【今日のまとめ】

  • ファイア・アイは政府機関などを上得意の顧客としている
  • バスコ・データ・セキュリティは金融機関向け認証システムの会社
  • シンクロノス・テクノロジーズはスマホのアクティベーションを支援
  • パロアルト・ネットワークスはファイアウォールの会社
  • チェックポイント・ソフトウェアは最初の上場セキュリティ銘柄

サイバー・セキュリティ・セクターの概観

このところサイバー攻撃が話題にのぼらない日はありません。調査会社ガートナーによると、去年、世界で5.5億人分の個人情報が流出したそうです。これは前年比で+62%でした。

サイバー・セキュリティ市場は3,600万ドルだと言われています。

企業や公的機関は絶えずサイバー攻撃の脅威に晒されています。ハッカーの手口は巧妙化し、そのターゲットは従来のように注目度の高い企業や政府機関だけにとどまらず、あらゆる業種の企業に広がっています。

サイバー攻撃に遭った企業は、社会的信用の失墜を招くだけでなく、コンプライアンス違反などの見地から罰金を科せられるケースもあります。

このセクターには下のような銘柄があります。

銘柄名 コード 事業内容
ファイア・アイ FEYE サイバー・セキュリティ
バスコ・データ・セキュリティ VDSI 金融機関向け認証システム
シンクロノス・テクノロジーズ SNCR スマホのアクティベーション
パロアルト・ネットワークス PANW ネットワーク・セキュリティ
チェックポイント・ソフトウェア CHKP ネットワーク・セキュリティ

ファイア・アイ

ファイア・アイ(ティッカーシンボル:FEYE)はサイバー・セキュリティの会社です。同社は電子メール経由の攻撃や共有ファイルに潜むマルウェアの検出のための、ハードウェアならびにソフトウェアのソリューションを提供しています。

同社のハードウェア製品はネットワーク機器の多くがそうであるようにシャーシに組み込まれており、ブレード(プリント基盤)を差し換えることでアップグレードが可能です。

同社は20の製品ファミリーを揃えており、顧客企業数は約2,200社です。同社の顧客には常に外国からのサイバー攻撃に晒されている政府機関はもちろんのこと、「グローバル2,000」と言われる多国籍企業が多いです。同社の売上の26%が海外です。

当初、同社の製品は電子メール脅威対策プラットフォーム(EXシリーズ)、ウェブ脅威対策プラットフォーム(NXシリーズ)、ファイル脅威対策プラットフォーム(AXシリーズ)の三つでした。現在はそれにモバイル、クラウド、マネージド・サービスなどの新しいサービスが加わっています。

またバーチャル・マシンと呼ばれる、仮想化された防御システムにより、動的に、リアルタイムの脅威に対応してゆくサービスに移行しつつあります。

同社はライバル企業、マンディアンを買収し、これまで取引関係の無かった多くの新規顧客を手に入れました。当面、ファイア・アイとマンディアンそれぞれの顧客ベースに、クロスセルの機会が見込まれます。

同社のサービスの潜在市場は300億ドルであり、現在はそのほんの一部しか開拓されていません。

同社の売上構成を見るとサブスクリプションやサービスなどの、リピート性の高い課金形態が主となっています。

ファイア・アイは未だ若い会社なので赤字です。また2013年の一株当たり売上高が大きく下がっている理由は発行済み株式数が急増したことによります。

【略号の説明】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

バスコ・データ・セキュリティ

バスコ・データ・セキュリティ(ティッカーシンボル:VDSI)は金融機関向け認証システムを提供しています。

同社は2003年から2013年にかけて年率+21%で売上高を伸ばしてきました。また46期連続して黒字を出しています。世界約100か国で1万の顧客を持っています。

同社は、とりわけ銀行セクターに強く、グローバル・トップ100行のうち半分以上が同社の製品を使っています。代表的な顧客企業はシティ、バンク・オブ・アメリカ、HSBC、サンタンデールなどです。

