新しい悪材料が2つ生じ、日経平均は一時9,400円割れ

先週の予測では、日経平均は日柄、値幅ともに調整の最終局面に達してきているが、NYダウの落ち着き次第だとし、逆にNYダウが終値で5月6日の9,869ドルを切ってくると、日経平均は9,500円を切ってくることを想定しました。そのNYダウは、5月25日(火)に9,774ドルまで下落したものの終値では5月26日(水)の9,974ドルとなって反発しました。しかし、新たな悪材料であるスペインの中央銀行による貯蓄銀行の管理から金融システム不安が生じ、さらに朝鮮半島の緊迫化という日本独自の地政学リスクも加わり5月27日(木)には9,359円まで下落しました。

日経平均は、前週末から先週にかけて日柄、値幅ともに最終局面に到達するとし、あとは外部環境の落ち着き待ちとしました。しかし、5月24日(月)はスペインの中央銀行が経営悪化した貯蓄銀行を管理下においたことで欧州の銀行システムへの懸念が強まり、再びユーロが売られてNYダウは▲126ドルの10,066ドルとなりました。NYダウの大幅下落に加え、円がユーロに対して110円を切る円高、ドルに対しては90円を割り込む円高進行となったこと、さらに朝鮮半島の緊迫化もあって9,432円まで急落し、終値は▲298円の9,459円と9,500円割れで引けました。 5月25日(火)は、欧州の財政問題と金融システムの2つの懸念から、NYダウは一時▲292ドルの9,774ドルまで下落しましたが、急速に値を戻して▲22ドルの10,043ドルの小幅安で引けました。しかし、翌日は中国がユーロ圏の国債保有を見直すと報じられると、NYダウは▲69ドルの9,974ドルと3ヶ月ぶりの10,000ドル割れとなりました。これを受けて、5月27日(木)の日本市場は9,395円まで売られるもののアジア株が堅調となり円高一服となったことで△117円の1,639円の上昇となり、引け後のアメリカ市場では、中国がユーロ圏の国債保有の見直し報道を否定したことで、NYダウは△284ドルの10,258ドルの大幅上昇となりました。週末の5月28日(金)の日本市場は、円安とNYダウの上昇を受けて△166円の9,806円で寄り付くものの、まだ欧州への懸念が重しとなって9,824円までしか上昇できず終値は△123円の9,762円でした。NYダウが5月27日(木)に△284ドルの10,258ドルとなって短期の買転換出現となったことで、日経平均もこのまま10,000円近くまで上昇できれば底打ちの確認ができるとしました。しかし、週末の5月28日(金)の日本市場の引け後の欧州で格付け会社のフィッチがスペインの信用格付けを引き下げたことで欧州のソブリンリスクが高まり、NYダウは▲122ドルの10,136ドルの大幅反落となりました。日米の株価は、欧州のソブリンリスクからのユーロの落ち着きが前提となりますから、今週はスペインの格下げがどのような影響を与えるのか注目するところとなりました。本日の日本市場は、ユーロ、ドルに対して円高一服となっていたことで9,831円まで上昇する場面もありましたが、材料不足から△5円の9,768円で引けました。

この水準から反発するまでの2つのパターンを日米のチャート(柴田罫線)でみると

1 5月17日(月)想定したように、前週末(5月21日)から先週にかけて日経平均が当面の底打ちとなった場合

5月17日(月)の時点で、「日経平均は4月5日の11,408円をピークに調整入りとなっており、直近の日柄からいうと今週末から来週にかけて最終局面が到来し、10,000円を割る水準まで下げると調整完了となる可能性があります」としました。そして、NYダウ次第だが下げても日経平均は9,700円水準までを想定しました。NYダウは、5月6日の9,869ドルを終値では守ったものの、ヨーロッパで金融不安が再燃し朝鮮半島の緊迫化から日経平均は5月27日(木)には9,395円まで下落しました。この日本市場の引け後のアメリカ市場で、NYダウが△284ドルの10,258ドル、ナスダックが△81Pの2,277Pとなってともに短期の買転換が出現しました。しかし、週末の5月28日(金)はスペインの信用の格下げからNYダウは▲122ドルの10,136ドル、ナスダックは▲20Pの2,257Pの大幅反落となりました。柴田罫線でみると、5月20日(木)の10,068ドルより2ドル以下の10,066ドルを終値で切って引けると短期の買転換が消滅(ろあ売となるため)して、もう一度下値を場面も考えられますが、そうでなければこのまま戻りを試す動きとなり、日経平均もまずは10,000円を試す動きが想定されます。テクニカルな面からは、日米ともに売られ過ぎのゾーンですので、いつ反発してもおかしくないところです。日経平均の騰落レシオは、すでに60%台(70%以下は売られ過ぎ)をつけて反転しかかっています。

