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ライフプラン知識が投資教育項目に格上げされた意味を考える
山崎 俊輔
なんとなくから卒業!実践・資産形成術
誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファ…

ライフプラン知識が投資教育項目に格上げされた意味を考える

2013/5/13
筆者の専門領域のひとつは確定拠出年金の投資教育です。確定拠出年金の投資教育は、一般個人の投資教育ガイドラインとしてとても有意義であり、本連載のバックナンバーでも取り上げています。
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静かに見直しが行われた「投資教育ガイドライン」

筆者の専門領域のひとつは確定拠出年金の投資教育です。確定拠出年金の投資教育は、一般個人の投資教育ガイドラインとしてとても有意義であり、本連載のバックナンバーでも取り上げています。

このガイドラインが3月29日に改定されています。ほとんど報道もされていませんが、この改定内容は投資教育のあり方に根本的に影響する可能性を秘めています。しかも「なんとなく投資」から脱却するための重要なポイントが含まれていると考えています。

今回、この解説をしながら、個人が運用計画を検討する留意点を考えてみます。

ライフプラン教育は投資教育項目に「格上げ」される

今回の投資教育ガイドライン改定のきっかけは、昨年のAIJ投資顧問による運用資産消失問題です。運用委託をしていた厚生年金基金などが大きな被害を受けました。国は企業年金ごとに運用方針は定めればよいというスタンスでしたが、政策アセットミクス(目標資産配分)を定めることや運用担当者が自己研鑽のため研修等を受講することを義務づけるなど、適正な年金運用を促すためガイドラインを強化しました。こうした見直しの一環として、確定拠出年金についても分散投資義務の徹底について盛り込むことが求められており、この対応が今回の改定になっています。

ところが、「分散投資義務を徹底するよう投資教育すべし」というような簡単な記述にとどめることもできたのですが、より一歩踏み込んできたのが今回のガイドライン改定の特徴です。たとえば、運用未指図の加入者(従業員)が購入する金融商品について定期預金等の元本確保型商品だけでなく、バランス型の投資信託も検討したほうがいい(最終的には労使で決定するため強制はしていないが)、といった指摘をしたり、世代別にリスク許容度が異なることを踏まえたモデルポートフォリオの提示を行うこと(それについて教育でも配慮すること)、といった指摘が盛り込まれています。後者については、改定前の例示が「投資信託を組み入れたモデルポートフォリオだけではダメで、定期預金100%のモデルも必ずいれろ」というようにリスクを押しつけないような記述だったことを考えると、ステップがひとつ先に進んだ印象です。

そして、もっとも興味深い見直しは、「確定拠出年金制度を含めた老後の生活設計」を投資教育項目に含めてきたことです。「老後の生活設計」と日本語で示していますが、要するにリタイアメントプランニングないしライフプランニングが教育項目に格上げされたということを意味します。

今までは「確定拠出年金の仕組みの理解」「金融商品の理解」「基礎的な投資理論の理解」の3つを投資教育すべき項目として例示していましたが、リタイアメントプランニングにかかる5つの項目(下図参照)について、投資教育項目に含まれるとしているわけです。
(実は今回の追加項目、私が各所で指摘していた項目のひとつであり、反映されたことをうれしく思っている立場の人間のひとりです。例えば私が日本FP学会に寄稿した論文などで今回の改定項目とほぼ同趣旨のことを指摘しています。厚生労働省にも意見を述べたことがあります。)

個人の投資判断においてライフプランは重要な要素

「老後の生活設計」がなぜ投資教育に必要なのでしょうか。老後資産形成を考えるとき、ただやみくもに運用をすればいいわけではありません。むしろ「なんとなく投資」をしていると、取らなくてもいい高いリスクを取ったり、不必要な目標金額を設定したり、ただリスクをスリルとして楽しむような運用になったり、およそ効率的とは思えない運用計画になっていることがあります。

個人の運用計画を適切なものとするためには、例えば下記のような情報が役立ちます。

  • 自分にとってのゴールの設定(運用期間の認識)
  • 自分にとっての目標金額の設定(必要な資金ニーズの認識)
  • 自分の年齢や投資スタンスの認識(リスク許容度の明確化)
  • 追加拠出可能額の把握(定期拠出額の設定)

エクセルで運用計画をシミュレートした人なら分かると思いますが「初期元本」「追加拠出額」「運用利回り」「運用期間」の4要素が確定すると「最終受取額」が導きだされますし(FV関数の例)、5要素のうち4要素を入力して残りの1要素を導く関数がそれぞれ用意されています。

