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金鉱株の近況
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

金鉱株の近況

2015/1/5
金価格は2011年9月5日に1,896.5の高値を付けた後、ずっと下降トレンドを辿っています。
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【今日のまとめ】

  • バリック・ゴールドは企業統治の改善に注力している
  • ニューモントには去年M&Aの噂が出たが、その切り口で投資するのは間違っている
  • ゴールドコープは大手の中で最もバランスシートが強固
  • アングロゴールド・アシャンティは採掘コストの削減で大幅な改善が見られた
  • キンロス・ゴールドのロシアや西アフリカの金山は投資家からの評価が低い

下降トレンドが続く金価格

金価格は2011年9月5日に1,896.5の高値を付けた後、ずっと下降トレンドを辿っています。

金はドルへの信認が揺らいだ際、買われる傾向があります。従って2008年のリーマンショックで金融システム全体に対する不安が高まった際、投資家は金投資に注目しました。

その後、米国連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和(QE)政策を打ち出しました。QEに代表される積極的な緩和策は、ドルの価値を毀損するリスクを孕んでいたため、金の人気に一層拍車がかかりました。

しかし最近は一転してアメリカ経済が立ち直りを見せています。このため量的緩和政策も一段落しました。さらに今年の半ばにはFRBがいよいよフェデラルファンズ・レートを引き上げるという観測が出ています。フェデラルファンズ・レートの引き上げはドル高要因であり、それはドルと逆相関の動きをする金にとってマイナスです。

つまりマクロ経済の視点からは今後もとうぶん金価格には強気になれない状況が続くわけです。

サバイバルが目下の経営課題

産金各社はリーマンショック後の金ブームの際に増産を計画しました。これを実行に移すまでにタイムラグがあるため、金価格が天井をつけた後も産金会社の増産計画は続行されました。3年におよぶ金価格の下落で、いまようやくプロジェクト中止のニュースが相次いで見られるようになりました。つまり本格的な生産調整が始まるのは今年からであり、それは未だ端緒に付いたばかりだということです。

金価格の低迷で産金各社の業績は暗転しています。中小の産金会社の中には倒産リスクを抱えたところもあります。大手ですら、リーマンショック後の金ブームの際、買収や金鉱への積極投資などで借入金を大幅に増やしたところが多く、それらの企業は負債の圧縮に苦しんでいます。

従って現在の局面では長期に渡る金価格の低迷に備え、持久戦を勝ち抜ける、財務的にしっかりした金鉱株を選ぶべきだと思います。また採掘コスト(AISC=All In Sustainable Costs)は各社の採算ラインを知る上で最も重要な経営情報です。

バリック・ゴールド

バリック・ゴールド(ティッカーシンボル:ABX)は確認埋蔵量(1.04億オンス)ベースで世界最大の産金会社です。同社の主要金山は北米のゴールドストライク、コルテス、南米のパスカラマ、ヴェラデロなどで、いずれも優良な資産です。同社の採掘コストはオンス当たり920ドルで、これは大手産金会社の中では低い方です。

同社のバランスシートには130億ドルの負債が載っています。この負債額の多さが投資家の懸念材料となっています。このうち2017年までに返済期限が来る金額は9億ドルに過ぎませんので同社が直ぐに資金繰りに困るということは無いと思います。

2013年は金価格が下落したので採算に乗らない一部金山を資産毀損で損金計上しました。その関係でEPSは大きく赤字になっています。

【略号の読み方】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
SPS一株当たり売上高

バリック・ゴールドはこれまでワンマン経営の色彩が強かったです。それではいけないということで、企業統治を強化するため新しく6名の取締役を指名しました。これで合計13名の役員のうち10名が外部者になりました。また報奨制度も、より株主利益を反映したものに改めました。さらに2014年の設備投資額を当初の27億ドルを25億ドルへ減額しました。

このように同社は「やるべきことは、やっている」わけですが、投資家の同社の借入額に対する不安は根強く、それがコア銘柄に据えられない原因となっています。

ニューモント・マイニング

ニューモント・マイニング(ティッカーシンボル:NEM)はアメリカ最大の産金会社です。同社の主力金山はネバダ州のカーリン、オーストラリアのボディントン、インドネシアのバツヒジャウなどです。同社は銅、銀も生産しています。