なかでもHSBCは2013年の売上高の18%を占めており、若しこの顧客からの受注が減少すると業績への影響が大きいです。また上位10顧客が総売上高に占める割合は40%となっています。

シンクロノス・テクノロジーズ

シンクロノス・テクノロジーズ(ティッカーシンボル:SNCR)はスマホのアクティベーション・ソフトウェアの会社です。

同社の主な顧客は通信会社、ケーブル会社、OEMなどであり、スマホ、ラップトップ、タブレット、車載デバイス、ウェアラブル、IoT関連商品などのアクティベーションの際に使用されます。

主な顧客はAT&T、ベライゾン、ボーダフォン、オレンジ、スプリント、コムキャスト、アップルなどです。上位5顧客が総売上高に占める割合は77%です。

同社は最近、クラウドのビジネスに注力しています。これはスマホのユーザーがクラウドにデータを保存することを支援するサービスです。このサービスは通常、通信会社のサービスのホワイトレーベルとして提供されます。従ってベライゾンであれば「ベライゾンのサービス」として提供されるため、マーケティングの必要がありません。

またこのサービスに関してはデバイスの数によって対価を貰えるため、ユーザーのデータ消費量や、最終顧客への課金の仕方などを思案する必要はありません。第2四半期の売上高のうち4,670万ドルはこのクラウド関係の売上で、前年同期比+74%でした。

同社は「ワークスペース」というビジネス向けのクラウド・サービスを通信会社とタイアップしてローンチしました。「ワークスペース」は個人向けクラウド・サービスより少し単価が高いです。

パロアルト・ネットワークス

パロアルト・ネットワークス(ティッカーシンボル:PANW)はウイルス、マルウェア、その他の脅威からネットワークを守るファイアウォールのハードウェアならびにソフトウェアを作っています。同社は脅威の発見、攻撃を未然に防ぐサブスクリプション・サービスも提供しています。現在のサイバー・セキュリティ市場における同社のシェアは5~7%です。

同社の売上高は順調に伸びてきています。

同社の売上高は米州が63%を占めています。

2012年から2013年にかけて発行済み株式数が急増した関係で、一株当たりのデータは前年比でマイナスとなっています。

パロアルト・ネットワークスの第4四半期(7月期)決算は良い内容でした。EPSは予想と一致する11¢でした。売上高は予想1.61億ドルに対し1.78億ドルでした。今期中の請求額は前年同期比+64%の2.33億ドルでした。

来期のガイダンスはEPSが予想と一致する12¢、売上高は予想1.73億ドルに対し、1.78~1.82億ドルが提示されました。

同社は去年、顧客開拓を加速するため先ず自社の製品を顧客に使ってもらうキャンペーンを実施しました。それらのフリー・オファーで獲得した法人顧客が、いま次々に課金顧客になりつつあります。一度課金顧客になると、その顧客に新しいサービスを追加販売する機会は沢山あります。

また同社は最近、ジュニパー・ネットワークス(ティッカーシンボル:JNPR)との係争を示談に持ち込み、訴訟リスクを解消しました。

チェックポイント・ソフトウェア

チェックポイント・ソフトウェア(ティッカーシンボル:CHKP)は1996年にゴールドマン・サックスの主幹事で新規株式公開(IPO)されたインターネット・セキュリティの老舗です。

同社は様々なセキュリティ・ソリューションを提供しており、それらは大きく分けてハードウェアとソフトウェアに分類できます。

アプライアンスと呼ばれるハードウェアはピザボックスのカタチをしており、企業のネットワーク室などに設置されます。

ソフトウェアは、アップグレード、メンテナンス、サブスクリプションなどから成っています。この部分は極めてコンスタントに継続売上が見込めます。ソフトウェアは顧客から入金があっても契約期間が満了しないと売上高には計上されません。

同社の営業キャッシュフロー・マージンは58%と極めて高いです。