私たちは運用計画というと「初期元本」と「運用利回り」だけでなんとなく売り買いをしてなんとなく増やそうとしていますが、本来考慮したい項目は定期的な「追加拠出額」であり、「運用期間」がどれだけあるかです。ライフプランニングを整理することで、これらの要素を明確にすることができますし、「最終受取額」を設定することにより、他の要素を再検討しながら計画を具体化できるようになるわけです(例えば、老後資産3,000万円を目標に設定しなければ、利回りをどの程度とするか、毎月の積立をどの程度とするかシミュレーションは行えない)。

ライフプランというと、住宅ローンや教育資金の積立のために考えるイメージで、資産運用とは関係がないような気がしますが、実は密接に関わっている重要要素というわけです。

「商品」ではなく「個人」が重視される投資教育へ

本来、個人の資産運用において中心に据えるべきは「個人」であるはずです。しかし、今までの投資教育プログラムにおいては、「商品」が中心に置かれていることがしばしばでした。これは、金融商品販売時に必要な教育を施し、商品購入に差し支えない投資家にすることを、金融商品販売業者に求めてきた弊害だと思います。

商品販売をする側は、「個人」の事情より「商品」を売る事情を優先するのが当然ですから、これを責めるのは筋違いです。個人は、商品購入より前に基礎的な投資知識を身につけ、自分にとって必要な投資計画や投資商品をみきわめたうえで、金融商品を購入しにいくべきです。

しかし、こうした教育の受け皿が機能していないのが日本の現状であり、大きな問題でした。今回の確定拠出年金の投資教育ガイドラインはこうした構造問題にくさびを打つきっかけになるかもしれません(もともと確定拠出年金の投資教育は、個別の商品セールスを教育時に行うことを禁じており、良質な教育機会となっています。またすでに440万人以上が受講しており、国民的な教育チャネルとしても成長しつつあります)。

セールストークや販売時「説明」の付属として「商品」にひもつけられる投資教育ではなく、きちんと「個人」に教育がひもつけられるようになるための、よいきっかけに今回の改定がつながればいいと思います。

確定拠出年金は特に、老後資産形成という明確な目標があり、現役時代の重要な運用ニーズのひとつです。また、なくしてもかまわない大切な資産形成を、リスクを取りつつも、リスクをコントロールしつつ行うことになり、投機的運用とも異なる教育が求められます。

自分の運用に自分の生活設計を組み入れてみる

最後に、今回のガイドライン改定を個人の運用計画に組み入れるヒントを紹介します。すでに運用を行っている個人投資家も、一度「自分の生活設計」に運用を組み入れる視点を持ってみてほしいと思うからです。

多くの投資家は、「投資は投資」「資金準備は貯蓄等で行うもの」というようにリスク資産運用を切り分けていることが多いものです。しかし、投資も自分の資産形成の一部であり、リスクコントロールしながら運用状況の管理をしていくべきです。

すべての資産を管理対象に納めることで、自分が行っている投資の損失可能性を認識することにもつながります。「投資している金額は最悪、なくしてもかまわない」とうそぶくのはもうやめるべきです。「投資しているお金も将来の財産として使いたい」のが本音ではないでしょうか。

また、定期的な積立投資を行っている人は、自分の積立投資が将来どのような金額に達するかを、将来欲しい金額と天秤にかけて検証してみたいところです。エクセルのFV関数等をつかえば、現状の資産運用が、将来の資産形成にどれだけ価値をもつかが見えてきます。結果としての運用成果がシミュレーションと乖離するのは当たり前です。それらを可視化することのほうがズレがあることより価値があります。

これから、確定拠出年金の投資教育プログラムにはライフプランやリタイアメントプランが加味されていくことにより、より具体的・現実的なイメージがつかめるようになるはずです。もし、会社が401kを採用している場合は、継続教育に積極的に参加してみてください。

会社が確定拠出年金でない人も、書店に足を運んでライフプランに関する書籍を手に取ってみてください。生活設計やきたるべき資金ニーズについての知識獲得をすることで、運用テクニックの書籍だけ読んでいては得られない視点が得られるはずです。

あくまで、運用の主体は「自分」であることを取り戻すために、今回のヒントを参考にしてみてください。

ライフプランも投資教育項目

(厚生労働省 法令解釈通知から改訂部分を抜粋)

「商品」ではなく「個人」が投資理解の原点におかれる

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