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日米自動車貿易摩擦

2017/2/1
日米首脳会談が2月10日に開かれることが決まりました。その会談では日米自動車貿易問題が焦点になる見通しです。1月28日のトランプ大統領と安倍首相との電話会談で、トランプ氏が日本の自動車メーカによる米国内での雇用創出を要請したと伝えられています。安倍首相は、その準備として急遽トヨタ自動車の豊田社長と会談する予定とのことです。
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日米首脳会談が2月10日に開かれることが決まりました。その会談では日米自動車貿易問題が焦点になる見通しです。1月28日のトランプ大統領と安倍首相との電話会談で、トランプ氏が日本の自動車メーカによる米国内での雇用創出を要請したと伝えられています。安倍首相は、その準備として急遽トヨタ自動車の豊田社長と会談する予定とのことです。

トランプ大統領は首脳会談で厳しい要求を突き付けてくる可能性があり、90年代の日米自動車貿易摩擦が再燃するとの懸念が高まってきています。90年代の日米貿易摩擦によって円高になったことから、現在のドル円相場のドル上昇の上値を抑えている要因となっています。一方で、トランプ大統領がドル高への牽制発言を出した割には、ドル高の修正が起こっていないのも現状です。90年代であれば、米大統領が口に出した瞬間に数円のドル安・円高へと急落したものです。急落しない背景は、おそらく、90年代の貿易構造とは異なっていることをマーケットは理解しており、一方でトランプ政策への期待が続いていることが背景にあるようです。トランプ政策は、FRBの利上げ、米長期金利の上昇をもたらし、ドル高へとつながり、ドル円は日米金利差の更なる拡大からドル高・円安になるとの構図です。

米国の貿易赤字

貿易赤字や貿易黒字は、為替を動かす変動要因のひとつです。80年代から90年代初めにかけて、米国の貿易収支の発表はマーケットの最大注目材料でした。現在の米雇用統計並みの注目度でした。月に一回、米国貿易収支が発表される日は、ディーラーも気合いが入っていました。東京時間の夜10時半に発表されるため(冬時間)、それまで食事に出かけ、夜10時過ぎに戻ってきてディーリングをやります。輸出や輸入企業、生保などの機関投資家も取引に参加します。夜のディーリングルームは、お酒が少し入っていることもあり昼間よりも活気がありました。米国の貿易赤字が拡大した場合はドル売り、縮小した場合はドル買いと素直に反応していました。今回もこのような動きになるのでしょうか。今回は、貿易構造も変わってきており、政治的な色彩も強く、また新たなルールが出来る可能性もあることから状況は変わってきていることに留意する必要がありますが、今後、米国の貿易赤字の拡大や縮小で相場が動くことも考えられるため、米国の貿易赤字の現状を理解しておくことが重要となってきます。また、トランプ大統領の主張・要求を確認するために、貿易赤字に関する一連の発言を振り返ってみます。

貿易収支は、輸出額が輸入額よりも大きければ貿易黒字となり、輸入額が輸出額よりも大きければ貿易赤字となります。米国の貿易収支は、1970年代半ば頃から赤字を続け、80年代のレーガン大統領の時代に赤字幅が拡大しました。レーガン大統領は軍備拡大とともに積極財政を取ったことから、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」と呼ばれていました。両方の赤字ともドル安要因ですが、財政赤字拡大によって長期金利が上昇し、ドル高が続いていました。しかし、米国はこのドル高に耐えられなくなってドル高是正を働きかけ、1985年にプラザ合意が成立しました。ドル円は240円から3年で半分の120円の急激な円高に見舞われました。トランプ大統領の政策と似ているため、当時の米国の対応や経緯は参考になります。

米国の貿易赤字は、1990年は1,017億ドルでしたが、2006年のピーク8,279億ドルを経て、2015年は7,456億ドルとなっています。対日赤字の割合は、1990年が40.4%でしたが、2015年は9.2%と1割弱に減少しています。対中赤字は、1990年時点では10.3%でしたが、2015年は49.2%と約半分を占めている状況です。日本が「ジャパンバッシング」と叩かれていた時よりも赤字シエアも赤字額も大きくなっていることがわかります。メキシコも大きくシエアを伸ばしていることがわかります。それにしてもドイツは日本よりも赤字シエアが高いのに、全くトランプ氏が言及していないのは不思議です。

米国の貿易赤字国別シエア(1990年vs2015年)

1990年 1017億ドル 2015年 7456億ドル
日本 40.4% 中国 49.2%
中国 10.3% ドイツ 10.0%
ドイツ 9.2% 日本 9.2%
メキシコ 1.8% メキシコ 8.1%

貿易収支 輸出額>輸入額=貿易黒字 輸入額>輸出額=貿易赤字

このような状況を背景にしたトランプ大統領の貿易不均衡についての一連の発言は以下の通りです。

  発言内容 現状
1月11日 記者会見で「米国の通商交渉は大失敗だ。中国との貿易で年間数千億ドルもの損失を出し、日本やメキシコなどとの間に貿易不均衡がある」 米国の貿易赤字の約半分を中国が占め、日本はドイツに次いで3位で1割の赤字
1月17日 17日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が掲載したインタビューで「我々の通貨(ドル)は強すぎる。米企業は(中国勢と)競争できない」(中国の人民元政策への批判の中での発言)。同日の電子版では、「ドルを押し下げる」、「強いドルを持つことは有利な面もあるが、多くの不利な点も抱える」とドル高を牽制 1990年代半ば以降、歴代政権は「強いドルは米国の国益」を掲げてきた。トランプ氏の主張は伝統的な「強いドル政策」に距離を置く考えを示唆
1月23日 米企業の経営者らとの会談で、日本との自動車貿易を「不公平だ」と名指しで批判 日本の輸入関税はゼロに対し米国は2.5%の関税。米国は環境規制などの非関税障壁に不満
1月26日 2国間の通商交渉で「通貨安誘導に極めて強い制限を導入する」 IMFは一定の条件下での為替介入を容認。米国独自の為替ルールは国際ルールと矛盾が生じることに。TPPへの不満を反映
1月28日 安倍首相との電話会談で、日本の自動車メーカによる米国内での雇用創出を要請 日本メーカは米国で生産拠点26か所、研究開発拠点36か所、販売店なども含め150万人を雇用
米国生産台数は85年の29万台から2015年は384万台に拡大

これら発言を見ていると、トランプ大統領は、貿易赤字は損失だと主張し、米国の製造業を奪い、雇用を減らす元凶だと主張しています。従って、貿易赤字を減らせば雇用が増える、貿易赤字を減らすためには米国内での製造を増やせばよいとの論理です。また、貿易赤字をもたらすドル高は米国にとって不利益であり、また相手国の通貨安誘導は認められないとの考えを示しています。現時点では、トランプ政策への期待から、米国利上げ期待も高まっており、ドル高是正のような動きは見えていませんが、米景気がスローダウンし、FRBの利上げペースがスローダウンするとの観測が高まれば、ドル安に拍車がかかるかもしれません。また、今後、貿易赤字が拡大すれば、これら主張のトーンが強くなる可能性があります。

4月には米国の半期為替報告書の発表が控えています。中国は為替操作国として指定されるのか、あるいは為替操作国の認定基準を厳しくしてくるのかどうか注目です。2月10日の日米首脳会談ではどの程度の厳しい要求を突き付けてくるのでしょうか。日本の対応によっては4月の為替報告に影響が出て来るかもしれません。ドル円については、ドル上昇を抑制する環境がしばらく続きそうです。

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