帰省したとき親が投資をしていることに気がついた
夏の帰省を終えて仕事に戻った、という方は多いと思います。今回はちょっと「帰省と投資」について考えてみたいと思います。
といっても、帰省中のマーケットウォッチのあり方やポジションの取り方、というテーマではありません。帰省したとき、「親の投資状況を知ったら、子はどう考え行動すべきか」というテーマです。
親が退職金や企業年金を手にした状況で、セカンドライフをスタートさせているとき、その資産を投資していて、しかも運用スタンスがイマイチであったと気がついたとき、子としてどう関与すべきでしょうか。
親の資産運用についてどこまで踏み込むか
親がどのような資産運用をするかは、もちろん親の自由です。しかし
- 親の保有資産額が高額であり、
- その資産額の相当は老後のために用いるべきためリスクは抑える必要がありながら、
- 投資知識はあなたより未熟であり、
- かなりリスキーな投資をしている、
としたらどうでしょうか。
保有資産額が高額である
セカンドライフに入った両親は退職金を手にしていることが多く、人生において最大の預金額を得ていることがほとんどです。これをベースに投資をすると、投資金額も巨額になっていることがしばしばあります。
リスク許容度はあまり高くないはず
一方で、年金生活者のリスク許容度は基本的に高くないはずです。投資経験も浅く、また投資の判断力は徐々に低下していきます。仮に退職金が2,000万円あったとしても、セカンドライフが20年に及ぶ時代において、毎月8.3万円ずつ取り崩せば底をつく金額です。95歳まで長生きをすることを見越せば5.6万円しか崩せません。
ちなみに一般的な年金生活者の家計では月6万2,326円が不足となっていて何らかの取り崩しに頼っています(総務省家計調査年報による)。運用でリスクを取って大きく元本割れしている余裕はないわけです(市場の回復を待つ時間的余裕を期待することも難しい)。
親の資産運用については、現役世代と比べて慎重に臨むのが基本的な考え方になります。
投資の知識で親より子が上回るなら
このとき、さらに考えてみるべきは、必ずしも親の投資知識が子(つまり読者のあなた)の投資知識を上回っているとは限らないことです。
親といえば常に子を導く存在でしたが、投資については必ずしもそうとはいえません。むしろ楽天証券に口座があって金融リテラシーを持っているような読者と比べると、親のほうが投資理解度は低い可能性が十分に考えられます。
親がもし自分の投資理解度より低いと思われるのであれば、投資の方法について一定のアドバイスをしてあげたいものです。特に注意すべきは以下の3点です。
- 投資金額が高額である
- 投資商品の手数料が高すぎる
- 投資にレバレッジを組み入れている
1・投資金額が高額である
まず避けなければいけないのは高額の投資です。先ほど老後の取り崩しペースを考えても退職金の多くをリスク資産運用に回すことの危うさを指摘していますが、資産の一部であればそれほど致命的な問題にはなりません。
2,000万円の退職金のうち200~400万円程度であれば、数割の元本割れから回復できなかった場合も、その影響は限定的ですみます。老後の旅行を数回あきらめ、毎月1万程度の倹約で帳尻を合わせることもできるでしょう。
しかし、1,000万円以上の投資を行っている形跡があり、また個別銘柄の選定に夢中になっているような雰囲気があればこれはあまりお勧めできないことをアドバイスするべきでしょう。
2・投資商品の手数料が高すぎる
親の投資知識が不足していることを甘くみて、地域金融機関などが対面営業をしかけ、高い手数料を強いられる金融商品を保有している可能性は大いにあります。
個別銘柄ではなく主に投資信託を保有している場合などがこれに当たります。保有している理由として「流行の商品だから」「金融機関に勧められた」というような説明を親がしてきたらこれは介入すべきでしょう。
自分なりに証券口座を開設し、自己流投資を行っている場合でも、証券会社によっては高い売買手数料になっているかもしれません。
いずれにせよ、高い投資コストはパフォーマンス向上にも元本割れの抑止にもなりませんので、これは早急に改善させたほうがいいでしょう。
3・投資にレバレッジを組み入れている
高齢者自身が好んでレバレッジをかけて投資をすることはあまりないようですが、雑誌やネットの風潮にあおられFXにのめり込んでいるようなら、ちょっと注意喚起はしておきたいところです。
金額的に月1万円程度の損失であれば競馬のようなものかもしれませんが、何百万円も入金していて毎日1万円以上損をしているようならこれはきわめて危ない状態です。どうしてもやりたいなら、投資金額を控えさせ、レバレッジのコース選択も低くしたいものです。
また、保有している金融商品がレバレッジを組み入れている可能性はあります。オプションなどを組み入れて償還ルールがあったり、市場急変時に大きく損失する可能性があるようなものも、投資理解の低い高齢者向きではありません。商品説明のパンフなどは子としても目を通しておきたいものです。
親への話し方にはちょっとだけ工夫したい
ただし、親のプライドを損ねないよう、話の振り方には気を配ったほうがいいでしょう。
まだ親が60代であるか70代前半である場合、親もまだ自分の判断能力に自信を持っています。最初から全否定すると親も意地になってしまいますし、こちらに情報を開示してくれなくなります。
一方で、70歳代後半を過ぎていたり、病気やケガをして判断能力も低下傾向にある場合などは、子が積極的に声を掛けて情報を引き出すべきかもしれません。
夏や冬の帰省時に、お金の話をするのは悪くないことです。できれば相続対策がなされているかとか、不動産等の資産管理はどうなっているか、といった話題も取り上げてみたいものです。
お金を無心しにきたと親に思われるのではなく、オトナ同士が資産運用について語り合える関係になれれば、望ましいところです。
痴呆の心配が出てきたら、資産管理にも関わりたい
また、子が親の資産運用に積極的に関わるべきポイントがあるとすれば、判断能力が明らかに低下し始めている場合です。痴呆の心配が出てきている場合など、投資不適格といえますから、投資を中断させ、資産を適宜売却するようなことも考えるべきです。
また、必要であれば、成年後見制度などを使って、自分や信託銀行、弁護士等の専門家などに資産管理を委ねるようにしておき、簡単におかしな売買ができないような手続きもしておくとより安心でしょう。