ドル円は104円台が重い。

091201

05日(月):ドル円は、103円台前半に下落。黒田総裁はマイナス金利を見直しか。

週明けのドル円は頭が重い。先週金曜日の雇用統計で104円台前半まで水準を切り上げたドル円は、円安の勢いが続かず、月曜日の欧州時間には103.14円まで下落。その後はNY市場がレーバーデーで休場のため様子眺めの相場となり、終値は103.424円(前日比-0.599円)でした。

黒田総裁はこの日講演を行い、「マイナス金利が、銀行の収益や年金の利回りに影響を与えている」ことを認めました。「量、質、金利の各次元での拡大は、まだ十分可能」であるとの姿勢は変わりませんが、今月の日銀会合でまとめる総括的な検証で、現在の追加緩和策の見直しをせまられるか、少なくともマイナス金利拡大の可能性は低くなったと市場は受け取りました。

欧州通貨ではポンド/ドルが堅調。先日の英製造業PMIに続き、この日発表されたサービス業PMIも市場予想を上回る強さを示したことでブレグジット後の景気不安が後退。ポンドは一時、7月15日以来の高値となる1.3375ドルまで上昇しました。
 

06日(火)ドル円は、一時101円台まで大幅円高。米ISMさえず、利上げ見通し後退。

103円台半ばからスタートした火曜日のドル円は、東京時間に103.80円まで上昇して当日高値をつけたところで、「FOMC決定前に日銀は追加緩和を行うべきではない」との浜田内閣官房参与の発言が出て、再び103円台前半に下押し。発言の意味は、FOMCが利上げを見送った場合、せっかく日銀が追加緩和を行っても、その効果が打ち消されてしまうリスクがあるから、ということだったのですが、マーケットでは、追加緩和自体に否定的と解釈されて、ドル売り・円買いにつながりました。

その後103円台前半の取引を続けたドル円は、NY時間に急落。102円台を一気に抜けてして101.92円まで売られました。この日発表された米非製造業ISMが、6年以上ぶりの低水準となる弱い結果だったが理由。先週の米雇用統計以来、9月利上げ見送り観測がくすぶっているところに、製造業ISMが不況を示す50割れとなって、そのうえ非製造業ISMも冴えないため、一部では年内利上げに対しても弱気の見方が出ています。

激しいドル売りの中で、ユーロドルは1.11ドル台半ばから一時1.1263ドルまで急上昇。ポンドは1.33ドルなかばから、7月15日以来となる1.3443ドルまで上昇。英国では最近の指標が上向いており、景気不安が後退しています。ブレグジット後のマーケットは、こぞってポンドショートをつくっているため、損切りのポンド買いも出ている模様です。
 

07日(水):ドル円は、101円台前半へ。月曜から3日続落。

木曜日のドル円は昨日の流れを引き継ぎ、東京時間にさらに円高が進みました。
日銀は21日の会合で「総括検証」を取り纏めますが、新聞報道によると、日銀内部でマイナス金利派、量的緩和派、追加緩和反対派の三つに意見が分かれているとのことです。金融政策に統一見解が持てない状態では強力な追加緩和も期待できず、さらに前日銀理事が「「9月の決定会合で追加緩和なし」と発言したことが伝わると、ドル円は一時101.19円まで急落。海外時間に入ると値動きが細り、101円台後半まで自律反転する場面もありましたが、102円台には戻れず、終値は3営業日続落の101.755円(前日比-0.238円)でした。

RBAは火曜日(6日)の会合で、政策金利を1.5%に据え置きました。最近の豪経済指標は堅調で、RBAが利下げを急ぐ理由はなく、金利据え置きは予想通りの結果でした。また、この日発表の豪第2四半期GDPは、予想をやや下回ったものの、RBAの見通しを上回っているため、年内再利下げはないとみられています。

