FRBは11月に利下げ、日銀は12月に利上げ

 以上の薄気味悪いデータの動きや、すでに市場が11月利下げを織り込んでいることを踏まえると、FRB(米連邦準備制度理事会)は11月6~7日に開催するFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.25%の利下げを実施するとみられます。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のフェド・ウオッチによると、市場が織り込む11月の0.25%利下げ確率は98%となっています。

 一方の日銀ですが、10月31日に予想通り現状維持を決めた後の総裁記者会見の内容を踏まえると、12月追加利上げの蓋然(がいぜん)性が高まったとみています。

 ポイントは二つ。まず、9月の金融政策決定会合の後の記者会見で、植田和男総裁は以下のように述べていました。

10月を中心とするサービス価格、そこが多くの企業の改定時期に当たりますので、そこで好調な賃金動向がどれくらい反映されるかというのが、強い関心を持っている一つの点です。
(出所)日本銀行

 10月のサービス価格というのは、素直に考えれば10月CPI(全国消費者物価)の「サービス」であり、その最大のヒントである東京都区部の10月CPIが10月25日に発表されました(その結果については先週のレポートで詳しく紹介済み)。植田総裁はそれについて以下のように述べています。

東京CPIが出て検討したところですけれども、ある程度サービス価格への転嫁の動きが広がっているということは確認できました。国内のデータについては、賃金、物価の動きは、見通しどおりのものが一応続いているということかなあと思います。
(出所)日本銀行

 すなわち、11月22日に発表される10月の全国CPIでも、「サービス」を含め、日銀が見通しに沿って(オントラックで)推移していると評価する可能性が高まったとみています。加えて、9月、10月と現状維持を決定した主因である金融市場動向に関して植田総裁は、

 米国など海外要因については、…少しその霧が晴れつつある。

時間的余裕を持ってみていくという表現は不要になるのではないかというふうに考え、今日も使ってない。
(出所)日本銀行

 と述べ、市場動向が追加利上げを判断する障害にならないよう、手を打ちました。もちろん、米大統領選の結果、市場が再び荒れる可能性があるため、その行方を見定める必要はありますが、日銀としては、コミュニケーション上、12月利上げの準備を整えたと評価することが可能です。