【今日のまとめ】

  • 今回のFOMCでは市場参加者は利上げ確率87.2%を織り込んでいる
  • 声明文や記者会見ではわざと不確実性を交えた表現に
  • 来年は記者会見のあるFOMCだけで利上げするシナリオが考えられる
  • 債券、住宅、株式は利上げに影響されない
  • 為替はドル安へ

12月16日のFOMCでの利上げ確率は87.2%

今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)が、いよいよ12月16日に開催されます。市場関係者は利上げの確率を、どう見ているのでしょうか?

米国の政策金利はフェデラルファンズ・レートです。その先物がCMEに上場されています。

そこで取引されている先物価格から逆算し、市場参加者がどのくらいの確率で利上げすると織り込んでいるかを知ることが出来ます。

その確率はCMEのウェブサイト、FedWatchで毎日公開されています。下はその推移です。

横軸はフェデラルファンズ・レートを示しています。現行のフェデラルファンズ・レートは0%~0.25%のレンジです。すると今回、0.25%の利上げがあるとすれば、フェデラルファンズ・レートは0.50%ということになります。

上のグラフ中、黄色が最新、つまり12月9日現在の確率です。87.2%の確率で利上げがあるということが織り込まれていることがわかります。これは今回の利上げ局面では最も高い数字であり、16日までに、よほどの事が無い限り、利上げが発表されることを示唆しています。

声明文や記者会見にも注意

このように市場参加者は利上げを織り込んでいるわけですが、むしろ重要になるのは声明文や記者会見でのニュアンスになると思います。

前回の利上げサイクルでは2004年7月から2006年7月まで、まるで定規で右肩上がりの線を引いたように着々と利上げしていたことが下のグラフから読み取れます。

このやり方は、いまでは(すこしマズかったな)という評価になっています。なぜなら市場が利上げのペースに慣れっこになってしまい、横着なトレードを助長する結果となったからです。

従って今回はFRBの手の内を見透かされることを極力避けることが予想されます。それは具体的に何を意味するか? といえば、声明文の言い回しや記者会見でのやりとりは、わざと不確実性を織り交ぜたものになるということです。

2016年の政策金利のシナリオ

それでは12月16日に利上げ後、その次の利上げはいつになるのでしょうか?

これを考えるために来年のFOMCのスケジュールを掲げておきます。

FOMC開催日 記者会見の有無 利上げシナリオ
1月27日 - -
3月16日 あり
4月27日 - -
6月15日 あり
7月27日 - -
9月21日 あり
11月2日 - -
12月4日 あり

(コンテクスチュアル・インベストメンツ作成)

ひとつのシナリオとして、FOMCの直後に記者会見が予定されているミーティングだけで利上げを実施すると言う線が考えられます。

その場合、記者会見が予定されているFOMCは4回あるので、毎回0.25%、合計1.0%の利上げということになります。

すると2016年末の時点でのフェデラルファンズ・レートは1.5%という計算になるわけです。

利上げの影響は?

1954年まで遡った過去のフェデラルファンズ・レートの平均値は5.01%ですので、1.5%という水準は、まだまだ低いです。

つまりフェデラルファンズ・レートが上昇しはじめたからといって債券市場が急落する、住宅ローンが組みにくくなる、株式市場が急落する……などのシナリオは、未だ想定する必要はないということです。

それでは為替はどうでしょう?

過去にFRBが緩和から利上げに転じた事は8回ありました。そのときのドル/円レートと、1年後のレートを示したのが、下の表です。

利上げに転じた月 ドル/円 1年後
     
1972年4月 302円 263円
1977年7月 264円 195円
1982年1月 225円 232円
1983年6月 240円 231円
1987年4月 147円 124円
1994年1月 110円 100円
1999年2月 112円 107円
2005年11月 116円 117円

(コンテクスチュアル・インベストメンツ作成)

これを上昇・下落率にしたのが下のグラフになります。

平均すると利上げ後、ドルは-8.5%でした。