5月14日
13年のカジノ総収入は前年比16%増の見通し、VIP部門は成長減速へ

マカオのカジノ総収入は2009年から11年まで、VIP部門の好調を背景に急成長を遂げた。また、最近のVIP収入の回復傾向が市場の楽観見通しを後押ししているが、BOCIはVIP収入の一段の拡大余地は限られるとの見方だ。政治・経済両面における中国の変化がカジノ業界の長期ファンダメンタルズにプラス効果を及ぼすと予想しながらも、新たなカジノリゾートの開業が早くても2015年下期となる見通しに言及。中期的には一般客部門の富裕層がカジノ運営各社の利益成長を支えるとみている。また、短期的にはカジノ銘柄の再評価につながるような支援材料に欠けると指摘。短期的な慎重見通しを示すとともに、セクター全体に対する中立的な見方を明らかにしている。

BOCIは2013年、14年のカジノ総収入について前年比16.3%増の3540億パタカ、15.2%増の4070億パタカを予想(1パタカ=0.95HKドル=約12.6円)。中国の社会、経済、政治面の変化を理由に、VIP部門がカジノ総収入や利益成長を支える構図は続かないとしている。国内経済が急成長から安定成長に移行する中、「富の創造」もペースダウンする見通しという。

13年、14年のVIPカジノ収入に関する予想は前年比8%増。12年にみられたジャンケット(VIP世話人)とVIPとの関係の変化が中期的に続くと予測した。ジャンケットはVIPへの貸し付けに対して慎重姿勢に転じている。また、中国内陸部の富裕層の取り込みに向けて動いているが、BOCIはこうした戦略の効果を疑問視している。

一方、一般客部門のカジノ収入は13年、14年に同24%、22.4%の伸びを示すと予想。中国本土からの平均的な顧客は今のところ、カジノ収入を押し上げるだけの財力に欠けるとし、主に富裕層が市場拡大に寄与するとみている。また、マカオでは短期的に新たなカジノリゾートの開業が見込めないことから、カジノ来場者の伸びも安定的なペースで推移する可能性が高い。

広珠(広州-珠海)城際鉄道・拱北区間の開通、ボーダーの拱北イミグレーション施設の拡張といったインフラ整備や、橫琴島のテーマパーク長隆(Chimelong)の開業については、集客面で寄与するまでにはある程度時間がかかるとの見方。短中期的にはカジノ収入への貢献はさほど期待できないとみている。

BOCIによれば、カジノ収入の上振れ要因は中国の予想外の金融緩和など。逆に新指導部による汚職取り締まり措置の予想以上の長期化あるいは強化が下振れリスクにつながるという。個別ではコタイ地区でカジノリゾートを運営しているサンズ・チャイナ(01928)、銀河娯楽(00027)の収益見通しを楽観。両銘柄の株価の先行きに強気見通しを示す一方、メルコ・クラウン(06883)に対しては慎重。運営施設がほぼ「シティ・オブ・ドリームズ」に限定されるため、成長力が相対的に弱い点などを指摘している。