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米国の会計基準変更が株式に与える影響について
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

米国の会計基準変更が株式に与える影響について

2016/8/8
2018年から米国の会計基準が一部変更されます。そういうと皆さんは(ずいぶん先の話だな)と思うことでしょう。しかし企業は、今回のような大きな会計基準の変更がある場合、1年以上前から準備するものです。同様に株式市場の投資家も、ルール変更に備えて対策を練ります。そこで今日はこの話題について書きます。
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【今日のまとめ】

  • 会計基準の変更には、実際の変更の前に準備が必要
  • FASB「606」が導入される
  • 売上高は「前倒し」で計上される
  • 四半期EPSの調整がやりにくくなる
  • 投資家が「払って良い」と感じるマルチプルは、下がる
  • 新会計基準導入は、相場のかく乱要因に

いまから知っておくべき将来の変更

2018年から米国の会計基準が一部変更されます。

そういうと皆さんは(ずいぶん先の話だな)と思うことでしょう。

しかし企業は、今回のような大きな会計基準の変更がある場合、1年以上前から準備するものです。

同様に株式市場の投資家も、ルール変更に備えて対策を練ります。

そこで今日はこの話題について書きます。

FASB「606」とは?

今回提案されている変更は、略してFASB「606」と呼ばれています。FASBは「ファスビー」と発音します。

それはFinancial Accounting Standard Board(米国財務会計基準審議会)の頭文字を取ったものです。606は条文の番号です。

さて、実際にFASB「606」は何を規定しているのでしょうか?

FASB「606」では、「ソフトウェア・ライセンスなどを販売したときの売上高は、なるべく早く売上に計上しなさい」ということが規定されています。

これは現行の米国のソフトウェア会計基準とは「正反対」に近い考え方です。言い直せば、今回のFASB「606」では、売上高の計上が、これまでよりも「前倒しになる」ということです。

現行の基準では、ソフトウェアの使用期間に合わせて、例えば2年間なら毎月24分の1だけを計上するのが基本です。

またアフターサービスを提供することが暗黙の了解になっている場合、それは「商品やサービスを未だ全部納品していない」という認識になり、最初に全額を売上高に計上してはいけないことになっています。

一例として下のグラフはマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)のアンアーンド・レベニューです。

アンアーンド(Un-earned)というのは、すでにマイクロソフトの銀行には顧客から入金があったけれど、未だ責務をすべて果たしていないので、売上高には計上できない分を指します。

上のグラフ中、黄色の「その他」の部分の増加が目立ちますが、これは同社の提供しているサービス「アジュール」を購入した顧客からの入金分と考えてください。

マイクロソフトの「アジュール」サービスは、アマゾンのAWSと似ています。ただAWSとの違いは「アジュール」の場合、データセンターのハードウェアの提供だけではなく、アプリや顧客データのホスティングなどのサービスもパッケージに含まれているという点です。

これまでの会計基準では、サービスを提供する義務が残っているので、「アジュール」の売上を、全て計上してはいけなかったのです。

FASB「606」の、その他の特徴

さて、FASB「606」では、これまで特異性が強かったソフトウェア会計を、なるべく他の業種と一律にすることを目指しています。だからこの変更は全ての業種に適用されます。

一例としてAT&T(ティッカーシンボル:T)ベライゾン(ティッカーシンボル:VZ)は、これまでiPhoneを販売すると、その売上高は「2年縛り」の契約期間全体に均して、案分計上してきました。今後は契約時に一括して計上されることになります。

四半期決算への影響

さて、FASB「606」で前倒しに売上高に立ててしまうということは、繰り延べ売上高の「貯金」が減るわけですから、企業側が四半期EPSをスムーズ化するような裁量の余地が減ることを意味します。

また成約したときに、ドカッと一度に売上高に立ってしまうということは、四半期売上高やEPSが「団子(だんご=lumpy)」になりやすいことを示唆しています。

結果として、新会計基準導入時にはアメリカ企業、とりわけハイテクやソフトウェア企業の売上高やEPSは急に加速したような錯覚が出やすいでしょう。

その反面、それ以降は四半期の業績のブレが大きくなり、投資家がそれに対して(支払っても良いな)と感じることが予想されるのです。

新会計基準導入は相場かく乱要因

今回の新会計基準導入は、かなり大きな変更です。過去の大きな変更としては1997年に導入された「SOP 97-2」が思い出されます。「SOP 97-2」とは、上で説明した現行の「案分して計上しなさい!」というルールを規定した条項を指します。

これが導入された際は、急にソフトウェア企業の売上高が減ったような印象を投資家が持ち、半導体デザインソフトウェア企業などの株が急落しました。

どんな銘柄が影響を受ける?

FASB「606」ではSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業は影響を受けません。従ってセールスフォース・ドットコム(ティッカーシンボル:CRM)ワークデイ(ティッカーシンボル:WDAY)には影響は出ません。

逆に影響を受ける企業は、マイクロソフト、アドビ・システムズ(ティッカーシンボル:ADBE)スプランク(ティッカーシンボル:SPLK)ボーイング(ティッカーシンボル:BA)ウォルト・ディズニー(ティッカーシンボル:DIS)などをはじめとする、広範な企業になると思われます。

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