具体プランなしの英国はEUを離脱できるのか?

英議会は真空状態

EU離脱について、英議会では、与野党間だけではなく、同じ党内部においても亀裂が走り、全くの混迷状態に陥っています。

EUを離脱することは、国民投票によって英国民の民意となりました。しかし、どのように離脱するかというそのプロセスは、英国もEUも明確な手順を持っているません。そもそも、どうやって離脱するのかという問題さえ未解決のままなのです。

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国民投票は法的拘束力がない。

EU離脱を正式に決定するには英国会の承認が必要。しかし、国会議員の大半はEU残留だったのです。国民投票の結果が覆ることはないとしても、英議会が離脱を急ぐという動きにはならないでしょう。
 

リスポン条約とは?

EU離脱を決めた加盟国は、リスボン条約第50条に基づき、離脱の意思をEU理事会に通知しなければなりません。英国が第50条を発動した場合、発動から2年間の協議期間を経て正式に離脱することになります。ところが、この条項は強制力がないのです。英国は、したがって、即座に第50条を発動するつもりはなく、最短でも新首相が決まる9月まではこのままの状態が続くでしょう。
 

英国は脱退プランを持っていない

リスボン条約50条はたった13行の、条項というより覚書程度の内容で、具体的な脱退方法については何も記されていません。そもそも加盟国が離脱をすることを想定していないのです。

英国もそれは同様で、離脱派も具体的なプランは全く持っていないようです。したがって、英国は脱退の具体的な計画を決めないうちは、50条を発動するつもりはないようです。

解散総選挙?

キャメロン首相が辞任を表明したことで解散総選挙の可能性が出てきました。ところが、英国の選挙法によると、総選挙は5年に1度と定められています。選挙は去年実施しているので、次回は2020年。前倒しで総選挙をするためには、不信任案を国会で通す必要がありますが、可決には議員の55%の賛成票が必要。解散総選挙の可能性は、現時点ではかなり低いといえます。
 

スコットランド独立?

前回の独立に対する住民投票の時に、英国は、「イギリス残留こそがEUのメンバーとして残る方法だ」とスコットランドに迫った経緯があります。スコットランドが独立を見送ったのは、EUから除外されて経済的に孤立することを恐れたのが大きな理由だといわれています。
ところが、今後はイギリスと共にいるがゆえに、スコットランドEUのメンバーでいられなくなってしまったのです。EUとの関係強化を目指したいスコットランドには独立に傾くことになるでしょう。