【今日のまとめ】
- 消費者のタバコ離れ、条例、増税などで市場は縮小
- eシガレットなどの新製品は、未だ市場が小さいし、期待ほど成長していない
- M&A、配当による株主への還元が株価維持戦略となっている
- レイノルズ・アメリカンはロリラードを買収する
タバコ市場の概観
タバコ市場は縮小しています。その理由としてまず消費者が健康上の理由などからタバコを止めていることが挙げられます。
さらに喫煙に関するルールは各地で厳しくなっており、バーやレストランにおける喫煙を違法とする州が増えているほか、町ぐるみで路上や公園での禁煙を義務付けるところが増えています。
このような状況下で、タバコ市場は年々-4%前後縮小中です。
さらにタバコに対する課税は年々強化されています。
タバコ各社はボリューム減を補うため、値上げを繰り返しています。このため低所得者層の愛煙家はプレミアム・ブランドからバリュー・ブランドへ乗り換えています。
最近は無煙(スモークレス)タバコやeベーパーなどの、新しいタイプのタバコが登場しています。しかしそれらの規模は未だ小さいです。
また無煙タバコ市場の成長率は業界関係者が期待したほど高くありません。
主なタバコ株は下の表の通りです。このうちロリラード(ティッカーシンボル:LO)はレイノルズ・アメリカン(ティッカーシンボル:RAI)に買収されることが決まりました。米国連邦取引委員会からの承認が下り次第、今年の上半期のある時点で、ロリラードはレイノルズ・アメリカン株に変わることで株式市場から消滅するわけです。
銘柄 | コード | 内容 |
---|---|---|
アルトリア・グループ | MO | マールボロなど、米国中心 |
ロリラード | LO | ニューポートなど |
フィリップ・モリス・インターナショナル | PM | マールボロなど、海外中心 |
レイノルズ・アメリカン | RAI | キャメルなど |
ベクター・グループ | VGR | リゲットなど |
タバコ市場は成長市場ではないので、各社は利益の大半を配当に回すなどの方法で、株主への還元を最優先し、株価維持に努めています。
アルトリア・グループ
アルトリア・グループ(ティッカーシンボル:MO)はフィリップ・モリスUSA、USTなどを傘下に収める持ち株会社です。
同社の「マールボロ」は過去35年間、全米No.1のブランドを続けています。現在の「マールボロ」の北米シガレット市場でのシェアは43.8%です。このブランドの安定的なパフォーマンスがアルトリア・グループの安定した業績につながっています。
同社は「マークテン」というeベーパーのブランドを展開するニュー・マークを傘下に持っています。
- 【略号の説明】
- DPS 一株当たり配当
- EPS 一株当たり利益
- CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
- SPS 一株当たり売上高
アルトリア・グループの2014年の配当性向は78%です。配当利回りは約4%です。
ロリラード
ロリラード(ティッカーシンボル:LO)は全米第2位のタバコ・ブランドである「ニューポート」を展開しています。同社の売上高の85%が「ニューポート」から稼ぎ出されています。
「ニューポート」はメンソール・タバコが有名で、メンソールは今、米国のタバコ市場でシェアを伸ばしています。「ニューポート」ブランドがアメリカのタバコ市場に占めるシェアは約12%、メンソール・タバコのカテゴリー中のシェアは37%です。
なお同社は今年の上半期中にレイノルズ・アメリカンに買収されることが決まっています。
フィリップ・モリス・インターナショナル
フィリップ・モリス・インターナショナル(ティッカーシンボル:PM)は「マールボロ」、「フィリップ・モリス」、「チェスターフィールド」、「パーラメント」などのブランドを米国以外の世界で展開しています。
売上比率はアジアが33%、EUが30%、中東・アフリカが27%などとなっています。
同社はスイスのローザンヌにオペレーションの拠点があります。このため費用の一部はスイスフランで発生します。さらにEUや日本などの、最近通貨の弱い国々での売上比率が高いので、為替の変動が業績に影響を与えることは免れません。
フィリップ・モリス・インターナショナルの配当利回りは約5%です。また配当性向は80%です。
レイノルズ・アメリカン
レイノルズ・アメリカン(ティッカーシンボル:RAI)は「ウインストン」、「キャメル」などのブランドを展開しています。またバリュー・ブランドでは全米最大の「ドーラル」を持っています。
レイノルズ・アメリカンはロリラードを買収すると発表しており、両社が一緒になれば、売上規模で約108億ドルの企業が誕生します。これはリーダーであるアルトリアの169億ドルには及びませんが、強力なNo.2になるわけです。合併後の米国での市場占有率は34%前後になると見られています。
ベクター・グループ
ベクター・グループ(ティッカーシンボル:VGR)は1873年に創業された老舗のタバコ会社で「リゲット」、「ピラミッド」、「グランプリ」などのブランドを展開しています。同社の米国での市場占有率は3.4%です。
同社は東海岸で有名な不動産屋、ダグラス・エリマンの70%を取得し、多角経営に乗り出しています。この多角経営は同社ほんらいのコア・コンピタンスとは違うビジネスなので、株主の中には疑問視する声もあります。