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英国のEU離脱を巡る国民投票について
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

英国のEU離脱を巡る国民投票について

2016/6/14
6月23日(木曜日)に英国でEU離脱の是非を巡って国民投票が実施されます。そもそもどうして今回の国民投票が行われる運びになったか?という点ですが、前回の選挙の際にデビッド・キャメロン首相が…
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【今日のまとめ】

  • いよいよ6月23日に国民投票がある
  • 英国は歴史的にEUとは距離を置いてきた
  • 92年に英国がERMから脱落したので、いまだにポンドが使用されている
  • 離脱シナリオでの経済への打撃は、相当ひどくなると試算されている
  • しかしポンドは刻々と離脱の可能性を織り込んでいる
  • 無理な相場のエネルギーの蓄積はない
  • ふたをあければ「織り込み済み」というケースも

国民投票の日程

6月23日(木曜日)に英国でEU離脱の是非を巡って国民投票が実施されます。

背景

そもそもどうして今回の国民投票が行われる運びになったか?という点ですが、前回の選挙の際にデビッド・キャメロン首相が「もし保守党に票を入れてくれたら、英国がEUを離脱すべきかどうかを直接有権者の皆さんに問う国民投票を必ず実行します」と公約したことが原因です。

選挙で実際に保守党が第一党を獲得したので、キャメロン首相は自分の約束を守らなければいけなくなりました。

そこでキャメロン首相は、欧州連合(EU)と交渉し、英国への移民が受ける福祉に、一定の制限を加えるとか、ロンドンの金融街、シティへのEUからの制限にある程度歯止めをかけるとか、EU議会の法案に対し英国議会の55%が反対した場合、再審議が請求できるなどの一連の譲歩を引き出しました。

それをイギリスに持ち帰り「このようにEUも折れているので、ここはひとつEUに残留する方へ投票してください」と保守党は主張しているのです。

歴史的にEUに距離を置いてきた英国

さて、英国は別に今回に限らず、かねてから欧州統合に対しては半信半疑で、煮え切らない態度を示してきました。

その一例がマーガレット・サッチャー首相です。

彼女は欧州大陸の金融サービスのビジネスをロンドンに誘致することには積極的でしたが、欧州との政治統合には反対の立場をとりました。

これは実業界、とりわけ金融界の利害とは真っ向から対立する意見であり、矛盾している上に、EUから「いいとこ取りだ」と批判されても仕方ないスタンスでした。

1992年に欧州域内でのヒト、モノ、カネの動きを自由にするシングル・マーケットを目指す「マーストリヒト条約」を批准するにあたり、各国が国民投票を行いました。

その際、デンマークの投票結果は「NO」でした。

すぐ後にフランスでも国民投票が控えていることから、ちょうどこんにちの状況と同じような、極端な不確実性に市場は直面したのです。

「イングランド銀行を破産させた男」のエピソード

その際、将来の通貨統一に先がけて、各国の通貨を一定のレンジの中に抑え込み、それをだんだんひとつに束ねてゆくという、いわゆるERM(ヨーロピアン・エクスチェンジ・レート・メカニズム)という規定がありました。

これに沿うカタチで、英国がポンドを指定レンジの中に抑え込むことに対し、どれだけコミットメント(固い決心)があるかを、市場が疑い始めました。

イングランド銀行は、ERMに従うため、政策金利を一気に2%引上げ12%にする、為替市場でポンド買いの介入をする、などのオペレーションを行います。

しかし、あっと言う間に外貨準備が激減し、とうとうERMから離脱することを余儀なくされました。

このときのポンド売りでジョージ・ソロスは大儲けし、「イングランド銀行を倒産させた男」というニックネームを付けられます。

こんにち欧州連合の大半の国が共通通貨ユーロを使用しているにもかかわらず、英国はいまだにポンドを使用しているのは、そのような経緯によります。

EU離脱派の主張

さて、英国内のEU離脱派の主張をまとめると、まずEUはルールを押しつけ過ぎると彼らは考えています。

また英国政府がEUに支払う88億ポンドのメンバー・フィーに対する見返りが小さすぎるという不満もあります。

しかし何よりも英国民が一番不安に思っている事は、国境のコントロールや不法入国の取り締まりがやりにくいという点でしよう。

EU残留派の主張

これに対してEU残留派は、おもに経済のことを心配しています。

英国財務省がまとめたEU離脱が経済に与えるインパクトのレポートによれば離脱シナリオでは英国のGDPは-3.6%になると予想されています。

また現在5.1%の失業率は6.7%に跳ね上がると見られています。

住宅価格は10%前後下落すると試算されています。

英国に流入する移民は、総じて若く、労働意欲が高いので、これは英国の企業、とりわけ中小企業の経営者にとっては歓迎すべきであり、もし移民の流入が止まると、英国は日本のような少子高齢化の問題に直面するという主張もあります。

英国の大企業は多国籍企業が多く、それらの企業はかならずしも本社を英国に置く必要はありません。

その場合、売上高でみると欧州の方が重要なので、市場へのアクセスを考えた場合、さっさと本社を欧州大陸へ移す企業が出ると思われます。

中小企業は、これまで欧州大陸市場へのフリー・アクセスが保証されていましたが、今後はアクセスが保証されなくなるリスクがあります。

投資に際して重要な考慮点

リーマンショックの後に欧州でギリシャ問題が起こりました。

ひところ「ギリシャがEUを離脱するのではないか?」という観測が流れたことを、皆さんは覚えていると思います。

今回の英国のEU離脱に関する国民投票は、当時のギリシャの置かれた立場と、ひとつ決定的に違う点があります。

それは、ギリシャはユーロを使用しているのに対し、英国はユーロを使用していないという点です。

EU離脱の際、通貨をユーロからドラクマなどに戻すのはたいへんな作業であり、一挙に水準訂正が起こるので、リスキーです。

これに対しこんにちの英国はすでにポンドを使用しており、その価値は毎日、EU離脱の可能性を刻々と相場に織り込んでいます。

言い換えれば「ガス抜き」が行われているので、不自然な相場のエネルギーの蓄積は無いのです。

だから1992年にジョージ・ソロスがポンド売りで大儲けしたときのような突然の水準訂正が起こると考えるのは、相場の理屈に反しています。

むしろ悪材料が出た時点で「材料出尽くし」というカタチで相場が反転する可能性もあるわけです。

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