為替DI:10月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

「ドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,538人のうち71%の1,097人が、10月のドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は81%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しを持つ個人投資家の割合から円高見通しの割合を引いて求めたDIは、マイナス42になりました。DIのマイナスは3カ月連続ですが、前月のマイナス62より大きく減りました。

 DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示します。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

With A Little Help From My Friends

 新型コロナウイルス世界的流行が終息したあと、先進国では三つのインフレの波が発生しました。第1のインフレの波は、家の中で過ごす時間が長くなったことで家電や家具の購入や買い替えが引き起こした「需要主導型インフレ」です。

 しかし、「巣ごもり需要」が一巡するとこのインフレも終了しました。テレビなどの耐久財は、今や過去20年間で最悪のデフレ状況に陥っています。

 第2のインフレの波は、新型コロナによるサプライチェーンの混乱や地政学リスクによるエネルギー価格や商品価格の上昇が引き起こした「供給主導型インフレ」です。このインフレもサプライチェーンの修復と共にディスインフレ(物価上昇率が低くなり、インフレの進行が抑えられている状態)へと移行していきました。

 第3のインフレの波は、原材料費高騰などを理由に値上げをする際に自分たちの利益(マージン)もたっぷり上乗せすることによって発生する「利益主導型(マージン上乗せ型)インフレ」です。このインフレは需給の不均衡が理由で起きるものではありません。欧米では下火になったようですが、日本ではまだまだ続いているようです。

 そして現在、労働者不足による賃金コストの上昇が第4のインフレの波を引き起しています。ECB(欧州中央銀行)が追加利下げに慎重なのは、欧州の賃金上昇が止まらないことが理由であり、FRB(米連邦準備制度理事会)も最後まで賃金の高止まりを問題視していました。

 賃金コストの絶え間ない上昇にさらされる企業は、労働者つなぎ止めのために給料を上げ続けるよりも、テクノロジーへの投資に資本を使うことを検討し始めています。これまで人手に頼ってきた作業をロボットに行わせることによって、より少ない労働者でより多くの生産を増やそうとしているのです。

 また、飲食店や小売店では人手不足解消の手段として、店に来る「お客を働かせて」います。最近の居酒屋やスーパーは、多くがセルフレジやスマホアプリを導入していますが、これは労働の観点からすれば、本来店の従業員が行うべき仕事を客が代わりにしているのです。

 そのために必要なスマホというインフラやその通信費さえも客側の負担です。セルフ居酒屋の値段が安く思えても、それは客の労働賃金(の一部)が引かれただけです。店がするべき仕事が減るということは、従業員の時間当たり給料が上昇するという意味でもあります。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,126人のうち73%の822人が、10月は「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かりました。前月は81%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、マイナス46になりました。対ユーロで円高予想が円安予想を上回ったのは3カ月連続ですが、前月のマイナス62よりは少なくなりました。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,049人のうち71%の748人が、10月は「円高/豪ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は80%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、マイナス42でした。対豪ドルで円高予想が円安予想を上回ったのは3カ月連続ですが、前月のマイナス60よりは少なくなりました。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「金やプラチナ地金」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり13個です。(複数選択可)

図:「金やプラチナ地金」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 2024年9月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人は18.22%でした。同選択肢を選択した人の割合は2カ月連続の上昇となり、ウクライナ戦争が勃発した2022年2月の17.3%を上回りました。主な要因は、国内外の金(ゴールド)価格が歴史的高値を更新したという報道が目立ったことだと考えられます。

 金(ゴールド)価格の上昇の背景は、9月18日のFOMCで利下げの開始を決定したこと、そして中東情勢が悪化したことなどが挙げられます。

 筆者が提唱している金(ゴールド)相場を分析する際のテーマは七つあり、そのうち時間軸が短中期のものが三つ、中長期が三つ、超長期が一つです。米国の利下げ開始は「代替通貨」、中東情勢の悪化は「有事ムード」という、いずれも短中期のテーマに分類でき、足元それぞれ金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけています。

 諸メディアによれば、米国では今後も利下げが続く可能性が浮上しています。中東情勢については、イスラエルが隣接するレバノンで活動するイスラム武装組織のヒズボラに対して攻撃を強め、それを嫌気して同武装組織を支援するイランがイスラエルに対して空爆を仕掛けるなど、攻撃の応酬が拡大しています。

 これにより目先では、「代替通貨」「有事ムード」の二つをきっかけとした、金(ゴールド)相場への上昇圧力が続く可能性があります。引き続き、米国の金融政策、中東情勢の方向性、そして「金やプラチナ地金」を選択する人の割合の推移に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2024年9月調査 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2024年9月調査 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成