8月8日
向こう10年の安定成長を予想、製品アップグレードが大手の収益増のカギに

中国の酪農業界は有毒物質メラミン混入事件の発生後、品質重視の姿勢を強めている。BOCIは業界全体が向こう10年にわたり、年率平均10%前後の安定成長を遂げると予想。大手各社は収益増を目指して製品構成の高付加価値化を進めるとみて、セクター全体に対する強気見通しを継続している。個別では中国現代牧業(01117)の株価の先行きに強気の見方を示す半面、中国蒙牛乳業(02319)に対しては中立的。中国蒙牛乳業の現在株価は短期的なM&A計画というプラス材料をすでに織り込んだとの見方を示した。市場競争が激化する中、買収に伴うシナジー効果については今後の状況を見極める必要があるとしている。

中国の1人当たり牛乳消費量は世界平均を大きく下回るが、都市部の同消費はすでに日本や韓国など、アジアの先進諸国に迫る水準に達しており、市場拡大余地が大きいのは地方部(農村部)。BOCIはこの先の都市化に伴う地方部の潜在需要の喚起を見込み、市場全体が長期的に安定成長を持続するとみている。

業界大手に関しては中価格帯やハイエンド製品の売り上げ構成比、利益構成比が拡大傾向にあり、消費アップグレードが今後の成長のカギを握る見込み。BOCIによれば、高価格帯製品へのシフトは幅広い品目において見られ、ハイエンドのUHT牛乳(超高熱処理牛乳)、ヨーグルト、乳児用ミルクなどはメーカー各社の主戦場となっている。

中国蒙牛乳業は中糧集団(COFCO)が筆頭株主となってから、食の安全に加え、長期視点の成長確保や企業規模の拡大に照準を合わせている。これに対し、競合2社の光明乳業、伊利実業はより強力なインセンティブ制度の導入や経験値の高い経営チームの組織を通じ、中国蒙牛乳業の追い上げを図っているという。

個別銘柄を見ると、中国現代牧業はハイエンド原料乳生産の国内最大手で、主要乳製品メーカーによる評価がこれまで以上に上向いている。BOCIは販売量の伸びが確実視されることや原料乳価格の上昇傾向に触れ、同社株価が過小評価されているとの見方。主要取引先である中国蒙牛乳業が中長期的に、中国現代牧業の販売増に寄与する見通しを示し、今後の利益成長余地を指摘している。

一方、中国蒙牛乳業はCOFCOによる経営権取得を受けて実質的に国有企業となり、これに伴い経営方針をシフトした。BOCIは◇中国現代牧業への資本参加を通じたハイエンド分野の強化◇ダノンとの合弁事業を通じたチルド製品の開発◇雅士利国際(01230)買収による乳児用ミルク市場への進出――といった同社戦略を前向きに評価している。ただ、M&A戦略に伴うシナジー効果の見極めにある程度時間がかかることや、現在株価水準、さらに競合2社による猛追などに言及し、同社株価の先行きに対して中立見通しを示している。