今日のまとめ

  1. ベトナムは外国人持ち株比率上限引き上げに前向き
  2. 企業統治の面で大きなプラスに
  3. 非効率な国有企業にメスが入るきっかけになるか?
  4. ベトナム経済の基礎的要件は改善している
  5. 持ち株比率上限引き上げは株式再評価のきっかけになる可能性がある

ベトナムは外国人持ち株比率上限引き上げに前向き

来日しているベトナムのディン・ティエン・ズン財務相が、年内をメドに外国人持ち株比率上限を現行の49%から60%に引き上げることを検討していると述べました。

これは重要な材料です。

なぜならベトナムは1986年にドイモイ政策と呼ばれる経済自由化政策を打ち出して以来、市場経済への移行を目指してきたのですが、本当の改革は、遅々として進んでいないからです。

ここで本当の改革が具体的に何を指すかといえば、それは企業統治の問題です。

ベトナムでは外国人持ち株比率の上限が49%に設定されてきた関係で、外資が経営の主導権を握ることは出来ませんでした。

地元のパートナーに遠慮した仕事の進め方しかできないことから、経営改革の妨げになってきました。

ベトナムはプライドの高い国で、とりわけお役所は絶大な力を持っています。ベトナムの役人は「自分たちはフランス人にもアメリカ人にも戦争で勝った。だから外国から教えられることは何もない」という考え方をします。

実力が伴っている場合であれば、官僚のそういう自尊心も悪いことではないと思います。しかし実際にはベトナムの民間人は勤勉で創意に富んでいるけれど、お役所から絡むと、とたんにビジネスが上手くいかなくなる傾向があります。

ベトナム経済全体に占める国有企業の占める割合は、近年も低下するどころか逆に支配が強まっています。

ベトナムは1997年に国有企業を株式会社化しました。そして2000年にホーチミン証券取引センターが開設されるわけですが、これは株式会社化した国有企業の株主たちに対し、ちゃんとした流通市場を提供する意図がありました。つまり株式市場と国有企業はスタート当初から切っても切り離せない関係にあるのです。

大量の従業員を抱えた国有企業がベトナムの実業界や株式市場でのさばることで、民間企業のクラウディングアウトが起こっています。

実は同様の事が中国でも見られました。しかし中国政府は国有企業の株式を海外市場に上場することを奨励し、それを経営改革のきっかけにしました。世界の投資家の前に晒されることで経営の透明性を確保し、世界水準の企業統治を目指したわけです。

つまり「お役所体質」にメスを入れる改革の努力は、ベトナムより中国の方が一歩進んでいたのです。今回、ベトナム政府が外国人持ち株比率を引き上げるということは、ようやくベトナムも改革に本気を出したと評価できるのです。

改善したベトナムのファンダメンタルズ

さて、ベトナム経済の基礎的要件ですが、全体的にはしっかりしています。

まずGDP成長率ですが、このところ新興国各国が成長率を落とす中、ベトナムは高度の成長を維持しています。

ベトナム経済の弱点であるインフレ体質には改善の兆しが見えています。

失業率は安定しています。

政府の負債比率も安定しています。

特に経常収支が改善したことは投資家にとって心強いです。

以上のことからベトナム経済はおおむね好調であり、外国人持ち株比率上限が引き上げられた場合、同国の株式市場が再評価される可能性は高いと思われます。