2024年7-9月期実質GDPは前期比0.2%~日本経済の実力に見合った成長~

 さて、その日本銀行にとっても、そして経済対策を打とうとしている政府にとっても、15日に発表された2024年7-9月期の実質GDP速報は好都合な結果となりましたが、それを詳しく見ていきましょう(図表1)。

図表1 2024年7-9月期の実質GDP

(出所)内閣府、楽天証券経済研究所作成

 結果は、7-9月期実質GDPが前期比0.2%(前期比年率0.9%)と、図に赤実線で示した潜在成長率とほぼ同じ、言ってみれば強くもなければ弱くもない、日本経済の実力にちょうど見合った成長率となりました。

 このことは、4-6月期にマイナス0.6%と推定されるGDPギャップ(内閣府)が改善しなかったことを示唆しており、デフレ完全脱却を目指して経済対策を打とうとしている政府を正当化する結果と見ることができます。

 一方で、実質GDPの内訳を見ると、「家計最終消費支出」が前期比0.9%と比較的高い伸びとなり、インフレ率が高い中にあっても賃金と支出の好循環メカニズムが一応機能していることを示しています。利上げを進める日銀にとって心強い結果とも言えそうです。

賃金と支出の好循環を支える名目雇用者報酬の高い伸び

 7-9月期のGDP統計で筆者が特に注目していたのは、名目雇用者報酬の動きです。上述した賃金と支出の好循環メカニズムが機能するためにも、「物価安定の目標」(消費者物価上昇率2%)を実現するためにも、名目雇用者報酬が前年比4%程度の高い伸びを維持する必要があります。

 結果は前年比3.6%と、4-6月期の3.8%には及びませんでしたが、3%台後半の高い伸びを維持しました(図表2)。これを受けて、名目の「家計最終消費支出」も前年比2.9%の増加となり、名目ベースでは賃金と支出の好循環がしっかり働いていることが分かります。

図表2 名目雇用者報酬と名目消費

(出所)内閣府、楽天証券経済研究所作成