【今日のまとめ】

  • 米銀の第3四半期決算は債券トレーディングの予想外の復活で全般に良かった
  • JPモルガン・チェースは債券のトレーディングが好調だった
  • バンク・オブ・アメリカも投資銀行部門の好調に助けられた
  • シティグループは株式部の前年比較が苦しかった
  • ウエルズファーゴは架空口座スキャンダルに苦しんでいる
  • ゴールドマン・サックスは債券トレーディングが好調だった
  • モルガン・スタンレーも債券部が健闘した

第3四半期決算が出揃う

米銀の第3四半期決算が出揃いました。

まず全体像ですが、今回の決算では各社とも債券のトレーディングが好調でした。これは英国のEU離脱を巡る国民投票で離脱派が予想外に勝利し、金融市場のボラティリティー(=ブレのこと)が増したことに助けられました。

また懸念されたシェール企業向け貸付の内容は原油価格の反発とともに改善しています。

消費者向け融資も引き続き好調でした。

各行の売上高は下のグラフのようになっています。

純利益は下のグラフのようになっています。

次はトレーディング収入です。

次が株主資本利益率(ROE)です。

それでは次に個々の決算を見ることにしましょう。

JPモルガン・チェース

JPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)の第3四半期決算は下の通りです。

EPS:予想$1.39、結果$1.58
売上高:予想236.9億ドル、結果247億ドル

売上高成長率は前年比+8.3%でした。

純金利収入は119億ドルで、前年比+6%でした。融資残高の増加と金利上昇が増収の理由です。

非金利収入は146億ドルで、前年比+10%でした。コーポレート&インベストメント・バンキング部門が増収に寄与しました。非金利費用は145億ドルで、前年比-6%でした。訴訟費用の減少が寄与しました。

貸倒引当金は13億ドルでした。これは6.82億ドルから増えました。コンシュマー部門では最近イシューされたクレジットカードの焦げ付き比率が高いことを反映し、2.25億ドル引き当てを積み増しました。シェール関連は5千億ドル引き当てを解除しました。

【消費者向け銀行部門】

コンシュマー&コミュニティ・バンキング部門の純利益は22億ドル、前年比-16%でした。平均コア・ローンは+19%でした。純収入は113億ドル、+4%でした。コンシュマー&ビジネス・バンキングの純収入は47億ドル、+4%でした。住宅ローン純収入は19億ドル、+21%でした。カード・コマース&オートローンの純収入は47億ドル、-1%でした。

同社のコンシュマー・バンキングは米銀の中で最も急速に成長しており、マーケットシェアを高めています。クレジットカード部門では、新しいITシステムを元に独自のシステムを開発しました。これを駆使し、マーケットシェアを取りに行っています。新しく獲得した顧客において支払遅延が増えているのは想定内です。今後もさらにマーケットシェアを伸ばしたい意向です。

【投資銀行部門】

コーポレート&インベストメント・バンキング部門の純利益は29億ドルでした。バンキング収入は29億ドル、+6%でした。そのうち投資銀行売上高は+14%でした。債券ならびに株式引受フィーが上昇したのとアドバイザリー・フィーの増加が寄与しました。投資銀行部門はグローバル・ランキングでNo.1を維持しました。債券マーケッツ収入は+48%でした。債券部は全般的に好調で、特にブレグジット、MMFの制度改革などを受けて顧客注文が活発でした。

バンク・オブ・アメリカ

バンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)の第3四半期決算は、下の通りでした。

EPS:予想34¢、結果41¢
売上高:予想210.4億ドル、結果216.4億ドル

売上高成長率は前年比+3.1%でした。純金利収入は+3%の102億ドルでした。非金利収入は+3%の114億ドルでした。

部門別利益は下のグラフのようになっています。

貸倒引当金は8.5億ドルでした。損金計上は8.88億ドルでした。

融資残高は+3%の9,050億ドルでした。

住宅ローン・プロダクションは下のグラフのように推移しています。

預金は、下のグラフのように推移しています。

グローバル・マーケッツ部門の売上高は+14%でした。とりわけ債券部門は+32%でした。株式部門は-17%でした。

総資産利益率は0.90%でした。

シティグループ

シティグループ(ティッカーシンボル:C)の第3四半期決算は下の通りです。

EPS:予想$1.16、結果$1.24
売上高:予想173.2億ドル、結果178億ドル

売上高成長率は前年比-4.8%でした。費用比率は前年比-2%でした。総資産利益率(ROA)は0.83%でした。これは第2四半期に比べて6ベーシスポイント下落しました。純金利マージンは2.86%で、これは第2四半期と変化なしでした。一株当たりタンジブル・ブックバリューは$64.71でした。

