先週はアメリカ景気の回復遅れ懸念から急激なドル売り・円高へ

6月28日(月)の予測では、“今週は円高から円安への反転を待つ局面”とし、前週末の6月25日(金)終値▲190円の9,737円となって25日移動平均線(この時点9,784円)を切って引けたことで、円高がまだ目先ピークをつけていないことを意味し、週末の雇用統計まで円高が持続する可能性があるとしました。欧州の財政問題、金融問題の再燃からのユーロ安に加え、アメリカの経済指標に弱いものが目立ち、その結果長期金利が低下して相対的に円が買われ、ドルに対しても円高が進行する動きとなりました。まずは、5月20日の1ドル=88.951円を守れるかとし、ここを切っても88円台前半(3月4日の88.131円)まで進めばそこから反転していくとし、そのタイミングを週末の雇用統計と想定していました。

ところが、欧州の財政懸念の再燃からのユーロ安、アメリカの景気回復の遅れからのドル安、中国経済の4月の景気先行指数の下方修正、中国農業銀行の上場による需給悪化懸念からリスク回避の円高が進行し、7月1日(木)には外国為替市場で一時7カ月ぶりの1ドル=86円台(86.961円)をつけ終値では87.600円となりました。7月2日(金)は、東京市場では88円台とドルが一服し、日経平均は△12円の9,203円と6日ぶりの小反発で引けました。為替についていえば、基本的にはドルの売られ過ぎとなっていますので、雇用統計で悪材料出尽しとなればいったん反発するところです。3月4日の88.131円を切ると、昨年1月27日の84.769円を目指すとしていますが、戻りなくそのまま88.131円を切って86円台まで下落しましたので、そのまま84.769円を試す動きとはなりません。いったんドルが戻りを試したあとに、この84.769円を試す動きとなってくるでしょう。このように為替が動くとすれば日経平均は9,000円水準では止まらず、戻りのあとの次の下げでは上述したような為替の動きとなれば日経平均の8,500円水準を想定しなければなりません。

為替がドルの戻りのあと2009年1月27日の84.769円を試す可能性の背景は?

株式市場は、アメリカ政府の大型の財政投資とFRBのゼロ金利を背景にアメリカ経済が予想以上のスピードで景気回復が進行し、それがまだ継続することを前提にアメリカ株式が上昇しドル高が維持されていました。しかし、チャートを分析すると、柴田罫線では4月26日に11,258ドルの年初来高値を更新したあと三尊天井を形成して5月4日に10,926ドルで売り転換し、ナスダックはすでに4月30日の2,461Pで売り転換となりました。この時点での売転換は、短期か中期かどちらの売転換かわかりませんでしたが、6月18日(金)の終値の時点で、NYダウ、ナスダックともに2週間連続の陽線となって売りの形になったとしましたが、その後そのまま下落し、アメリカ株式が下げるということはドルが売られ、結局円高が進みますので、2009年1月27日の84.769円を試す可能性が高いといえます。

アメリカ株式の上昇は、上述したような大型の財政投資とゼロ金利政策を背景に金余り現象から株式市場に資金が流れ、企業業績も予想を上回る回復となって株価の下支えをし、ナスダック指数はリーマンショックの時の高値を超える上昇となりました。NYダウは高値を超えることができませんでしたが、それでもリーマンショック時の高値水準まで上昇しました。ところが欧州の財政懸念が世界経済に影響を与え始め、アメリカの経済指標も悪化が目立ち始め6月23日(水)にはFOMCの声明で景気判断を慎重な見方に変更しました。このあとの経済指標の悪化が相次いだことでアメリカ株式は大幅下落となってきています。そうなると、今後の企業業績の発表がどうなるのか不透明感が出てくることになり、アメリカ株式が4月まで上昇してきた背景(好調な経済指標、企業業績)と逆の背景(予想を下回る経済指標と企業業績)となってきますので、当然株安、ドル安となってくる可能性が高いといえます。

日経平均は戻りのあと9,000円割れも想定

NYダウ、ナスダックは短期・中期のトレンドを下に切り下値模索の動きとなりました。日経平均も同じようにトレンドを切っていますが、9,000円水準には昨年7月13日の9,050円、11月27日の9,076円と2つの大きな抵抗ラインがありますので、アメリカ株式がこのまま急落しない限り9,100円水準からはいったん戻りにはいるところです。しかし、為替やアメリカ株式を見る限り、大きな戻りになるというよりテクニカル的な戻りとみた方がよいでしょう。ユーロ/ドルをみてもユーロが買い戻されており、欧州の財政問題がいったん落ち着いて、今週は日米ともにリバウンドを想定するところです。ただし、リバウンドの後は再下落を想定しておく必要があり、次の下げで当面の底打ちの可能性がありますので、むしろ9,000円を切って8,500円水準まで下落した方が相場の底打ち感が出ます。5月以降、外国人の売りに対して個人投資家の買い残が増加してきましたので、この投げ(9,000円を切ると投げが出る)が出ないとなかなか上昇しにくいといえます。戻したあとの次の下落で底打ちになるとしたら、7月中旬の欧州のストレステストの結果待ちとなるかもしれません。

