SNSが株式市場を「実態以上」に押し上げた

 SNSが普及し始めた2010年ごろ以降、情報の受け手は無意識にこれまで以上に「見たいものを見たい」と思うようになりました。SNSが、部分解釈、横と縦のつながりにおける浅い感覚に基づいた取捨選択、そして感情噴出の場であることを考えれば、自然な流れです。

図:SNSが及ぼした情報の受け手と発信者の関係への影響

出所:筆者作成

 こうした流れの弊害の一つが、「見たくないものを見ない」人が増えたことです。情報の発信者はこうした流れを感じ取り、これまで以上に「受け手が見たいものを見せてあげたい」と思うようになりました。いつの間にか「実態」と「思惑」の乖離(かいり)、つまり「経済の歪み」が大きくなってしまいました。

 その結果、半年から1年程度先の「思惑(プラスの思惑は期待、マイナスの思惑は懸念)」を織り込み傾向があるとされる株式市場において、2010年ごろ以降、突出した上昇が目立ち始めました。

 SNSで大きくなった情報の受け手の「見たい」という思いに、情報の発信者が「見せたい」と答え、それらが渦となって期待が膨張し、株価指数の上昇に拍車がかかりました。

図:2010年ごろ以降の米国の主要株価指数の推移(1984年1月を100として指数化)

出所:世界銀行およびQUICKのデータをもとに筆者作成

 株価指数の上昇が、需要(買い手)と供給(売り手)の立場が比較的平等で「実態」に近いとされるコモディティ(国際商品)を圧倒したことの説明は、SNSというキーワードを使わずに行うことは不可能でしょう。