金利を求める投資家が、豪ドル/ドルを0.7697ドルまで押し上げました。同様にNZD/ドルにも買いが集まり、昨年5月以来の高値となる0.7483ドルまで水準を切り上げています。豪ドル高は、RBAにとって相変わらずの懸念材料であることは変わりませんが、今は推移を見守っている状況。FRBが年内利上げすれば、豪ドル高もある程度解消すると考えているようです。しかし状況が変わって年内利上げがなくなれば、RBAは豪ドル高対策に本腰を入れてくるでしょう。

BoC(カナダ中央銀行)はこの日会合を開き、政策金利を0.5%に据え置きを決定。米国と密接な経済関係を保つカナダですが、BoCが成長見通しやインフレに慎重な姿勢を示していることから、FRBに追随して利上げする可能性は低いと見られています。
 

091202

08日(木):ドル円は、102円台まで円安に戻る。ECBは追加緩和見送り。

木曜日のドル円相場は、101円台半ばで小動きを続けていましたが、NY市場の後場になってやや大きく円安に動き、前日の高値を上抜けして102.59円の高値をつけました。ECB会合を受けてドイツ国債利回りが上昇、それにつられて米国債利回りも上昇したことがドル買い材料となった模様。終値は102.474円(前日比0.719円)。

ECBはこの日会合を開き、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.00%に据え置くことを決めました。上限金利の限界貸出金利(上限金利)と中銀預金金利(下限金利)も、それぞれ0.25%、-0.40%に据え置き、市場予想通りの決定となりました。ECBは、2018年の経済見通しを引き下げる一方で、インフレ見通しは据え置きました。また、月間800億ユーロの資産買入は、予定通り2017年3月まで続けるとしました。

会合後の会見でドラギ総裁は、月間800億ユーロの資産買入は、予定通り2017年3月で終了するとして、一部で噂のあった期限延長については、議題にならなかったと述べました。量的緩和の延長は、量的緩和の拡大と同義であることを考えると、「延長なし」の決定は、追加緩和の必要がないという意味ですから、非常にタカ派的であるといえます。

ユーロドルは1.12ドル台後半から1.1326ドルまで買われましたが、これが当日高値となってその後は徐々に勢いを失い、再び1.12ドル前半まで下落。それまで114円台前半でくすぶっていたユーロ円は、ユーロ高と円安に支えられて、115.44円まで値を伸ばしました。

一方で、オセアニア通貨であるNZドルの堅調さが目立っています。NZドルは一時、対ドルで0.7483ドルまで上昇して、今年の高値を更新しています。NZのファンダメンタルズは良好なうえ、主要国が低金利やマイナス金利を実施するなかで、NZドルの高金利は際立っていることが買いにつながっています。

またNZドルは、豪ドルに対しても2015年4月以来の水準までNZドル高。これは豪ドルが弱くなったというよりも、良い材料を大部分織り込んでいる豪ドルに対して、まだポテンシャルのあるNZドルが急激に追い上げているからです。
 

09日(金)ドル円は、一時103円台まで円安。米9月利上げ観測が再浮上。

9日、102円台半ばからスタートしたドル円は、東京時間午前に101.97円まで一時下げた後は、102円台前半でもみ合いが続きました。しかし海外時間になって、投票権のあるローゼングレン・ボストン連銀総裁が、早期利上げに対して前向きな姿勢を示したことをきっかけに、103.05円まで上昇。

ローゼングレン連銀総裁は、「引き締め見送りの長期化は米経済成長と雇用市場にとってリスクになる。」と発言。9月利上げが再び強まったことで、米10年債利回りが6月下旬以来の高い水準となる1.66%台まで上昇する一方、ダウ平均株価は400ドル近い大幅下落となりました。

ただその後、同じく投票権のあるタルーロ・FRB理事から「米経済が利上げを必要とする確証をまだ得ていない」との慎重意見が出ると、ドル円は102円台へ反落。なお、タルーロ・FRB理事は、インフレが2%で安定する確証が得られるまででは利上げすべきではないとの立場ですが、年内利上げについてはその可能性を排除していません。

ドル円の終値は、102.691円(前日比+0.217円、前週比-1.332円)でした。