2 先週の5月27日(木)の9,395円の安値を試す動きとなった場合

この場合は、スペインの格下げからヨーロッパの信用不安が再燃してユーロ安進行となり、NYダウ下落し円高進行となる場合です。NYダウの下げが続き、上述した10,068ドルを切って終わり、9,970ドルを陰線で切ってくると買いの形ができてきます。ただ、そのようにNYダウが再び10,000ドルを切ってくる動きになると、日経平均は下落することになりますが、5月27日の寄り付き値9,419円が1つ目のサポートラインとなります。ここを切ると、5月27日(木)の9,395円を切って9,300円を若干割り込むくらいはあるかもしれません。その下げ方が日足で連続して陰線で下げてくると買いの形となります。

結局は、ヨーロッパの信用不安がいったん落ち着くかどうか(つまりユーロの行方にかかる)

上の(1)、(2)の2つのパターンも、結局はユーロ安がどこで止まるかという為替の動き次第となってきます。ドル/円をみる限り、徐々に円安日柄の方向に動いてきているようにみえます。雇用の改善が進んでいますので、週末のアメリカの雇用統計の改善が期待されており、週末に向けてドル高・円安方向の動きが出てくる可能性があります。本日の為替を見る限り、先週末のスペインの格下げの影響をあまり受けず、ユーロが一服して1ユーロ=12円台となっています。とすれば、上述した(1)、(2)のパターンでは、(1)となる可能性が高いかもしれません。

(指標)日経平均

前週末の5月21日(金)は、ドイツが国債の空売りを禁止したことでユーロ売りが集中し、急激な円高(ユーロに対して)となって日経平均は▲245円の9,784円となり、私が当面の下値ポイントとした9,700円台に到達しました。さらに、先週はスペイン中央銀行が経営悪化した貯蓄銀行を管理下においたことによる欧州の銀行システムへの懸念から再びユーロが売られ、さらに北朝鮮と韓国の軍事衝突の懸念も生じ、5月25日(火)は▲298円の9,459円となりました。この水準からは、ヨーロッパへの懸念と企業業績の好調さとの綱引き相場となり、下げると下値では買いがはいって5月26日(水)は△62円の9,522円、5月27日(木)はNYダウの1万ドル割れと円高進行で9,395円まで売られましたが、後場円高一服となったことで買い戻しが入り△117円の9,639円となりました。さらに週末(5月28日)も△123円の9,762円の3日続伸で引けました。

前々週述べましたように、前々週末から先週にかけて日柄・値幅ともに調整完了となるところであり、いつ反発してもおかしくないとしましたが、自律で反発できない日本市場はユーロ安からの円高と朝鮮半島の緊迫に引きずられています。

ただ、一昨年のリーマンショックの時と違って、ヨーロッパの問題(ユーロ安)は原因がハッキリしているので現実的な政治行動が出てくるのを待つところです。ユーロ安が落ち着けば、日米ともに反発にはいってくることになります(朝鮮問題はわかりませんが)。

5月27日(木)のアメリカ市場は、NYダウが△284ドルの10,258ドル、ナスダックが△81Pの2,277Pとなってともに短期の買転換(ろあ買)が出現しました。週末は、スペインの格下げからユーロ安となったことを嫌気し、NYダウで▲122ドルの10,136ドル、ナスダックで▲20Pの2,257Pと大幅反落となりました。このスペインの格下げが、今週の日経平均に影響してくるのかと思っていましたが、本日(5月31日)の段階ではユーロは安定しており、日経平均は△5.7円の9,768円となりました。3連休後のアメリカ市場が戻りを試せば、日経平均も10,000円を試す動きとなり、先週の5月27日(木)の9,395円が当面の底となります。

