3月18日
不動産相場は向こう12カ月で10%下落見通し、主要銘柄株価に一段の調整余地

香港政府が2013年2月、住宅取引印紙税の税率を倍増させるなどの過熱抑制措置を導入して以来、香港系不動産デベロッパーの株価は平均15%調整し、ハンセン指数を10%の幅でアンダーパフォームした。実際の不動産市況に目を向けると、価格指標となる「中原城市先行指数」(CCL)のこの間の下落率はわずか4%。デベロッパー銘柄の株価動向を不動産価格の先行指標と捉える香港市場では、「不動産相場が向こう12カ月間にさらに10%下げる」との見方が優勢となっている。そこで、不動産銘柄にこの先一段の調整余地があるかどうかが注目ポイントとなるが、BOCIは「バリュエーションの面から一定の下落余地が残る」と見方。中国本土の景気減速や利上げの可能性などをその理由に挙げている。

香港系の不動産開発銘柄は現在、1株当たり予想NAV(純資産価値)を平均47%下回る低水準で取引されている。ただ、BOCIによれば、現在株価に織り込まれた不動産相場の下落見通しが、予想NAVには反映されておらず、これがディスカウント率を拡大させている最大の要因。ブルームバーグおよびファクトセットのコンセンサス予想をみる限り、13年2月の不動産締め付け以来、NAVの下方修正はほとんど行われていない。一方、ヒストリカルデータに基づくBOCIの分析によれば、向こう12カ月間に不動産平均価格が10%下落すると仮定した場合、不動産銘柄のNAVは平均およそ25%の下方修正に値する。この結果に沿ってNAVを調整すると、現在株価の対NAVディスカウント率は22%と、ヒストリカル平均値の21%にほぼ並ぶという。

仮に2011年の欧州債務危機当時の状況をあてはめた場合、不動産銘柄の一段の下落余地は計算上17%となり、個別では新鴻基地産(00016)が12%、長江実業(00001)が20%、恒基兆業地産(00012)が23%、信和置業(00083)が12%。BOCIは2011年当時に比べ、世界経済が相対的に堅調であることを理由に、実際の下落余地が分析結果より小幅にとどまる可能性を指摘している。ただ、その一方で中国本土の景気減速や利上げ観測に触れ、「現在株価がヒストリカル平均値並みであっても、市場環境を全面的に反映しているとは言えない」との見方。この先一段の下落余地が残るとの見解を明らかにしている。

なお、BOCIは今後予想される香港不動産市場の調整について、アジア通貨危機があった1997年当時やリーマンショックの2008年当時に比べて小幅にとどまるとの見方だ。ただ、この先の不動産相場の下落見通しを受け、開発銘柄より、投資(賃貸)銘柄を選好。オフィス需要の地理的分散化の恩恵が及び、かつ現在株価が予想NAVを大きく下回る太古地産(01972)などの不動産投資銘柄が当面、開発銘柄をアウトパフォームするとみている