トラでもハリでも、金・原油は高止まりか
トランプ氏、ハリス氏が新しい米大統領になった時に想定される、コモディティ(国際商品)相場への影響を考えます。以下は筆者が考えるイメージです。
米大統領は良くも悪くも世界全体に甚大な影響を与える存在です。このため、各種コモディティ相場もその影響を受けます。とはいえ、米大統領がもたらす影響だけがコモディティ相場を動かす材料ではありません。以下だけで相場動向を判断することができないことを、念頭に置く必要があります。
図:新しい米大統領によるコモディティ銘柄への主な影響(筆者イメージ)
傍若無人なふるまいが絶えないトランプ氏はある意味で「有事製造機」です。彼の存在は、金(ゴールド)相場には有事ムードを強める意味で上昇要因になり得ます。
また、トランプ氏はSNSに、輸出産業にとって「ドル高・円安は大惨事だ」という趣旨の投稿をしたり、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に対して大統領が発言権を持つべきだと主張したりしていることから、利下げが段階的に進行する可能性がります。この点も、金(ゴールド)相場に上昇要因になり得ます。
ただし、「電話一本」でウクライナ戦争を終わらせることができると豪語しているため、本当に電話一本で世界に懸念を振りまいている戦争の一つを終わらせることができれば、有事ムードの後退という意味で金(ゴールド)相場に下落圧力がかかり得ます。
原油や天然ガスなどのエネルギーについては、パリ協定を再度離脱する可能性があり、原油や天然ガスの需要が増加してこれらの相場に上昇圧力がかかり得ます。同時にイランに対する強硬姿勢が強まり、イランを取り巻く情勢が緊迫化してこれらの相場への上昇圧力が強まる可能性があります。
非鉄は米中貿易戦争が激化し、中国の景況感が鈍化して同品目の相場に下落圧力がかかる、穀物については「電話一本」でウクライナ戦争が終わった場合、穀物の供給懸念が低下して相場に下落圧力がかかる可能性があります。
ハリス氏が大統領になった場合は、基本的に現政権の考え方が続く可能性があることから、非鉄、穀物については大きな環境の変化は起きない可能性がります。エネルギーについては、EV(電気自動車)一辺倒からハイブリッド車に移行する「ハイブリッドシフト」が進行し始めたため、今後は今よりも需要が増加し、相場に上昇圧力がかかる可能性があります。
懸念されるのが、現政権の考え方を踏襲することで、決められない・実行できない政治が継続する懸念があることです。このことは、次で述べる米国の「自由民主主義指数」が回復しないことに関連します。