今日のまとめ

  1. オイル・メジャーの評価基準はリザーブ・リプレースメント・レシオだ
  2. 生産高の成長、投下資本利益率も重要な尺度
  3. 利回りも投資の際のポイント

石油セクターの概観

下は生産高ベースで見た世界の石油会社のランキングです。

このグラフの中にはロシアのガスプロムやカタールのカタール・ペトロリウムのように天然ガス主体の会社も含めてあります。その場合、天然ガスは原油に換算して計算してあります。

このグラフに登場する全ての企業の株式が上場されているわけではありません。なぜならこのグラフには株式を公開していない国営石油会社も含まれているからです。

オイル・メジャーとは?

普通、我々が「オイル・メジャー」と言った場合、欧米の、垂直統合された大手石油会社を指します。具体的にはエクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)、シェブロン(CVX)、ロイヤルダッチ、BP(BP)などです。

それらの大手石油会社は、従来、「七姉妹(Seven Sisters)」と呼ばれてきました。

七姉妹 その後
アングロ・ペルシアン・オイル(英国) イランがルーツ。BPの前身。BPは後にアモコとアーコを買収する
ガルフ・オイル(米国) 後にソーカルに買収される
ロイヤルダッチ・シェル(オランダ・英) アゼルバイジャンのバクー油田がルーツ
スタンダード石油カリフォルニア(ソーカル) 後にシェブロンとなる
スタンダード石油ニュージャージー 後にエッソ、そしてエクソンと改名される
スタンダード石油ニューヨーク 後にモービルに改名され、エクソンに買収される
テキサコ 後にシェブロンに買収される

上の表中、スタンダード石油というのはロックフェラーの独占企業体をルーツにしています。スタンダード石油は独占企業の色彩があったので司法省から「分割せよ!」と命令され、上の表のようにバラバラにされました。その後、企業合併に対する司法省の考え方が幾分緩和されたこともあり、それらのバラバラになった石油会社はまた買収で大きくなっています。エクソン・モービル、シェブロン、BPの三社が主なコンソリデーターとなっています。

石油会社を分析する際のポイント

石油会社の財産は、地底に埋蔵されている石油や天然ガスです。従って、それらを掘り出し販売したら、そこで得たキャッシュの一部を新しい石油や天然ガスの探索や生産に再投入することが望ましいです。そうしなければいずれ石油を掘り尽くしてしまうからです。

良い石油会社はその年に掘りだした石油や天然ガスを補う分だけ、新しい石油や天然ガスを探してきます。この概念をリザーブ・リプレースメントと言います。リザーブ・リプレースメント・レシオが100%を超えているということは、その年、生産した以上に新しい確認埋蔵量を発見・追加したことを意味します。これが健全な姿です。

単年度では、大きな油田の発見や買収に数字が左右されやすいのでリザーブ・リプレースメント・レシオは10年単位くらいの長期で比較されるべきです。例えばエクソン・モービルは10年間のリザーブ・リプレースメント・レシオが平均して121%となっています。これは立派な数字です。

次にどれだけ着実に生産を伸ばしているか? ということも重要な経営指標であり、過去5年の成績ではエクソン・モービルがリードしています。

また投下資本利益率は本業への投資の上手さを示す尺度です。

オイル・メジャーは配当利回りが高いことから、安全重視の、利回りを手掛かりとした投資の対象と考えられる場合もあります。

BP

BP(ティッカーシンボル:BP)は元々アングロ・ペルシアン・オイル・カンパニーと呼ばれる、イランを本拠地としたイギリス資本の石油会社でした。同社の存在はウインストン・チャーチルがイギリス海軍の軍艦の燃料を石炭ではなく重油を使用するという決断を下す際、鍵になりました。従って昔から極めて戦略的に重要な企業だったのです。

その後、BPはアメリカのアモコとアトランティック・リッチフィールド(アーコ)を買収しました。アモコはオハイオ州クリーブランドに本社を置いていた関係で、BPアメリカの本社は今でもクリーブランドです。一方、アーコはアラスカに油田を持っており、西海岸に強かったです。

BPは売上規模の面でロイヤルダッチ・シェル、エクソン・モービルに次いで上場石油会社第3位のスケールを誇っています。しかしメキシコ湾石油流出事故を起こして以降、株価は長期に渡って低迷しています。

これは補償費用捻出のため資産売却を強いられたことが影響しています。この事故を巡る裁判は現在も続いており、更に追徴金を課せられるリスクが残っています。

ただBPは先ごろ増配を発表し、大方事故の後処理が片付いたという自信をうかがわせました。このため最近では極端に割安に放置されている同社株を見直そうという機運も一部に出ています。

【略号の読み方】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

現在のBPの配当利回りは4.7%、株価収益率(PER)は8.89倍です。

シェブロン

シェブロン(ティッカーシンボル:CVX)は財務管理に特に優れた企業です。同社は生産する1バレルの石油当たりの利益額が業界で最も高いことで知られています。

オイル・メジャーの中でもとりわけ大きいマージンを誇る同社ですが過去5年間のリザーブ・リプレースメント・レシオは94%と、グループ平均の107%に後れを取っています。そこで同社は探索・生産のための予算を大きく増やしました。償却負担の増加もあり、目先の同社の業績は下方の圧迫を受けると思います。

現在のシェブロンの配当利回りは3.25%、PERは9.7倍です。

エクソン・モービル

エクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)はオイル・メジャーの中でも横綱の存在です。

同社の確認埋蔵量ならびにリソースは合計して870億BOEあり、「貯金」は充分です。

同社はアメリカでのシェール・ブームに少し乗り遅れたのですが、2010年にXTOエナジーを買収し、遅れを取り戻しました。

同社は長期経営戦略の面、財務政策の面などあらゆる点でバランスが取れています。

現在のエクソン・モービルの配当利回りは2.53%、PERは12.4倍です。