8月29日
工業企業の利益成長率が7月に加速、「供給側改革」を受けた余剰生産改善が追い風に

中国国家統計局の発表によると、国内の工業企業(年間売上高2000万元以上の企業)の税引き前利益総額は7月に前年同月比11.0%増と、6月の同5.1%増から加速した。1-7月では前年同期比6.9%増と、1-6月の6.2%増から加速。15年通年の前年比2.3%の減益と比べて明らかに改善した。販売状況の回復が利益成長を後押ししている要因であり、7月の工業企業の売上高は前年同月比4.3%増と、5月の3.0%増、6月の3.8%増から上向きに推移した。ただ、粗利益率は1-7月に14.12%と、1-6月の14.21%からダウン。15年通年の14.32%を下回る水準となった。

工業企業の売掛債権は1-7月に前年同期比9.4%増と、増収率を上回る増加ペース。12年前半以来のトレンドが続く形となった。また、完成品在庫は1.8%減(15年には前年比3.3%増)。過剰設備削減や在庫処理を背景に、これで4カ月連続して減少した。

工業企業の7月の利益回復を支えた要因は主に、生産者物価の下落率縮小や営業費用軽減、前年実績の低さなど。7月には主に鉄鋼・非鉄の価格回復などが寄与し、工場渡し価格指数の下落率は前年同月比1.7%(前月は2.6%)に縮小。購買価格指数も2.6%(同3.4%)の下落率に落ち着いた。また、コスト指標では売上高100元当たりの営業費は6月に前年同月比0.31元低下した後、7月(86.08元)は0.42元下がっている。

工業企業利益を業種別に見ると、自動車セクターの回復が鮮明。6月の前年同月比4%の減益から、7月には同19%の増益に転じた。売れ行き回復や販売費の低減、前年同期の比較対象値の低さによるもの。一方、鉄鋼、非鉄精錬加工業の利益も、政府主導の「供給側改革」に伴う生産過剰の改善を受けて急速に回復。1-7月には前年同期比131.5%増、23.2%増を記録し(1-6月は83.6%増、16.8%増)、全体の利益上乗せ分に占める両セクターの貢献度は47.5%に達した。対照的に苦戦したのは石油・ガス採掘業、鉄類採掘業、電力・熱供給業で、1-7月にそれぞれ前年同期比149.9%、14.5%、4.5%の減益だった。(1-6月は161.7%減、13.1%減、3.7%減)。

BOCIは7月の利益総額の回復について、「供給側改革」を背景に過剰設備が深刻だった一部業界の業績が改善したことや、商品相場の回復、前年同期実績の低さなどが寄与したと指摘。この先の工業企業利益について、慎重ながらも楽観的な見通しを示した。中国政府はこの先、過剰設備の是正、不動産在庫の解消、過剰債務の解消、企業コストの圧縮などを主要課題とする「供給側改革」を一段と加速させる計画。これに伴い鉄鋼、石炭、セメントなどの供給過剰体質がさらに改善に向かい、向こう数カ月にわたって利益回復傾向が続く可能性が高まっている。ただ、不動産市場の軟化や民間投資の低迷を背景に、中国経済は引き続き下押し圧力にさらされており、BOCIはこの点でやや慎重。また、過剰債務が問題となる中、一段の政策緩和余地が限られる現状を指摘している。