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ジェネリック薬・特殊医薬品セクターについて
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

ジェネリック薬・特殊医薬品セクターについて

2016/6/6
ジェネリック薬・特殊薬品のセクターでは、ここ数年、M&Aが活発でした。M&Aが活発化した一つの原因は、アイルランドなどの法人税が安い国に本社を置く企業を買収し、会社登記をそちらへ移すことで、税率を下げ、一株当たり利益(EPS)を嵩上げすることが流行したことによります。
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【今日のまとめ】

  • ジェネリック薬・特殊薬品セクターのM&Aに世論は批判的になっている
  • バリアント・ファーマシューティカルズは成長戦略が描けなくなっている
  • マリンクロットはアクサーへの過度の依存がリスクとなっている
  • アラガンはファイザーとの合併が破談になったが、内容は良い
  • ゾエティスはアニマル・ヘルスでのリーダー企業
  • テバ・ファーマシューティカルズはジェネリック薬への依存度を高めている

ジェネリック薬・特殊薬品セクターの概観

ジェネリック薬・特殊薬品のセクターでは、ここ数年、M&Aが活発でした。

M&Aが活発化した一つの原因は、アイルランドなどの法人税が安い国に本社を置く企業を買収し、会社登記をそちらへ移すことで、税率を下げ、一株当たり利益(EPS)を嵩上げすることが流行したことによります。

また買収先企業が出している薬の薬価を、買収後にすぐに吊り上げることにより、売上高成長や利益成長を捻出するという手法もM&Aブームに一役買いました。

しかしこれらの手法は議会から強い批判を浴びています。

薬価の高騰が、ふたたび社会問題化する中で、多くのジェネリック薬・特殊薬品株は株価の急落を演じています。

そこで今日はこれらの銘柄の近況を整理したいと思います。

バリアント・ファーマシューティカルズ

バリアント・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:VRX)はカナダに本社を置く特殊医薬品ならびに医療機器のメーカーです。

同社はバイオヴェイル、サリックス・ファーマシューティカルズ、バウシ&ロームなど、数々の薬品メーカーが合併して出来た会社で、ブランド医薬品、ブランド後発医薬品、店頭医薬品、コンタクトレンズ、医療機器を作っています。主な疾病分野は皮膚科、神経科、ならびに胃腸薬です。

同社は主にパテント切れに関係なくプレミアム価格を設定できる、すでに市場で独占的な地位を確立している既存薬を中心に販売しています。

そのような既存薬を持っている会社を買収し、買収後すぐに薬価を引上げることで売上高成長を実現しています。

主な薬は:

  • リファキシミン(Xifaxan)下痢を伴う過敏性腸症候群(IBS-D)
  • ブプロピオン(Wellbutrin XL) 抗うつ薬
  • ミノサイクリン(Solodyn)ニキビなどの皮膚の炎症性疾患
  • ニトロプルシド(Nitropress)血管拡張薬

などです。

買収先企業の出している薬の値段を吊り上げるバリアントの経営手法は、米国議会で問題になりました。たとえばニトロプルシドは2015年2月に買収した後、+525%の値上げを実施しています。

またバリアントの製品を主に扱う卸業者、フィリドアの株式を、同社が支配していたことで、「売上高の粉飾に、この関連会社が利用されたのではないか?」という疑惑を呼びました。

それが原因でフィリドアは解散となり、バリアントは過去に発表した決算を修正する羽目になりました。

同社の決算を投資家が信用しなくなったので、同社は独立した臨時調査委員会を組織し、同社の決算の内容を調査しました。このため同社の去年の決算報告書の提出が大幅に遅れました。

2016年4月29日に、ようやく去年の業績に関する10-kが提出されています。

経営的失策の責任を取る形でマイケル・ピアソンCEOが辞任し、新しく元ペリゴのジョセフ・パパがCEOに着任しています。

現在、同社には米国連邦地検、米国証券取引委員会(SEC)、米国上院ならびに下院から、それぞれ別個に調査が入っています。

加えて同社に対して複数の訴訟が起こされています。

バリアントの経営陣が議会で証言した際、「すぐに薬価を引き下げる」と公約しました。しかしそれが速やかに実行されなかったので、マスコミがそれを叩き、慌てたバリアントが急きょ薬価を引き下げるという場面がありました。

このように薬価を吊り上げることで売上高成長を出すという手法が今後も通用する見込みは殆ど無いに等しいです。

バリアントは過去に買収を繰り返して大きくなったので、310億ドルの負債を抱えています。

いわゆる「物言う投資家」、ビル・アックマンが同社の発行済み株式数の9%を支配しているのですが、彼のヘッジファンドは運用成績が極端に落ち込んでおり、解約売りのリスクがあります。

