図1:NY金 先物 (期近)日足チャート
単位:ドル / トロイオンス
短期ゴールドリースレート上昇(2015年11月20日(金)掲載分より)
ゴールドのリースレートが上昇しています。短期のswapはマイナスとなり(buy spot / sell forwardをやってゴールドを借りると、そのコストがよりかかるようになっているということ。このあたりは拙著「ゴールドのすべて」を読んで理解してください。(さりげなく宣伝。)でもみんなもう読んでますよね。(さりげなくプレッシャー。))足元のゴールド(Loco London)がタイトになっています。これはまさに昨日も書いたように現物の需要が大きく、現物が足りなくなっている。にも関わらずファンドなど投機筋はペイパーゴールド(主に先物)を売っているために価格が下がっているという状況が反映されているためです。非常に単純化していうと、ショート(売り越し)するためには、まず売るためのゴールドを借りてこなければなりません。株式の「信用売り」と同じ仕組みで、もし弱気で価格が下がると思いショートするためには、売るためのゴールドを借りる必要があります。そのためゴールドを借りるわけですが、ゴールドが売れすぎて、借りるためのゴールドが不足し、その借りるコスト(ゴールドの金利、リースレートといいます。)が急上昇している、ということです。ショートをするコストが上がってきているのでショート筋には厳しくなって来ているのです。となるとショートを買い戻そうという動きが出て当然。これが昨日書いた歪みという意味です。そしてまさにそういう動きが昨晩出ました。ゴールドは1,070ドルから一時1,087ドルまで上昇、NYは1,082ドル近辺で終りました。まあこれによって本格反転というわけにはいかないでしょうが、少なくとも行き過ぎたショートを是正する要因にはなっていますね。もちろん、もうそろそろ年末要因 - ゴールドの借り手はみんな年末にショートしたくないので、早目早めに手当てをする、というのもあるのかもしれせん。みんなが同じ方向を向いているときはやっぱり注意が必要です。
FOMC議事録公開でも小動き(2015年11月19日(木)掲載分より)
昨日のアジアは一時1,065ドルまで下げましたが、引けはオープンと同じく1,070ドル台前半に戻しました。欧米は1,067-1,072ドルのレンジでの静かなマーケット、東京時間午前4時の10月のFOMC議事録発表をまちました。4時ちょうどに1,067ドルに下落、その1分後に1,075ドルまで上昇その後すぐに1,070ドルへ戻って落ち着くという神経質な動きでしたが、結果的には大きな動きにはならずでした。議事録内容は12月の利上げが適切であるという主張が目立ちましたが、ゴールドは下がるでもなく上がるでもなく、ですね。市場の予想想定範囲内ということなんでしょう。でも底堅いですね。なかなかここから下がらない。1,070まだgood?昨日も書きましたが、先物市場における売り、欧米のETFの売り、がこの下げの直接的な要因ですが、一方、現物はゴールド、プラチナ、シルバーは結構な量が売れています。みんなもはや品不足状態に陥っていると言っていいでしょう。国内はたぶんもう探しても出てこないような状況。現物に関係ないところで価格が下がって、それによってより現物が買われるといった、歪んだマーケットになっています。この歪みどこかで矯正されるはずです。ここから下げ渋っている(ゴールド1,070ドル、シルバー14ドル、プラチナ850ドル)のはこういった現物の買いが存在しているからではないでしょうか?
ゴールド2010年以来の安値一時1,065ドル(2015年11月18日(水)掲載分より)
とうとうゴールドは1,070ドルを割り込み、ニューヨークでは1,065ドルまで下げて今年の安値を更新、2010年2月以来のレベルとなりました。ドル高が止まらず、ドルインデックスは99.6ともう100が目の前、金利上げが必至とみた投資家たちの買いがドルに集中しています。(特に今週に入ってからはその動きが顕著です。(下二番目のチャート))そしてそれはゴールドの売りというコインの裏側につながっています。これまで破れそうで破れなった今年の安値1,070ドルもとうとう昨夜割り込みました。ここはホールドするのではと思っていましたが、やはり外れました。笑。このほぼ6年ぶりの安値レベルでアジアの実需がどうするか、ですね。このところ現物は確実に流れていて、買われています。売られているのはComex先物とETF。アジアの現物は買われていますが、やはりレバレッジの聞いた先物の売りの方がmagnitudeが大きいのは当然です。ただ実際の現物の200倍もの量が取引される先物マーケットで、それが現物市場との方向から乖離するとそのひずみがどこかで出てくるはずです。実際には存在しない量の売りが出てそれで価格が下がり、現物はより買われることになり、これが続くと現物が品薄になり、プレミアムが上がるということになります。そうなると売られている先物を現引きするという動きも出てきて、そもそも現物を渡すつもりも手段もない、そして渡す現物ももちろんない先物のショートは買い戻すしかなくなります。そして下がりすぎた価格が是正される、すごく単純化した図式ですが、何事にも行き過ぎにはその戻しがあり、ちょっと気をつけたいところにきている気がします。
有事のゴールド買い続かず(2015年11月17日(火)掲載分より)
週末のパリ同時テロに対する反応として、日本時間8時のGlobexオープニングからゴールは買われて、ほぼ一日一貫して上昇していきました。高値は東京引け後の夕方で1,098ドルまで上昇しました。しかしながら「有事のゴールド買い」はここまでだったようです。ロンドン、ニューヨークではアジアで買われた分はすべて売り戻され、最終的には先週のテロ前のレベルまで下げることとなりました。おそらくはこのニュースで一通りのショートカバーが終わると新規で買う向きは少なく、そのまま下げてしまったようです。たった半日でその効果も消えてしまいました。だめですね。やはりドルが強い。昨日もちょうどゴールドが高値を打ってからドルが上がり始め、それにともないゴールドにも売りが出てきました。
明後日19日の早朝4時にFOMC10月の議事録の発表があります。とりあえず次ぎの材料はこれ。次の材料がまたテロにならないことを強く祈ります。
Commitments of Traders Report as of Nov 10, 2015(2015年11月17日(火)掲載分より)
いつもは金曜日夜(東京土曜日朝冬時間6時)に発表されるのですが、先週のUS Holidayの関係で先週金曜日ではなく今朝の発表でした。前週(11/3)よりも投資家ロングが384トンから216トンへ168トンもの大幅減少。(それだけの売りが出たということ!)価格は1,134ドルから1,087ドルへ47ドル下落。先物でこれだけの売り、そしてETFからも同じ一週間に22トンの売りが出ています。その結果の50ドル下げということですね。