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日経平均2万円後の課題:「ROEを上げるよりEORを下げよ」
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

日経平均2万円後の課題:「ROEを上げるよりEORを下げよ」

2015/4/14
先週、日経平均株価は一時、およそ15年ぶりに2万円台の大台を回復しました。私は1月15日にテレビ東京に出演させていただいた際、日経平均株価は今年21,000円を目指すとの予想をお示ししましたが、今もその見方には変わりはありません。
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先週、日経平均株価は一時、およそ15年ぶりに2万円台の大台を回復しました。私は1月15日にテレビ東京に出演させていただいた際、日経平均株価は今年21,000円を目指すとの予想をお示ししましたが、今もその見方には変わりはありません。しかし同時に、長期的な日本の株価となると、やはり人口が減少していく中ではどうしても上昇余地は限られてしまうとの考えが拭えません。

実際、この10年間でアメリカのS&P500指数採用企業の利益が71%伸びているのに対し、日経平均採用企業は22%しか伸びていません。そもそも経済成長において最も重要な要素の一つである人口が減少していく中では、日本の企業利益の成長についても多くは望めません。株式の価値のほとんどは成長の価値ですから、成長が望めなければ株価が上昇するはずもないのです。このような中でも日経平均株価が2万円の大台を回復できたのは、やはり政府や日銀の役割によるところが大きく、今のところ官製相場の色彩が濃いと考えざるを得ません。

しかし今後、人口が減少していく中でも株価上昇が見込めるとすれば、それは独自に成長分野を見出して成長していく企業、人口が増加している海外の市場を開拓していく企業、そしてROE(Return on Equity:株主資本利益率)を高めていく企業だと思います。ちなみに2014年末時点でアメリカのS&P500指数採用企業の平均ROEは14.4%ですが、日経平均採用企業の平均ROEは8.7%に過ぎません。歴史的にも日経平均採用企業のROEはS&P500指数採用企業の半分近い水準です。

ROEというのは株主資本に対する利益の割合なので、一般にはどうしても「利益を上げるべき」というイメージが先走ってしまい、そのために問題の本質がボヤけてしまう傾向があるように感じます。しかし利益を上げるべきというのは、そもそも企業の目的ですので、そんなことを繰り返し強調することに意味はありません。私が今強調したいのは、「ROEを上げるよりEORを下げよ」ということなのです。

EORはEquity on Return(利益に対する株主資本の割合)の略で、ROEの逆数です。逆数にしただけで何の意味があるのかというと、株主資本が分子に来る事によってより、「利益が一定の中でも株主資本を減らす事が重要」という、日本企業の本質的な問題が分かりやすくなるからです。上述の通り、利益を増やすのは当然の如く日々企業が努力していることなので、今更繰り返す必要もありません。重要でかつ比較的難しくないのは、株主資本を減らす、という作業なのです。

株主資本とは、株主から払い込んで投資してもらった資金と、これまで生まれてきた利益のうち企業に留保されている資金の合計です。これら資金は現金である必要はありません。有価証券や不動産等をあわせた全ての資産から、負債を差し引いた部分です。即ち企業が清算されて全ての資産を売却し、負債を返済した後に株主に残る金額の合計です。利益が一定であれば、この株主資本が大きければ大きいほど、EORが大きくなってしまいます。EORを小さくしようと思えば、この株主資本を小さくすれば良いのです。具体的には、企業が通常の業務にとって優先度の低い資産は売却し、その資金を株主に配当や自社株買いの形で返してしまえば良いのです。

例えばある企業の資産が1.5億円(うち遊休資産が0.5億円)、負債が0.5億円、利益が500万円、よってEORが20倍(ROEが5%)だったとします。利益を上げることによってEORを下げる事は難しいかもしれませんが、遊休資産を0.5億円分売却して株主に返してしまえば、利益が一定でも、EORを20倍→10倍に下げることができます。通常の業務に必要以外の現金は、現在のようなゼロ金利の下では遊休資産と言えるでしょうし、5%以下のリターンしか生んでいない資産は売却して株主に返せばEORを下げることができます。

個々の企業によって事情は異なると思いますが、全体として見れば日本の企業は株主資本を溜め込み過ぎなのです。株主資本は株主のものですから、もしアメリカでこのような状態になれば、必ず株主から増配や自社株買い等の方法で株主資本を還元するよう、株主から圧力がかかります。しかし日本では相対的にそのような圧力がかかりにくい結果、過剰な資本が株式会社に残り、眠ってしまっているのです。

このように過剰な資本が会社に残ってしまっているというのは、日本経済全体にとって非常にもったいない状況です。この資本が成長産業等で有効利用されれば、延いては日本経済の成長につながるはずだからです。日本でよく政治家を中心に、これを設備投資や給与引き上げに回せとの呼びかけがありますが、それらは的が外れてしまっています。もともと経営計画に設備投資をする予定の無い会社が、無駄な設備投資を実行するとは思えませんし、給与というのは限界生産性によって決定されるものであって、株主資本の多寡によって決定されるものではないからです。

日本では8年ほど前に「物言う投資家」が圧力を高め、日経平均株価が2万円に近付いた時期がありました。しかしそのような投資家も、日本独特の株主持ち合いや司法判断に愛想を尽かし、日本を離れていったのは記憶に新しいところです。今回の日経平均株価2万円回復、10年後、20年後にまた同じニュースを聞くことが無いよう、官製相場と言われないよう、今回の上昇を確固たるものにしていくためにも、日本企業には全体としてEORを下げる努力が急務だと考えています。

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