トランプ氏はこれまでの「過激発言」を修正できるか?

今後、トランプ氏から、以下①~③につながる発言が出れば市場に好感されます。

①共和党主流派との和解を目指す発言

共和党は今回の選挙で、米議会の上院でも下院でも多数派を確保しました。したがって、共和党のトランプ大統領は、やりようによっては強い大統領になることができます。ただし、トランプ氏がこれまでのように共和党主流派と反目したままだと、何も実行できなくなります。トランプ不支持を表明した共和党議員まで含めて、共和党主流派と融和をはかる姿勢を見せると、政策運営がスムーズに運びます。

②国際社会との繋がりを重視する発言

トランプ氏は、これまでイスラム教国を目の敵にする発言を繰り返してきました。このままでは、サウジアラビアなど中東の親米国との関係まで悪化する懸念があります。

また、米国に工業製品を輸出する国々(メキシコ・中国・日本)を米国の雇用を奪うと非難し、自由貿易を否定する主張を繰り返してきました。米国が保護貿易主義に走れば、世界経済にも米国経済にもダメージが及ぶと懸念されていました。今後、こうした海外に対する攻撃的発言を控え、現実的な外交・経済戦略を目指す姿勢を見せれば好感されます。

③大規模な景気対策(公共投資)を実行し、米景気を強くする発言

かねてから、社会インフラ再建のために大規模な公共投資を実行する方針は打ち出していました。世界的に金融政策で景気を回復させることの限界が意識される中、米国が公共投資を強化する姿勢を見せれば、世界景気にも好影響が及ぶと考えられます。

トランプ氏が突然金融市場に好感される人物に変わるわけはありませんが、勝利宣言の文言は、とりあえず上記①―③につながる内容を含んでいたので好感されました。

上記①―③の中で、トランプ氏にとって一番の難題は、「②国際社会との繋がり重視」の姿勢を示すことです。NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の否定、高率の輸入関税導入などの過激発言を繰り返して米国民の歓心を買ってきただけに、大統領になった途端に現実路線に戻ると、熱狂的な支持者から反発を受けることになります。