日経平均

(指標)NYダウ

前週末の5月21日(金)は、一時▲149ドルの9,918ドルと一時10,000ドルを割り込みましたが、アメリカで金融規制法案が可決されたことで悪材料出尽しとなり、金融株が買われて△125ドルの10,193ドルで引けました。5月24日(月)の分析では、短期で急落しただけに日柄が足りず、この水準で大きな上下動になるとしました。さらに、柴田罫線では先週末に1本の陽線が出たので5月20日の10,068ドルを終値で切って引け、あまり大きく下がらずに次の反発で10,195ドルを上に抜けると買いの形になるとしました。結局、この通りの動きとなりました。

5月24日(月)は、スペイン中央銀行が経営悪化した貯蓄銀行を管理下においたことで欧州銀行システムへの懸念が高まり、▲126ドルの10,066ドルと10,068ドルを2ドル切って「ろく売」が出現しました。5月25日(火)は、一時9,774ドルまで下げるものの終値は▲22ドルの10,043ドル、さらに5月26日(水)は中国がユーロ圏の国債保有を見直すということでユーロが急落し、NYダウも▲69ドルの9,974ドルと3ヶ月ぶりに終値で10,000ドルを割り込みました。しかし、終値では5月6日の9,869ドルを守っており、5月27日(木)は中国がユーロ圏の国債保有を見直すという報道を否定したことで欧州懸念が和らぎ、ヨーロッパ株式が急騰してNYダウも△284ドルの10,258ドルの大幅反発となり短期の買転換出現となりました。しかし、週末の5月28日(金)のNYダウは、格付け会社のフィッチがスペインの信用格付けを引き下げたことで、落ち着きかかっていた欧州のソブリンリスク懸念が再び意識され、▲122ドルの10,136ドルの大幅安となりました。

5月24日(月)に柴田罫線で買法則が出現する形を想定し、その通りの動きになりましたが、スペインの格下げで▲122ドルの10,136ドルの大幅下落となったことで、このまま10,064ドル以下で引けるとろあ買の法則がろあ売となり、この水準でもみあうか、それとも一段安となるかということになります。しかし、ユーロが落ち着いて、NYダウが10,066ドルを守ればそのまま戻りを試す動きとなっていきます。

NYダウ

(指標)ドル/円

一時、円安トレンドへ変化したかに思われたドル/円相場でしたが、ギリシャの財政問題がヨーロッパ全体のソブリンリスクの懸念となってユ-ロの急落となり、リスク回避として円が買われたことでドルに対しても円高方向の動きとなり、円安トレンドを切ってきました。

この1年間の動きをみると、昨年8月7日の97.759円からの下降トレンド(B)と5月7日の99.764円からの下降トレンド(A)をいったん上に抜き、今年の4月2日の94.685円、5月4日の94.97円と2山をつくりました。ここから押し目を浅くして、この2山を抜き完全に上放れとなって円安トレンドがさらに続くところでしたが、ヨーロッパのソブリンリスクからユーロが売られて急激な円高となり、5月6日には87.948円をつけました。ここから、5月10日の93.53円まで戻すものの5月20日に終値で89.686円となって、昨年の11月27日の84.769円からのドルの上昇トレンド(C)を下に切る円高となりました。こうなると、再び昨年の5月7日の99.764円からの下降トレンド(A)はドルの上値ラインとなりますので、93円水準から上は当面難しいことになります。先週は、週前半は90円をはさんだせまいもみあいでしたが、5月27日(木)は中国政府が前日の「欧州債の保有高を再検討」という報道を否定したことでユーロが買い戻され、円が売られて91.076円まで上昇しました。週末は91.393円まで円が売られていましたがスペインが格下げされたことでユーロ安、NYダウ下落となって円が90.596円まで買われ、終値は91.059円となりました。5月27日には91.026ドルの短期の買転換出現となっていますが、上昇トレンド(C)にアタマを抑えられています。今週は、スペインの格下げの影響がどの程度かみるところです。週末のアメリカの雇用統計に向かってドル高方向となる可能性があります。

ドル/円