【今日のまとめ】
- GMの決算は中国経済鈍化への懸念を払拭する内容だった
- フォードはアルミニュームをふんだんに使ったF-150を売り出している
- フィアット・クライスラー・オートモーティブはJeepが好調
- テスラ・モーターズはモデルXの納車を開始
- フェラーリはゆっくり増産してゆく計画を持っている
自動車市場の概観
世界では年間7,000万台近い自動車が販売されています。最大の市場は中国で、世界全体の約24%を占めています。中国の自動車市場はずっと二桁成長してきたのですが、ここへきて減速が顕著で、世界の自動車業界の関係者は、息を詰めながらその様子を見守っています。
世界で二番目に大きな自動車市場は米国で、世界の約23%を占めています。最近の米国における自動車販売は好調です。2015年9月は月次販売台数が年率換算で1,800万台を超え、2005年以来最高を記録しました。
米国では乗用車とピックアップ・トラックと呼ばれる軽トラックが、ほぼ半々を占めています。
主な自動車メーカーの年初から9月までの販売実績は下のグラフの通りです。
軽トラックはメーカー各社にとって利幅の大きいビジネスです。最近、大手各社のニュー・モデルが出揃い、折から積み上がった買い替え需要もあり、軽トラック市場はちょっとしたブームを迎えています。
ゼネラル・モーターズ(ティッカーシンボル:GM)、フォード(ティッカーシンボル:F)、フィアット・クライスラー・オートモーティブ(ティッカーシンボル:FCAU)の米国大手三社は、いずれも軽トラックへの依存度が高いです。
軽トラック市場のマーケットシェアは下のグラフのようになっています。
一方、乗用車市場は日本、欧州などの外国勢が頑張っているので市場は細分化されています。
ゼネラル・モーターズ
ゼネラル・モーターズ(ティッカーシンボル:GM)はリーマンショックの際に事実上倒産し、米国政府から資本注入を受けました。その後、事業再構成し、2010年11月に新規株式公開(IPO)でニューヨーク証券取引所に返り咲いています。
新生GMは強い分野だけに特化してゆく方針を打ち出しています。また同社は中国市場に強いことでも知られています。
- 【略号の読み方】
- DPS 一株当たり配当
- EPS 一株当たり利益
- CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
- SPS 一株当たり売上高
10月21日に発表されたゼネラル・モーターズの第3四半期決算ではEPSが予想$1.19に対し$1.50、売上高が予想372億ドルに対し388億ドルでした。売上高成長率は-1.3%でした。
第3四半期の修正EBITDAマージンは8.0%でした。これは去年の5.8%から改善しています。GMは向こう数年に渡ってEPSが二桁成長できるとしています。
今回の決算が予想を上回ったことで、中国市場減速に対する懸念は一応収まったと思います。
フォード
フォード(ティッカーシンボル:F)はいわゆるビッグスリーの中では最も財務的に保守的に経営されています。また同社のピックアップ・トラック「Fシリーズ」はベストセラーであり、しかもモデルチェンジされたばかりです。2016年モデルのF-150はアルミニュームをふんだんに使用した画期的な新製品で注目を集めています。
フィアット・クライスラー・オートモーティブ
フィアット・クライスラー・オートモーティブ(ティッカーシンボル:FCAU)はフィアット、アルファロメオ、クライスラー、ダッジ、ジープなどのブランドを展開しています。最近、フェラーリをニューヨーク市場へ新規株式公開しました。フェラーリ上場後、フィアット・クライスラー・オートモーティブはフェラーリの発行済み株式数の81%を引き続き保有します。
資本再構成で発行済み株式数が大きく変動したので経年での一株当たりデータを比較する意味はありません。このため下の業績のグラフでは金額ベース(百万ユーロ)で比較しています。
7月30日に発表された同社の第2四半期ではEPSが予想€0.17に対し€0.29、売上高が予想275.5億ユーロに対し292.3億ユーロでした。売上高成長率は+25.3%でした。好調の原因はジープの出荷が+27%だったことによります。
地域別では北米・メキシコの売上高が+40%と強かったのに対し南米が不調でした。
テスラ・モーターズ
テスラ・モーターズ(ティッカーシンボル:TSLA)はイーロン・マスクによって2003年ンに創業されたEV(電気自動車)のメーカーです。同社はスポーツカー「ロードスター」を発表した後、2012年6月から高級セダン「モデルS」を販売開始しています。最近、SUV「モデルX」の納車が始まったばかりです。
8月5日に発表されたテスラ・モーターズの第2四半期決算ではEPSが予想-59¢に対し-48¢、売上高が予想11.8億ドルに対し12億ドルでした。
同社は期中1.15万台のモデルSを納車しました。
2015年通年での納車ガイダンスは5万~5万5千台が提示されました。これは僅かに旧ガイダンスより低いですが、その理由として会社側は当面、モデルSとモデルXの両方の生産をカリフォルニアのフリーモント工場で行わなければならず、モデルXの部品の一部が下請けからの納品が遅れており、それが手待ちを生じていることが指摘されました。
この問題は2016年からネバダ州のギガファクトリーが稼働しはじめれば解消されると予想されます。
フェラーリ
フェラーリ(ティッカーシンボル:RACE)はレースカーのブランドとして有名であり1950年に最初のフォーミュラ1レースに参戦して以来、これまでに224回グランプリで勝って来た実績があります。
2014年の出荷実績は7,255台です。同社の製品はスポーツとGTに分類され、それぞれ8気筒と12気筒のモデルがあります。
地域別では北米が33.9%、中国が9.3%、英国が9.7%、ドイツが8.5%、中東が7.2%などとなっています。
同社の上半期の業績は下のようになっています。
フェラーリは2019年までに年間納車台数を9,000台まで増やす計画を持っています。但しフェラーリが高く売れる理由は、その需要に対して供給を抑えていることにあるので、増産はフェラーリのリセール・バリューを損なうリスクと背中合わせです。
またフォーミュラ1のレーシング・チームの戦績が低迷すると、フェラーリのプレステージが傷つく恐れがあります。
フェラーリはライセンシングを通じてアパレル、テーマパークなどにフェラーリ・ブランドの使用を認めていますが、そうしたライセンシングが行き過ぎるとブランド・イメージを薄めるリスクがあります。