【今日のまとめ】

  • 原油価格はもう下がらなくなった
  • 石油探索生産企業の借入は、難しくなっている
  • リグ活動は低下している
  • 生産は引き続き高水準
  • 在庫調整も捗っていない
  • 世界的に見れば原油への需要が減ったわけではない
  • 先進国全体としての在庫水準も適正
  • 米国の原油輸出解禁に注目
  • 新興国の石油企業の資金調達環境も悪化
  • それは原油価格にとってプラスである

原油価格は横ばい

前回「わかりやすいグローバル投資レポート」で石油市場の状況について見たのは2月16日でした。そこで石油市場の近況をアップデートしたいと思います。まず原油価格ですが最近は横ばいを続けており、落勢が衰えました。

原油価格下落で減産ムードが広がる

この背景には去年の夏以降の原油価格の急落で、いよいよ零細な石油探索生産会社は経営が圧迫されはじめ、減産ムードが広がっていることが挙げられます。下はエネルギー・セクターの企業が発行する社債のクレジット・スプレッドのチャートで、上に行くほど投資家の不安が増していることを示しています。

クレジット・スプレッドの拡大は企業がお金を借りにくくなることを意味し、それは探索生産活動が鈍化する前兆であると言えます。

リグ活動は冷え込んでいる

米国の油井の本数を調べたデータにベーカーヒューズ北米リグカウントというものがあります。ベーカーヒューズ(ティッカーシンボル:BHI)は油井を掘る際に使用されるドリルビットを作っている会社です。ドリルビットは摩耗が激しいため、石油探索生産会社はベーカーヒューズと日頃から密接に連絡を取り合い、交換部品の供給を受けます。この関係で同社は世界中で何基のリグが動いているかを常に把握できる立場に居るわけです。

下のグラフ中、青は石油、橙色は天然ガスのリグの本数を示しています。一旦反発した石油のリグの本数が、また減り始めていることが読み取れます。

このようなリグの本数の減少は、いずれ生産高の下落につながると思われます。いまのところ生産高の落ち込みは少ないです。

リグ本数が半減しているのに生産高がそれほど落ち込んでいない理由は、業者が零細で、高コスト体質の、不採算リグから順番に休止していることが関係しています。

スケール・メリットが出せないリグを休止する一方で、業者は、よりハイテクで、大掛かりなリグへとシフトしています。その結果、生産性は今でも向上しており、それが減産の遅れを招来しているのです。

このような高水準の供給を反映して、米国における原油在庫は、引き続き高水準のままです。

輸出解禁なるか?

さて、世界全体で見ると原油需要は安定しています。

つまり「不況で原油の需要が低迷しているのが原油価格下落の理由だ」という理解は正しくないのです。

また先進各国全体としての原油在庫も異常なほど高くはありません。

つまり上で説明した需給関係の崩れの主な原因はアメリカ国内におけるシェールオイルの増産が原因なのであって、あくまでも米国に地域限定された現象だということです。

普通、アメリカで原油が余れば、経済原則としてそれを他の市場へ持って行く、言い直せば輸出することで少しでも有利な価格で商品を捌くことを業者は考えます。

しかし米国では1970年代のオイルショックの際、原油の禁輸が法律として決められました。この法律のせいで米国の石油会社は国際市況より不利な価格でシェールオイルを米国内で販売することを強いられています。

現在、この法律を改正すべく議会が動いており、先日、下院では原油解禁法案が賛成多数を取り付けました。ただこれが上院を通過するかどうかは分かりませんし、オバマ大統領が拒否権を発動する可能性もあります。

新興国のエネルギー企業

一方で8月以降の世界の金融市場の下落で新興国のエネルギー企業の資金調達環境は険しくなっています。

このところ新興国の石油会社は借入を増やしてきました。

その関係でそれら企業の利払能力は低下しつつあります。

このことは今後、新興国においても石油の探索生産活動は鈍ることが予想されることを意味します。

それは原油価格上昇要因です。