【今日のまとめ】

  • ボーイングは旅客機の買い替え需要で好況
  • ゼネラル・ダイナミクスは安定した配当が魅力
  • ハンチントン・インガルスは同社しか出来ない造船技術を持っている
  • ロッキード・マーチンは財務的に安定している
  • ノースロップ・グラマンは次世代爆撃機を受注し、地位を固めた
  • レイセオンの業績は、すこしモタモタしている

航空宇宙防衛関連セクターの概観

航空宇宙防衛関連セクターは、大きく分けて民間航空機のビジネスと防衛関連に分類できます。

民間航空機の市場は、いまちょうど買い替えサイクルに入っており、活況です。

一方、防衛関連は主にアメリカ政府を顧客としています。

米国政府の財政はリーマン・ショックの後遺症から立ち直りつつあります。このため去年の暮の議会の予算交渉も、すんなりとまとまりました。これは同セクターをめぐるリスクが低下したことを意味します。

同セクターに属する主な銘柄は以下の通りです。

銘柄    
ボーイング BA 旅客機、防衛関連
ゼネラル・ダイナミクス GD アブラムス戦車、バージニア級潜水艦、IT
ハンチントン・インガルス HII フォード級航空母艦、サンアントニオ級LPD
ロッキード・マーチン LMT F-35戦闘機、人工衛星、ミサイル
ノースロップ・グラマン NOC グローバル・ホーク無人偵察機、サイバー防衛
レイセオン RTN トマホーク・ミサイル、レーダー防衛システム

ボーイング

ボーイング(ティッカーシンボル:BA)は世界屈指の旅客機メーカーです。同社は民間のビジネスのほかに防衛関連の仕事もしています。

民間部門では、ベストセラーのボーイング737をはじめ、767、777、787などを作っています。

防衛関連では、F/A-18E/Fスーパー・ホーネット、F-15ストライク・イーグル、C-17グローバルマスターなどを作っています。

さらに同社はネットワーク&宇宙部門を持っており、衛星、コマンド・センターなどを納入しています。

同社の旅客機のうち737は世界のLCC(ロー・コスト・キャリアー)に人気があります。ワイドボディ・ジェットでは導入されて日が浅い777ならびに787が今後の成長の中心になると見られています。

旅客機は一回購入すると20年以上使用できる、きわめてロング・サイクルの資本財です。その関係で、新製品は数年から数十年に1度の割合でしか出ません。

そのことはボーイングの場合、一連の新機種の製品サイクルは、未だ若いことを意味します。当分の間、積み上がった受注残をこなしてゆくだけで業績が伸びるというわけです。

同社のコア営業マージンは安定的に推移しています。

営業キャッシュフローも順調に伸びています。

同社の配当性向は42%で、配当は安全です。

【略号の読み方】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高

ゼネラル・ダイナミクス

ゼネラル・ダイナミクス(ティッカーシンボル:GD)は1952年に創業された防衛関連企業で、傘下に有名な潜水艦メーカー、エレクトリック・ボート、ならびにビジネス・ジェットのガルフストリームを持っています。

コンバット・システムズは主に装甲車を作っています。米軍の主力であるアブラムス戦車も同社の製品です。

ゼネラル・ダイナミクスの製品ポートフォリオはガルフストリーム・ジェットを除いて競争が少なく、安定しています。

このため同社の業績は比較的安定しており、配当は安全です。

ハンチントン・インガルス

ハンチントン・インガルス(ティッカーシンボル:HII)は有名な造船所、ニューポート・ニュースを傘下に持っています。ニューポート・ニュースは現在、アメリカ海軍の原子力空母を建設、修繕できる唯一の造船所です。またバージニア級潜水艦も同造船所で作られています。

このようなユニークな施設をもっているため、同社の競争は限られています。その反面、海軍からもらう仕事は利益マージンを厳格に制限されているため、利幅は大きくありません。

同社の現在の受注残は230億ドルあり、これは3.3年分の売上高に相当します。また2040年までの原子力空母の調達計画がすでに決まっており、業績の見通しは立てやすいです。

同社は現在、配当を充実させつつあり、年々、増配しています。まだ増配余地は大きいです。

ロッキード・マーチン

ロッキード・マーチン(ティッカーシンボル:LMT)は防衛関連事業売上で米国最大の企業です。

同社はF-35プログラムの請負業者です。F-35は同社の全体の売上高の約15%を占めています。同社の売上構成は下のようになっています。

米国経済はリーマン・ショックから立ち直り、政府財政は改善のメドが立ち始めています。その関係で、2016年度の予算交渉は、防衛産業にとって思いのほか良い展開になりました。中期的には米国の防衛予算は年間+5%前後で成長するものと見られます。

F-35のプログラムも、一時は縮小が懸念されたのですが、逆に拡大が予想され、納機数は2015年の45機から2020年にかけて年間100機以上になる可能性が強まりました。

同社の配当は安定しており、配当利回りは約3%です。

ノースロップ・グラマン

ノースロップ・グラマン(ティッカーシンボル:NOC)は、米国を代表する戦闘機メーカー、ノースロップとグラマンが合併して出来た会社です。

ノースロップは1939年にジャック・ノースロップによってカリフォルニア州ロスアンゼルスで創業されました。一方、グラマンはニューヨーク州ロングアイランドを拠点としていました。

同社はアポロ計画で月面に着陸したモジュールを製作したことでも知られています。

現在、同社はB-2ステルス爆撃機を作っているほか、RQ-4グローバル・ホーク無人偵察機を作っています。

同社は軍用ドローンのメーカーとしてはNo.1です。

最近、同社はB-2ステルス爆撃機の後継機のプログラムを受注しました。しかしこの受注に関してロッキード・マーチンなどのライバル・メーカーから「業者選定作業を見直して欲しい」というリクエストが米国政府に対して出されています。

同社の場合も配当は安定しており、減配リスクはありません。

レイセオン

レイセオン(ティッカーシンボル:RTN)は1922年に創業された防衛関連メーカーです。

同社は4つの事業部から構成されています。

統合防衛システム部門はレーダー、コマンド・センターとミサイルを組み合わせた迎撃システムを納入しています。パトリオット・ミサイルは、そのようなシステムを構成するひとつの製品です。

諜報情報サービスは、諜報、偵察、監視、ナビゲーションなどを司るシステムを納入しています。

ミサイル部門は米軍の航空機、艦船、地上軍に対し、各種ミサイルを納入しています。

航空宇宙部門は航空機に搭載する大型のレーダーやセンサーを作っています。

レイセオンの売上高はここ数年足踏みしています。