一見するとバリアントの株価は高値から88%も下落しており、割安なように見えますが、数多くの問題を抱えていると思います。

【略号の読み方】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高

マリンクロット

マリンクロット(ティッカーシンボル:MNK)はアイルランドに本社を置く特殊医薬品、ジェネリック薬、核医学画像化などの企業です。

各部門の売上構成比は下のパイチャートのようになっています。

このうち特殊医薬品部門の主力薬は:

  • アクサー(Acthar)蛋白尿、小児てんかん、肉芽腫など19の疾病を直す薬
  • アセトアミノフェン(Ofirmev)解熱鎮痛剤
  • ヴァソディレーター(Inomax)血管拡張薬

などになります。

下はそれぞれの薬の売上高のパイチャートです。

同社の全社利益の約半分をアクサーが稼ぎ出しています。また同社の売上高の大半は米国で発生しています。

同社を巡るリスクとしては、アクサーに依存し過ぎているということだと思います。

アクサーは何十年も前から存在する、たいへん古い薬ですが、2001年にクウェストコアが同薬を買収したときは、僅か40ドルで売られていました。クウェストコアは2007年までにそれを23,000ドルに、そして2012年には41,000ドルまで値上げします。

2014年にマリンクロットがクウェストコアを買収したので、アクサーはマリンクロットの薬になったわけですが、2015年に公正取引委員会(FTC)がアクサーの薬価設定に不正が無かったか調査に乗り出しました。

このためアクサーが今後、値上げできなくなると、マリンクロットの業績も足踏みするリスクがあります。

アラガン

アラガン(ティッカーシンボル:AGN)はアクタヴィス、ワーナー・チルコット、フォレスト・ラボラトリーズ、アラガンという四つの企業が過去数年間に合併を繰り返して出来た企業です。

2015年7月にジェネリック薬の部門をテバ・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:TEVA)へ売却すると発表したため、現在は特殊医薬品が主体となっています。主な薬は:

  • ボトックス(Botox)片側顔面痙攣、美容外科
  • レスタシス(Restasis)ドライアイ治療薬
  • ナメンダ(Namenda XR)中等度・重度アルツハイマー認知症
  • バイストリック(Bystolic)β遮断薬、降圧薬

などです。当社の場合、最も売上高の大きいボトックスでも売上高に占める割合は13%に過ぎず、分散が効いています。

同社の本社はアイルランドであり、低い税率を享受しています。

これに目をつけたファイザー(ティッカーシンボル:PFE)が、アラガンと合併することを提案したのですが、財務省がそのような「タックス・インヴァージョン(節税のための本社移転)」が出来ないようにルール変更したため、このディールは頓挫しています。

アラガンのバランスシート上には過去のM&Aでこしらえた約400億ドルの負債が載っています。ジェネリック薬のビジネスをテバ・ファーマシューティカルズに売却したので、338億ドル前後のキャッシュが入って来る見込みです。

アラガン株はファイザーとのディールが破談になった後、下落していますが、製品ポートフォリオに偏りが無い事、バランスシートがしっかりしている事などからいずれ見直されることが予想されます。

ゾエティス

ゾエティス(ティッカーシンボル:ZTS)はアニマル・ヘルスに特化した製薬会社です。

アニマル・ヘルス市場は年率+3.6%で成長しています。ゾエティスはその中でリーダー的存在ですが、卓越したR&Dと獣医に対する営業ネットワークで、市場成長率の約2倍で成長しています。

アニマル・ヘルス市場は、1)ペット、2)家畜の二つから構成されており、その中には獣医のサービスや栄養、診断装置、衛生管理など、様々な活動が含まれています。

このうちゾエティスが行っているのは動物向けの薬品、ワクチン、エサに添加する医薬、パラサイト駆除薬などで、その市場規模は約230億ドルです。

ふつうの製薬会社のビジネスと違う点は、メディケアや保険会社などからの払い戻しが無い点、製薬会社間の競争が激しくない点、地域性を反映した商品作りが必要な点などです。

米国の家庭の62%は何らかのペットを飼っています。新興国ではペットを飼うことは未だアメリカほど一般化していませんが、ミドルクラスの台頭とともにペット市場は年率+15%で成長し始めています。

ゾエティスの売上高のうち65%は家畜向け薬品、35%はペット向け薬品です。

同社の売上高は+7%前後、EPSは+11%前後で成長すると思われます。

テバ・ファーマシューティカルズ

テバ・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:TEVA)はイスラエルに本社を置くジェネリック薬ならびに特殊医薬品のメーカーです。

同社の特殊医薬品部門で最も重要な薬は、多発性硬化症(MS)治療薬コパクソン(Copaxone)ですが、パテント切れでジェネリック薬が登場しています。

コパクソンは全社売上高の20%、利益はそれ以上の貢献をしているため、コパクソンのパテント切れをどう穴埋めするか?が同社の課題でした。

その一つの回答として、アラガンからジェネリック薬のビジネスを買収することを決めています。

現在、ジェネリック薬部門が同社の利益に貢献する割合は約40%ですが、この買収後はその比率が更に高まることが予想されます。

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