【今日のまとめ】
- 16年3月のEPSに基づくアリババのPERは31.6倍
- 成長率に照らして考えると現在の株価は常識の範囲内
- 幹事証券によるリサーチ開始、MSCI指数採用の可能性に注目
- ヤフーはアクティビストの標的にされる可能性あり
- スプリントはネットワークのアップグレードがほぼ完了
アリババの上場は無事完了した
アリババ(ティッカーシンボル:BABA)は9月18日に68ドルで値決めされ、翌19日からニューヨーク証券取引所で取引開始されています。9月26日の引け値は$90.46です。同社の決算の〆は3月末で、2014年3月の一株当たり利益(EPS)は$1.50でした。現在のコンセンサスでは2015年3月が$2.24、2016年は$2.86と予想されています。2016年3月のEPSに基づいた株価収益率(PER)は31.6倍になります。
この株価収益率は、高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか?
ひとつの目安として、ウォール街には「PERの倍率は、EPS成長率の%と、ほぼ同じであることが好ましい」という考え方があります。これは、あくまでも大雑把な目安です。
例えばアメリカの代表的なハイテク株は下のようなEPS成長率をしています。
【略号の説明】
- INTC=インテル
- MSFT=マイクロソフト
- GOOG=グーグル
- FB=フェイスブック
- CSCO=シスコ
- CRM=セールスフォース
- FFIV=エフファイブ
- BIDU=バイドゥ
- BABA=アリババ
- AAPL=アップル
アリババの場合、2015年(=FY2016年3月)にかけての成長率は27.2%ですので、ほぼ先に述べた31.6倍というPERと似たような数字になっています。言い換えると、成長率に照らして考えると、現在の株価評価はリーズナブルな範囲内に収まっているわけです。
今後のイベント
さて、IPOして一カ月が過ぎると、幹事証券各社がリサーチ・レポートを出し始めます。従って、これが次の株価に影響を与えるイベントです。
もうひとつ株価刺激材料があります。現在のところアリババは主要株価指数に採用されていません。しかし株価指数を出しているMSCIが、将来、採用基準を改め、アリババを指数に含めることを検討中と伝えられています。このニュースが出れば、同指数をベンチマークとしている投資家やETFは急きょアリババを組み入れる必要が出てきます。
関連銘柄への影響
さて、アリババの株式の33%はソフトバンクが持っています。このことはアリババの含み価値が736億ドル近いことを意味します。
この含みはソフトバンクの負債と相殺して考えることが出来ます。そのことはソフトバンクが今後さらに新しい買収を展開することを可能にします。
投資家の観点からすれば、これまではアリババに投資するには1.ソフトバンク株を買う、ないしは2.米国のヤフー(ティッカーシンボル:YHOO)株を買うこと通じてしかできなかったのですが、アリババそのものが上場されたことにより、そのような間接的な投資方法をする必要が無くなりました。
このためアリババが上場されて以降、目先筋からの売りが出ました。ただこれは一過性の現象であり、中期的にはアリババの含み価値が見直されると思います。
一方、今後ヤフーがどうなるか? という事がしきりと話題になっています。それはヤフーがバランスシート上のキャッシュ80億ドルに加えて、アリババ株16.3%(=約350億ドル)、ヤフー・ジャパンの35.5%(約81億ドル)などを未だ持っているからです。
もっと踏み込んで言えばヤフーはアクティビスト(株主の立場で経営にプレッシャーをかける投資家)の標的にされやすいということです。
ソフトバンクがヤフーを買収するというシナリオも取沙汰されていますが、目先ソフトバンクは買収したスプリント(ティッカーシンボル:S)のテコ入れに忙しいと思います。
スプリントはサンフランシスコ周辺を除き、ほぼネットワークのアップグレード工事が完了しました。「スパーク」と呼ばれる新しいネットワークは、これまでソフトバンクが買収により獲得した周波数帯域の在庫を整理し直し、パッチワークのようにつなぎ合わせることで、ユーザーからすればあたかも一つの真新しいパワフルなネットワークを利用しているようなサクサク感を与える仕組みになっています。
この強力なインフラストラクチャの完成に合わせて、スプリントは営業面でも大攻勢に出ています。したがって半年ほど先を展望した場合、スプリントの業績が大底を付ける可能性が出てきたわけです。