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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
トランプ氏勝利でドル買い・円売りは正しいのか~日本の輸出物価から見た米製造業のやばい状況~

トランプ氏勝利でドル買い・円売りは正しいのか

 5日の米大統領選挙で共和党のトランプ前大統領が勝利すると、市場はドル買い・円売りで反応するといわれていますが、それって正しい反応なのでしょうか。このレポートが出るころには、選挙結果も市場の反応も判明しているかもしれませんし、接戦の結果、判明していないかもしれませんが、少なくとも現時点では違和感を覚えます。そんな単純か?と。

 気になるのが米製造業の低迷です。2024年7-9月期の実質GDP(国内総生産)が前期比年率2.8%と堅調を持続し、アトランタ連邦準備銀行のGDPナウキャストは10-12月期を前期比年率2.3%(11月1日現在)と予測するなど、米景気は相変わらず強いように見えますが、製造業だけ見るとかなり様相が違います。

 例えば、1日にISM(米サプライマネジメント協会)が発表した10月の製造業景況感指数。結果は46.5と、前月から0.7ポイント悪化し、報道などでは機械的に「好不況の分かれ目の50を7カ月連続で割り込みました」などとコメントしているわけですが、データをよく見るべきです。

 実は、今年の3月に50.3と辛うじて50を超えた以外、2022年11月から2年間、ずっと50を下回って推移しています。50を下回るのは、新型コロナ禍が10カ月、リーマンショック時が18カ月でしたから、今回の低迷がいかに長引いているか分かるでしょう。

 市場予想を上回る伸びとなった9月の小売売上高も、中身をみれば家電製品や家具の販売は低調で、自動車販売も減少傾向をたどっています。こうした耐久消費財の不調は、ISM製造業景況感指数の低迷と整合的です。

 トランプ氏が勝ち、法人税減税や規制緩和が実施されれば、低迷する製造業にはプラスかもしれません。しかし、新たな関税などでインフレが助長されれば消費がますます痛み、とはいえインフレで利下げはままならず、景気が崩れる可能性があります。それでドル買い・円売り?財政赤字拡大が「悪い金利上昇」につながればなおさら疑問です。