【今日のまとめ】
- 大統領選挙に併せて加州提案第61号が住民投票に付される
- 退役軍人省の享受するレートに合せることで処方薬を安く買う
- 加州がそれをやるとメディケイドの他のプランも自動的にそれに揃える必要がある
- 製薬会社にとり、値引き圧力が強まる
カリフォルニア州提案第61号とは
11月8日に米国の大統領選挙があります。実はこの日、有権者は大統領を誰にするか?について投票することに加え、上院議員、下院議員に関しても投票します。さらに州によっては住民投票も併せて行われます。カリフォルニア州の場合、17もの案件について住民投票が行われます。
その中で今日はカリフォルニア州提案第61号(Proposition 61)について解説します。
カリフォルニア州提案第61号はカリフォルニア州の機関が処方薬を買う際、米国退役軍人省(United States Department of Veterans Affairs、略してVA)が今支払っている薬価よりも高い値段で購入することを禁止する法案です。
加州の公的機関は年間37.9億ドルを薬代に使っている
カリフォルニア州で医療費の負担元となっている主な政府機関には次のようなものがあります。
処方薬の値引き情報は普通秘密だが退役軍人省は例外
通常、処方薬には正価(List Price)がありますが、実際には保険会社など、医療費の最終負担者によってディスカウントがあります。処方薬が実際には幾らで売られているか?という情報は当事者同士で秘密保持契約が結ばれており、おおやけに出来ません。
退役軍人省は約900万人の退役軍人の医療の面倒を見ており、その関係で処方薬の費用を負担しています。通常、退役軍人省はかなり有利なレートで処方薬を購入することが出来ます。
退役軍人省が幾らでそれぞれの処方薬を買っているか?については情報公開によってそのレートが開示されています。
カリフォルニア提案第61号は、上記のカリフォルニアの公的機関が製薬会社から処方薬を購入するとき、この退役軍人省の処方薬購入リストに記載された価格と同等か、それ以下でなければ、その薬を買ってはならないという立法です。
製薬会社がこの立法を恐れる理由
メディキャルは「カリフォルニア版メディケイド」です。メディケイドとは低所得者・障害者向け公的医療保険制度の名称です。
連邦政府の法律では、メディケイドで購入される処方薬は、そのプログラム内で使われている最も安い契約に合せなければいけません。
するともしメディキャルが退役軍人省の享受している安いレートで処方薬を購入できるようになれば、それが全米のメディケイドにも自動的に適用されなければいけなくなるわけです。
これは製薬会社にとって値引き圧力が強まることを意味します。
予想されるリアクション
カリフォルニアで購入される処方薬のうち、上の表で示した公的機関による購入は全体の12%にすぎません。残りは企業の医療保険制度などになります。
もし公的機関による処方薬の金額が、退役軍人省のレートに揃ってしまえば、製薬会社はそれ以外の買い手の薬価を吊り上げることによって失った利益を取り戻そうとすることが予想されます。
またそのような価格転嫁が出来ない場合は、カリフォルニアの公的機関には処方薬を販売しないという方法で利幅を守ろうとするかもしれません。
いずれにせよ提案第61号は、ただでさえ薬価高騰問題の渦中にある製薬・バイオ業界の業績見通しを、一層、不透明にします。
大方の予想では、提案第61号が過半数を獲得するかどうかは、五分五分の確率だそうです。