【今日のまとめ】

  • 現在のドル高は経済の基礎的要件に裏打ちされている
  • FRBは12月に利上げをほのめかし、来年6月までに実施か?
  • お金は、世界からアメリカへ向かう
  • ECBやBRICsの中銀の立場は、インドを除いてどこも苦しい

ドル高は当分続く

ドル高局面が続いています。

現在のドル高はファンダメンタルズ(=経済の基礎的要件)にちゃんと裏付けされた動きです。具体的には米国経済が先進国の中で最もしっかりしていることを背景にしています。

先週発表された米国の9月の失業率は5.9%でした。

失業率がついに6%を切ったことで、米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートの利上げが、いよいよ視野に入ってきました。

私の考えでは、米国連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長がフェデラルファンズ・レートの引き上げをほのめかすのは12月16・17日の連邦公開市場委員会(FOMC)だと思います。そして実際に利上げが実行されるのは2015年6月頃でしょう。

アメリカ以外で近く利上げを発表できる位置につけている国は先進国ではイギリスだけです。

すると基調として今後もドル高が続くと考えるのが自然なのです。

グローバルなお金の動き

ドルが基調として強いということになるとアメリカの投資家は世界に投資している資金の一部をアメリカに戻すと予想されます。言い換えればアメリカの投資家のスタンスが「内向き」になるのです。これは海外よりアメリカ国内の方が景気も良いし、為替でやられる心配もないことを考えれば、至って納得のゆく判断です。その際、おもに欧州株式市場や新興国からお金が逃げると予想されます。

各国中央銀行の対応

欧州中央銀行(ECB)は欧州における景気減速を見て、矢継ぎ早に追加緩和策を発表しました。しかし折からの不景気で資金ニーズは少なく、市場に流動性を注入するのに苦労しています。今後も景気回復には時間がかかるでしょう。

中国人民銀行は9月に大手銀行に810億ドルの流動性を注入しました。これは最近の中国の経済活動が鈍化しているのを受けた臨時措置と言えます。

しかしバブル誘発を恐れているので、景気テコ入れには慎重です。

インド準備銀行は他の国々に比べてラッキーな環境に置かれていると言えます。経済活動は加速中であり、しかも対外収支は改善の兆しを見せているからです。政策金利は過去8カ月の間、8%がずっと維持されています。

ロシア中銀は年初来3回利上げしてきました。これは通貨防衛のためです。ウクライナを巡る紛争で投資家はロシアから資金を引き揚げ、ルーブルは軟調です。通貨安はインフレを誘発しやすくなっています。西側の経済制裁に対抗するため、ロシアは8月に食品の輸入を禁ずる措置をとりました。これが国内での食品価格の高騰を招いています。

ブラジルでは大統領選挙が戦われている真っ最中ですが、中央銀行の独立性の問題が脚光を浴びています。中央銀行が政治の道具に使われているという批判が出ています。経済は精彩を欠き、インフレは高止まりしています。

以上をまとめると、当分の間、ドル高は続きそうであり、欧州や新興国は問題を抱えているところが多いです。したがって当面はドル、ならびにアメリカ中心の投資戦略で良いと思われます。