同社の採掘コストはオンス当たり1,031ドルです。ニューモントのバランスシートには68億ドルの負債が載っています。このうち2017年までに支払いの期限が来る金額は13億ドルです。

ニューモントもバリック同様、金価格の下落で不採算化した金鉱の資産評価が毀損したため44億ドル相当の損金を計上しました。その関係で2013年のEPSはマイナスになっています。

去年、ニューモントには合併の噂が出ました。ネバダ州の金山がバリック・ゴールドのそれと近いところにあり、事業統合することで間接費の効率化などが可能だというのが、そのロジックです。しかし両社の企業風土はかなり違い、話し合いは物別れに終わった模様です。

一般論として2015年も引き続きM&Aの憶測は絶えることが無いと予想されます。その理由は低迷する金価格を前に、各社とも操業コストの圧縮に苦しんでいるからです。合併による「縮小均衡」が望まれるのはそのためです。しかしそのような後ろ向きのM&Aでは高いプレミアムを支払う買収提案は期待薄だと思います。従ってM&A期待から金鉱株に投資するという切り口は、必ずしも成功を約束しないと思います。

ゴールドコープ

ゴールドコープ(ティッカーシンボル:GG)はカナダのバンクーバーに本社を置く産金会社です。ピュアプレイの金鉱株としては時価総額ベースで世界最大です。同社の主力金山はカナダのレッドレイクならびにメキシコ、グアテマラの金山です。

同社の採掘コストはオンス当たり1,066ドルです。同社の通年の設備投資額は24億ドルです。ゴールドコープのバランスシートには33億ドルの負債が載っています。これは大手産金会社の中では小さいほうです。金価格の下落で不採算化した金鉱の資産評価が毀損したため他社同様2013年は損金計上しました。その関係で2013年のEPSはマイナスになっています。

同社は2015年も守りの経営に徹し、設備投資額はさらに減額される予定です。

アングロゴールド・アシャンティ

アングロゴールド・アシャンティ(ティッカーシンボル:AU)は南ア最大の産金会社で売上高ベースでは世界第3位です。同社の売上高の73%はアフリカ大陸にある金山から上がっています。

同社は海外事業を別会社としてスピンオフする計画を去年秋に発表しましたが、市場環境が悪いのでそのプランはお蔵入りになりました。同社がそのような計画を検討した背景には1)南アの金山は低成長である、2)海外の金山は今後成長が見込まれ、事業拡張のための資金調達をする必要がある、という理由からでした。しかし投資コミュニティは増資のもたらす株主利益の希釈化に難色を示しました。

同社のバランスシート上には38億ドルの負債が載っています。これは大手金鉱株の中では平均的な負債額です。今後は資産売却によりキャッシュを得て、負債の返済を促進してゆく計画です。

南アの金山は地中奥深くへ掘り進む立坑の構造であり、アメリカやインドネシアに多く見られる露天掘りに比べてコスト高です。アングロゴールド・アシャンティもこの高コスト体質に苦しんできました。しかし過去数年の度重なる労使の交渉の末、操業コストを大幅に下げることに成功しました。採掘コストは2012年のオンス当たり1,600ドルから現在は1,036ドルまで下がっており、これは北米の産金会社と比べても遜色ない水準です。

同社は南アの会社ですが決算は米ドルで報告されており、普通株対ADR比率も1:1ですので、為替やADR交換比率を心配せず、他社との業績比較が可能です。他社同様、金価格の下落で不採算化した金鉱の資産評価が毀損したため2013年は損金計上しました。その関係で2013年のEPSはマイナスになっています。

キンロス・ゴールド

キンロス・ゴールド(ティッカーシンボル:KGC)はカナダのトロントに本社を置く産金会社です。同社は北米のケトルリバー、ラウンドマウンテン、フォートノックスの各金山に加え西アフリカとロシアに金山を所有しています。

同社の採掘コストはオンス当たり919ドルで、これはかなり低いです。同社のバランスシートには21億ドルの負債が載っており、2018年までに8億ドルを返済する必要があります。

同社の設備投資計画は年間6.5億ドル程度であり、これは2013年から半減しています。同社の金山は地政学的に比較的ハイリスクだと見做されているロシアや西アフリカなどが含まれており、このため投資家は同社の株価評価を割り引いて考えています。

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