日経平均は、17,000円を中心とした狭いレンジで動いています。今日は、短期的な需給と今週のイベントで、注意すべき点についてご報告します。

(1)短期的な需給で注意すべき点

まず、昨日のレポートに記載した、年初から―3月18日までの主体別売買動向を再掲します。年初から、外国人が売り、公的年金と個人投資家が買ってきたことがわかります。目先、公的年金の買いが減少する可能性があることに注意が必要です。

日本株の主体別売買動向・売買代金差額(2市場1・2部抜粋):
2016年1月4日―3月18日

売買主体 売り越し(▲)・買い越し(+)金額
外国人 ▲4.8兆円
信託銀行(主に公的年金) +1.9兆円
個人投資家(現物+信用売買) +1.3兆円
事業法人(主に自社株買い) +0.5兆円

(出所:日本取引所グループ資料から作成)

  • 公的年金の買いは月内最終売買日(3月28日)が過ぎると一巡する可能性も

    1-3月は、公的年金や日銀の買いが、日本株を下支えしました。通常、日本株の動きを主導する外国人投資家は、年初から3月18日まで、11週連続で日本株を売り越しています。

    公的年金は、3月末に決算を迎えます。決算発表時に、3月末の株式組入比率や、2015年度(2015年4月―2016年3月)の運用成績が公表されます。株式の組入比率が、基準値よりも低くなっている場合は、組み入れを引き上げるための買いを入れることがあります。今年は1月から日本株が急落したので、日本株の組入比率(時価ベース)が低くなり、組入比率を基準値に近づけるために、買い付けを行っていた可能性があります。

    公的年金は、3月決算期末の組入比率を調整するために、3月末受け渡しベースの最終売買日(3月28日)まで売買を行いますが、3月29日以降は、4月受け渡しになるので売買を控える傾向があります。あくまでも推定ですが、3月28日まで入っていた可能性がある公的年金の買いが、目先、入りにくくなる可能性もあります。

  • 配当取りの買いは3月28日で一旦終了

    個人投資家などによる、3月決算企業の配当取りのための買いは、3月28日で終わります。3月28日までに買い付けると、配当3月末に確定する配当金や株主優待を受け取る権利が得られますが、今日(3月29日)買っても、3月の配当は得られないからです。

  • 日本銀行の買いも減少している

    日銀は日本株ETF(指数連動型上場投資信託)を買い付けることで、日本株の下支えをしています。また、J―REIT(日本の上場不動産投資信託)の買い付けも行っています。日本株が下がった1-2月はETF買付額が大きかったのですが、日本株が反発した3月は買い付けが減りました。日銀は下がっている時に買い、上がっている時には買わない傾向がはっきりしています。

日本銀行による日本株ETFおよびJ-REITの買い付け実績:
2016年1月4日―3月28日

(単位:億円)

約定日 ETF買付額 J-REIT買付額
1月4日 369 12
1月5日 12
1月6日 352
1月7日 352 12
1月8日 12
1月12日 352 12
1月14日 352 12
1月18日 352 12
1月19日 352 12
1月20日 352
1月26日 352
1月28日 12
1月合計 3185 108
2月2日 12
2月3日 330 12
2月4日 330 12
2月5日 330
2月8日 330
2月9日 330 12
2月10日 330 12
2月12日 330 12
2月19日 330
2月合計 2640 72
3月4日 12
3月8日 336
3月9日 336
3月25日 12
3月合計 672 24

出所:日本銀行

  • 外国人投資家がどう動くかが鍵

    本レポートで繰り返しお伝えしていますが、日本株を動かしているのは外国人投資家です。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売る傾向があるからです。1-2月は外国人投資家の強引な売りで、日経平均が急落しましたが、3月は、下値を叩くような売り方はしなくなっています。3月は、外国人の売りがおとなしくなる中で、公的年金などの買いが下値を支え、日経平均は17,000円近辺でやや膠着しています。

    4月に、日経平均が18,000円に向けて上昇するか、16,500円以下へ反落するか、決めるのは外国人になるでしょう。外国人投資家は、為替が円高に動くと日本株を売り、円安に動くと日本株を買う傾向が鮮明です。為替の動きに注意が必要です。

(2)4月1日(金)の重要イベントで為替がどう動くか注意

毎月、第1週に、米国で重要な経済指標の発表が集中します。4月第1週の営業日は、4月1日(金)だけで、この日に、重要指標が発表されます。2月のISM製造業指数、並びに2月の雇用統計が特に注目されます。米景気が堅調で、早期利上げの見通しが広がれば円安が進む可能性があります。ただし、弱い指標が出て、早期の利上げは難しいという見通しが広がると、円高が進む見込みです。

4月1日には、3月の日銀短観が発表されます。大企業製造業DIの低下が見込まれていますが、低下幅がどの程度か注目されます。