【今日のまとめ】
- チャーチ&ドワイトは足下の売上トレンドは好調と発表した
- クロロックスは売上が伸び悩んでおり、配当性向も高すぎる
- コルゲート・パルモリブは特に海外比率が高い
- キンバリー・クラークも為替の影響を強く受ける
- プロクター&ギャンブルも海外比率が高い
為替で苦戦した日用品セクター
日用品セクターは、パーソナルケア用品、シャンプー、歯磨き粉、洗剤、ベビー用品などのメーカーを含みます。
ちょうど1年ほど前に日用品セクターを紹介したときには、同セクターは業績が読み易く株価も安定していると述べました。しかしその後の同セクターのパフォーマンスはいまひとつ冴えませんでした。
その理由はこのセクターに属する企業の多くは世界中にビジネス展開をしているので、折からのドル高で業績が伸び悩んでしまったからです。
2014年第3四半期(9月期)と第4四半期は、一株当たり利益(EPS)で市場予想を下回る企業が続出しました。2015年第1四半期は会社側のガイダンス(=見通し)が保守的だったことと、ドル高が一巡したことで各社とも概ね事前予想通りの決算を出しました。
これから第2四半期の決算発表シーズンに入ってゆくわけですが、今期中、ドルの上昇は一巡した観があります。このため各社ともそれなりの決算を出すのではないかと思われます。
チャーチ&ドワイト
チャーチ&ドワイト(ティッカーシンボル:CHD)は1846年に創業された歴史の長い会社で、ベーキングソーダのブランド、「アーム&ハンマー」を出しています。ベーキングソーダはクッキーを焼くときに使われるほか、冷蔵庫の消臭などに使われます。
同社はベーキングソーダ入りの歯磨き粉も出しています。このほか、洗剤、コンドーム、妊娠診断キットを作っています。
同社の売上高の8割は米国内から上がっており、その意味では他社よりもドル高による悪影響を受けませんでした。
同社の過去10年間のEPS成長率は下のようになっています。
2014年はEPSの伸びが低かったので配当の伸びも抑えられました。
2014年は前年に比べて売上高は+3.2%でした。グロスマージンは0.9%減少し、44.1%となりました。営業マージンは0.1%減少し、19.4%となりました。
この反面、営業キャッシュフローは5.4億ドルと力強い成長を見せました。一株当たり営業キャッシュフローは3.93ドルでした。
- 【略号の読み方】
- DPS 一株当たり配当
- EPS 一株当たり利益
- CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
- SPS 一株当たり売上高
チャーチ&ドワイトの2015年第1四半期決算は、EPSが予想79¢に対し80¢、売上高は予想8億ドルちょうどに対し8.12億ドルでした。
2015年のEPS成長率は7~9%になる見込みだと発表されました。また2015年に入ってから5月までの売上トレンドは順調だというコメントがありました。
クロロックス
クロロックス(ティッカーシンボル:CLX)はカリフォルニア州オークランドに本社のある漂白剤のメーカーです。
同社の事業ポートフォリオは下のようになっています。
同社のブランドの80%が、カテゴリー1位、ないしは2位です。
この有利なポジションを生かして、同社は他社よりもプレミアム価格を設定しています。ただ近年、消費者はどんどんバリュー・コンシャスになっており、プライベート・ブランドに流れています。この関係で、クロロックスの売上成長率は日用品のグループでは悪い方に属します。
同社の海外売上は全体の約20%であり、地域的には南米が多いです。
クロロックスは長期経営目標として年率3~5%の売上高成長率を目指しています。同社の会計年度は6月末〆です。
クロロックスの2015年第3四半期(5月期)決算はEPS予想$1.10に対し$1.08、売上高予想13.8億ドルに対し14億ドルでした。
同社株の利回りは2.8%となっています。これは日用品のグループの中では高い方です。ただ利益の68%を配当に回している関係で、今後、なにかの拍子に業績が落ち込んだ場合、減配になるリスクがあります。
コルゲート・パルモリブ
コルゲート・パルモリブ(ティッカーシンボル:CL)は1806年に米国で創業された老舗企業で、歯磨き粉で世界シェアの45%を誇っています。
この支配的な地位を生かして、同社は日用品のメーカーとしては高いグロスマージンの維持に成功しています。
同社は極めて国際的な事業ポートフォリオをしており、特に南米の比率が大きいです。このことは為替の変動に業績が左右されやすいことを意味します。
同社の過去5年間の売上成長率は年率5%でした。また同社は51年連続して増配しています。
同社の第1四半期決算はEPS予想66¢に対し、結果66¢、売上高予想40.8億ドルに対し、結果40.7億ドルでした。
同社は5月12日にオーストラリアとニュージーランドの洗剤部門をドイツのヘンケルに売却すると発表しました。
キンバリー・クラーク
キンバリー・クラーク(ティッカーシンボル:KMB)は1928年に創業されたパーソナルケア用品(「ハギーズ」、「プルアップス」、「グッドナイツ」)ならびにティシュー(「クリネックス」、「スコット」、「コットネル」)のメーカーです。
同社は数々のイノベーションをもたらしたことで知られています。
同社は海外売上が53%を占めています。
このため同社の最近の業績はドル高の影響を強く受けました。一例として2015年第1四半期の売上高は、為替を考慮しなければ+5%だったのですが、為替インパクトが-9%あった関係で-4%に終わりました。
第1四半期のEPSは予想$1.33に対し$1.42でした。売上高は予想46.1億ドルに対し46.9億ドルでした。
同社は2014年10月31日にヘルスケア事業、ハルヤード・ヘルス・インク(ティッカーシンボル:HYH)を分離、スピンオフしました。下の業績のグラフは過去に遡り、ヘルスケア事業を除外した数字です。
プロクター&ギャンブル
プロクター&ギャンブル(ティッカーシンボル:PG)は世界最大の日用品メーカーです。同社の部門構成は下のようになっています。
ビューティー部門には「ウエラ」、「オレイ」などのブランドがあります。グルーミング部門には「ジレット」、「マッハ3」などのブランドを持っています。ヘルスケア部門では「オーラルB」、「クレスト」、「ヴィックス」を展開しています。ファブリック・ホームケア部門には「タイド」、「デュラセル」があります。ベビー・フェミニン・ファミリーケア部門には「パンパース」、「バウンティ」、「オールウェイズ」があります。
同社の地域別売上高は下のようになっています。
同社の一株当たりの業績は下のグラフのようになっています。同社の会計年度は6月末〆です。
同社の第3四半期(3月期)決算はEPSが予想に一致する92¢、売上高が予想184.2億ドルに対し181.4億ドルでした。売上高は為替の影響で前年比-7.6%でした。