可能性、さらにAR(拡張現実)/VR(仮想現実)分野の発展。BOCIは次の成長ステージに向けたネット各社の備えが、短期的には市場の慎重見通しを招くとしながらも、海外同業に比べた中国ネットセクターの高成長見通しに言及。相対的には魅力が大きいとしている。

BOCIはネット銘柄20社を対象に16年7-9月期の業績を分析したが、それによれば、うち8割の売上高、利益が市場の予想通り、あるいはそれ以上の水準を達成した。ただ、全体の5割超は以下の2つのケースにあてはまった。◇16年10-12月の売り上げ見通しが市場予想通りか、それ以下だった、◇10-12月期の業績見通しを明らかにしておらず、先行き不透明感が残る――。投資家は現在、向こう6カ月の明確な収益見通しを求めており、ネットユーザー数の伸びが減速する中、売り上げ成長の持続可能性がマーケットの焦点になりつつある。このところの株価低迷は市場の先行き懸念を反映したものであり、直近の決算発表日に値上がりしたネット銘柄は半数以下にとどまった。

ネット企業の新たな事業戦略は中長期的に機能するとみられるものの、市場は過去10年にわたる急成長時代を経た後の収益見通しのリセットを必要としている状況。ユーザー基盤の急拡大を受けたネットセクター全体の“ウィン・ウィン・ストーリー”は、17年にはもはや期待しにくく、BOCIはこうした中で各社の株価を左右する要因として、「エコシステム」のアップグレードや17年に始動させるべき新たな事業戦略を挙げている。

個別銘柄を見ると、17年のトップピックは「WANT」こと、微博(米WB)、アリババグループ(米BABA)、ネットイーズ(米NTES)、テンセント。うちテンセントに関してはゲーム、広告、決済、コンテンツ定期配信などの複数分野に深く根ざしたソーシャル分野のエコシステムを評価。さらにアセット・ライト(資産軽量化)型のビジネスモデルを同業他社との差別化要因として指摘している。