今年の始めにコメントした日本株式の37カ月周期説では、7月で底打ちし、その後大きな上昇というシナリオを描いていましたが、果たしてそうなるのかどうかというところです。このシナリオ通りになってくれば、改めて分析し直します。昔は日本株式の自律性もあって37カ月周期説も可能性が高かったといえますが、世界がグローバル化した中でアメリカ株式や中国株式を無視して上昇できるかどうかという疑問もあります。

本日は、結局先週末のアメリカ雇用統計の発表で目先材料出尽しとしましたように、日本市場はアメリカ株式の反発を期待して主力株中心に買い戻しとなり日経平均は△63円の9,266円となりました。どれくらいの日柄をかけてどの程度戻るのかはわかりませんが、NYダウ次第で10,000円水準まで戻れるかどうかというところです。うまく戻りにはいればキャッシュ化優先となります。

(指標)日経平均

前々週末の6月25日(金)は▲190円の9,737円となって25日移動平均線(この時点9,782円)を切って引けました。6月28日(月)の予測では、為替の円高が一服して目先反転するまでは日経平均の弱い動きが続き、週末(7月2日)のアメリカ雇用統計がきっかけになるかもしれないとしました。この為替の動きが、6月29日(火)に注目としていた5月20の88.951円を切ったことで、次は3月4日の88.131円を試す動きとなり、6月9日の9,378円の安値を試すとしました。ここを切っても9,000円水準は強力な下値抵抗ゾーンとなります。6月30日(水)は、1ドル=88円前半までの円高となったことで▲188円の9,382円となって売転換が出現し、翌日7月1日(木)はNYダウの大幅下落を受けて9,147円まであって終値は▲191円の9,191円でした。この日の引け後、ドルが7カ月ぶりに86円台まで売られる円高となりましたが、日経平均は直近1,100円近く下げていたので押し目買いがはいり△12円の9,203円で引けました。先週末7月2日(金)の雇用統計は予想を下回りましたが、ある程度織り込んで下落していましたのでNYダウは▲46ドルの9,686ドルで引け、ユーロは戻りを試す動きとなってきたことで、今週は日経平均も戻りを試す動きとなりそうです。戻りのあとの下落には要注意となります。

日経平均

(指標)NYダウ

6月28日(月)の分析では、すでにNYダウ、ナスダックともに週足での売りの形が出来上がっており、今後戻り売りの形になるとしました。前々週末の6月25日(金)の終値は、アメリカの1-3月期のGDPの下方修正を受けて10,081ドルまであって終値は▲8ドルの10,143ドルとなったことで、10,000ドルを割れてしまうと6月21日の高値10,594ドルは当面超えることが出来なくなるとしました。6月29日(火)は、上海株式の大幅安とアメリカの経済指標の悪化から一時▲326ドルまで下げて終値は▲266ドルの9,870ドルとなり、ナスダックは▲85Pの2,135Pとなって目先のダブル底を切ってしまいました。この時点で、NYダウはダブル底(5月29日の9,774ドル、6月8日の9,757ドル)を切っていませんでしたが、7月1日(木)は一時▲152ドルの9,621ドルまであって終値は▲41ドルの9,732ドルとなって、ダブル底を切って短期の売転換出現となりました。昨年11月2日の安値9,678ドルを終値で切ってくると、9,500ドル水準が次の下値抵抗ラインとなります。テクニカル的にはいったん反発するところにきています。週末7月2日(金)の注目の雇用統計は予想を下回りましたが、▲118ドルの9,614ドルまで下げたあとは下げ幅を縮小し▲46ドルの9,686ドルで引けました。今週はユーロが戻りにはいっており、ドルも円に対してはいったん戻るところですのでNYダウも反発するところです。戻しても、6月8日の安値9,757ドルを切りましたので、戻りのあとは下値模索が続くことになります。

NYダウ

(指標)ドル/円

6月25日(金)の分析で、先週の動きの予測は、目先は5月20日の88.951円が下値ポイントで、ここを切ると88円台前半(3月4日の88.131円)が当面のピークとなる可能性を想定しました。

しかし、先週は欧州財政問題からのユーロ安に加えアメリカの経済指標が次々と悪化した発表となり、アメリカ経済の景気回復の遅れに焦点が移りドル安となったことで、リスク回避の円買いが活発化しました。6月29日(火)は、終値88.580円となって5月20日の88.951円を切り、さらに7月1日(木)は3月4日の88.131円を切って86.961円まで下落し、終値は87.600円となりました。週末は、雇用統計は悪化した内容でしたが、悪材料出尽しとなって1ドル=87.815円でした。5月20日の88.951円を守っていったんドルが戻したあとの再下落となれば、一気に昨年11月27日の84.769円を試す動きとなるところですが、そのまま下げて3月4日の88.131円を切って、7月1には外国為替市場では86.961円まで下落しましたので、基本的には目先はドルの売られ過ぎとなって反発するところです。チャートからは戻りは89円→90円というところですが、戻りのあとは再びドルは売られてきます。

ドル/円