8月雇用統計と9月利上げ

明日、注目の8月米雇用統計が発表されます。
ジャクソンホールでのイエレン議長の講演以来、米利上げが俄然盛り上がっています。フィッシャー・FRB副議長は、「8月の雇用統計がFOMCの判断材料になる」と発言しています。今回米雇用統計が利上げの最大の鍵を握るわけです。

FOMCは、NFP(非農業部門雇用者数変化)が6万人程度でも雇用市場は安定しているとの見方なので、今回の結果が予想通り(+18.0万人)ならば、まず合格点といえるでしょう。
 

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利上げにはインフレ率上昇の確証が必要

しかし、利上げは確実と慢心するのもリスクです。
最新のFOMC議事録によると、一部は早期利上げを主張していたものの、多くの委員はより慎重で、インフレ率が2%に近づく確証が得られるまで利上げを待つべきとの意見で一致していました。利上げには、労働市場の拡大だけではなく継続的なインフレ率上昇の確証が必要である、というのがFOMC委員の認識であり、これは今も変わっていないはずです。

今後はNFPよりも平均労働賃金が重要

米国の労働市場は完全雇用と呼ばれる水準に近づくにつれて、NFPが大幅に伸び続けることは難しくなります。したがって、今後は雇用者数よりも、平均時給の伸びが重要になってきます。

平均時給が高くなれば、消費に回るマネーが増え、物価は理想的な形で上昇することになります。そうなれば、FRBは安心して利上げできるわけです。イエレン議長が、賃金上昇率とインフレ率に注目しているのはそのような理由です。つまるところ、インフレ率が上向かない限り、FRBは利上げに積極的になれないのです。

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FOMCにとって、待ちすぎるのもリスク

とはいえ、別の見方をすると、インフレ率がはっきりと上向かないうちに、雇用統計がペースダウンし始めてしまうとFOMCは永遠に利上げできなくなることもありえます。今のFOMCにとって、雇用統計が最後の頼り、ともいえます。

FOMCは、インフレ率を気にする一方で、最低今年1回の利上げが必要と考えています。今年できなければ、そもそも昨年の利上げが間違いだったのではないかという、そしりを受けることにもなります。

12月まで様子を見るより、金融市場が落ち着き、雇用統計が強さを保っている今のうちに実施すべきだと考えても不思議ではありません。そう考えると、今回の雇用統計が良ければ、というより、相当悪くない限り、9月米利上げの可能性は十分にあるでしょう。