有事の金(ゴールド)で資産形成は困難か
以下は、筆者が考える金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と、先ほど述べた「動機(時間軸)」と「投資戦略(対象)」の組み合わせの関連を示しています。
興奮をかき立てる短中期(局面)に関わるテーマは、有事ムード(戦争などが勃発した際に生じる資金の逃避先需要)、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の三つです。
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と投資対象
中東地域で複数の有事が同時発生した1970年代後半から、ITバブルで株価が急騰した2000年代前半にかけて、この三つのテーマが金(ゴールド)相場を席巻しました。有事の金(ゴールド)、株との逆相関、ドルとの逆相関という言葉が生まれたころです。
危機管理に関わる中長期・超長期(時代)に関わるテーマは主に、中央銀行と見えないジレンマです。これらは2010年ごろ以降、世界分断や民主主義の行き詰まりなどが目立ち始めたころから、長期にわたって金(ゴールド)相場を押し上げてきたテーマです。
興奮に関わる短期売買であれば、有事ムード、代替資産、代替通貨という短中期(局面)の材料に注視しながら行う、商品CFDや商品先物、短期売買を前提とした金(ゴールド)関連のETFや個別株などの売買がなじみます。
危機管理に関わる長期資産形成であれば、中央銀行、見えないジレンマなどの中長期・超長期(時代)の材料に注視しながら行う、純金積立や金(ゴールド)関連の投資信託、長期投資を前提とした金(ゴールド)関連のETFや個別株などの売買がなじみます。
有事ムードにあおられて長期資産形成のために純金積立を行う、中央銀行の保有高増加を手掛かりに短期売買を行う、などの「動機(時間軸)」と「投資戦略(対象)」の組み合わせがそろっていない売買はご法度といえるでしょう。
仮にそうした売買を行った場合、いずれその矛盾に気が付くでしょう。その際は改めて、今から始めようとする投資が「興奮」をきっかけとしたものなのか、「危機管理」をもとにしたものなのかを、問うてみるとよいでしょう。