シティグループ部門のクレジット費用は17億ドル(-5%)でした。シティグループ部門の融資残高は6,380億ドル(+2%)でした。

北米グローバルコンシュマー部門売上高は52億ドル(+7%)でした。コストコ・カードのポートフォリオの買収によりクレジットカード部門が増収になりました。

マーケッツ&セキュリティ・サービス部門売上高は45億ドル(+11%)でした。債券部門売上高は35億ドル(+35%)でした。金利、為替、スプレッドのビジネスは全て好調でした。株式部門の売上高は6.63億ドル(-34%)でした。市場が活況でなかったこと、前年、アジア部門が好調であり、前年比較が苦しかったことなどが原因です。

ウエルズファーゴ

ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の第3四半期決算は下の通りです。

EPS:予想$1.01、結果$1.03
売上高:予想220.6億ドル、結果223億ドル

住宅ローン・オリジネーションは700億ドルでした。これは第2四半期の630億ドルを上回りました。

純金利収入は第2四半期に比べ2.19億ドル増加し、120億ドルになりました。

貸倒引当金はシェール関連のネット・チャージオフが減ったことを受けて2.28億ドル減りました。

純金利マージンは2.82%でした。これは第2四半期に比べると4ベーシスポイント減少しました。

総資産利益率(ROA)は1.17%でした。

ウエルズファーゴの強引な営業姿勢が210万の架空口座開設につながった事件の責任を取り、先日、ジョン・スタンプ会長兼CEOが辞任しました。その後を受けてティム・スローンが新しくCEOになりました。

なおウエルズファーゴの取締役会はシャーマン&スターリングを独立の監査チームとして起用し、ウエルズファーゴの経営陣のこれまでの営業方針を精査、調査結果を公表する予定です。

ゴールドマン・サックス

ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)の第3四半期決算は下の通りでした。

EPS:予想$3.83、結果$4.88
売上高:予想74.1億ドル、結果81.7億ドル

売上高成長率は前年比+19.0%でした。営業費用は53億ドルでした。これは前年比+10%でした。

【投資銀行部門】

売上高は15.4億ドルでした。これは前年比ほぼ変わらず。アドバイザリー・フィーは-19%の6.58億ドルでした。M&Aの低迷が響きました。引受フィーは+18%の8.79億ドルでした。社債引受けが好調でした。株式引受けは微増でした。

【機関投資家サービス部門】

売上高は37.5億ドルでした。これは前年比+17%でした。債券為替コモディティ(FICC)部門は+34%の19.6億ドルでした。株式部門は+2%の17.8億ドルでした。

【投資&融資部門】

売上高は14億ドルでした。

モルガン・スタンレー

(モルガン・スタンレーティッカーシンボル:MS)の第3四半期決算は下の通りです。

EPS:予想63¢、結果81¢
売上高:予想81.6億ドル、結果89.1億ドル

売上高成長率は+14.7%でした。

【インスティチューショナル・セキュリティーズ部門】

税引き前利益は14億ドルでした。ちなみに去年は6.88億ドル(DVAを除くと2.53億ドル)でした。売上高は46億ドルでした。去年は39億ドル(DVAを除くと35億ドル)でした。

株式セールス&トレーディング売上高は19億ドルでした。去年は18億ドルでした。デリバティブならびに現物株が好調でした。

債券セールス&トレーディング売上高は15億ドルでした。去年は5.83億ドルでした。

【ウエルス・マネージメント部門】

売上高は39億ドルでした。去年は36億ドルでした。税引き前利益は9.01億ドルでした。去年は8.24億ドルでした。税引き前マージンは23%でした。

【運用部門】

売上高は5.52億ドルでした。去年は2.74億ドルでした。