9月見通し

 9月はどうなるだろうか? まず危機が去ったと思われた円高・日本株暴落の火種はくすぶっている。8月月初の株暴落を受けた国会閉会中審査で、植田総裁は経済・物価見通しが実現するならば利上げを継続するとして、暴落の引き金となった追加利上げ方針を繰り返し、経済諮問会議でも同様の主張を繰り返したもようだ。

 円安を是正したい政府の意向が見え隠れするが、世界に流動性を供給してきた円キャリートレードの巻き戻しは、一つ間違えれば植田ショック第2弾を引き起こしかねない。

 米景気動向もまだ予断は許さない。緩やかなインフレの低下が確認され、パウエル議長は9月からの利下げ開始を示唆した。一方で、雇用の減速から利下げ幅が0.25%でなく0.5%との見方もくすぶっている。FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレと雇用の二つの政策目標を定めているが、インフレの調整でなく雇用の悪化対策として利下げをする必要があるとの見方だ。

 その判断として先行指標であるNFP(非農業部門雇用者数)が注目されるが、8月にこのNFPの大幅改定が行われた。すなわち、これまで堅調と思われていた雇用が実はそうでもなかった可能性が出てきた訳で、今後の数字にどれだけ影響するかが注目される。

 一方で、中東情勢と大統領選関連では少し明るい兆しが見えてきた。

 ガザ地区ではハマスに人質とされた6名の遺体が発見された。これに対しイスラエルではネタニヤフ首相が合意を遅らせているとして、即時停戦を求めるゼネストと50万人規模のデモが発生。同首相にプレッシャーをかけるべく英国は武器輸出を一時停止、米大統領も首相の停戦努力は不十分と非難した。ただ、首相側は譲歩に応じない構えで、まだ先行きは不透明だ。 

 米大統領選ではハリス氏の勢いが弱まった。バイデン大統領のTV演説の覇気の無さを契機にトランプ氏との差が開き、同氏の暗殺未遂を受け大統領選の結果は決まったかに思われた。

 バイデン降ろしの結果、後継に指名されたハリス氏はいわば民主党の希望の星だった。反トランプで民主党が一丸となる中、民主党大会も無難に通過し、世論調査でも予想市場でもトランプ氏を逆転した。

 しかし、徐々に勢いが薄れ、予想市場ではトランプ氏が再逆転している。当初はイメージだけで支持を集めていったが、具体的な政策が徐々に明らかになるにつれ賛否が分かれ始め、また立候補後、初めてのインタビューもおおむね無難だったが、評判通り意味不明な言動を繰り返した部分も指摘された。こうした中、トランプ氏が苦手とする9月10日のTV討論会に注目が集まる。

 ただハリス氏がよほどの失点をしない限り、9月中に「もしトラ」トレードが再開する可能性は低い。さらに、トランプ氏が暗号資産のドリームチームを結成、米国を暗号資産の首都にすると息巻いているのに対し、ハリス氏は暗号資産に対する態度を明らかにしていない。

 しかし、少なくともバイデン政権は暗号資産に敵対的で、また大統領の休暇中にSECはNFTを売買するマーケットプレース最大手のOpenSeaに訴追予告を出した。

 すなわち、特定の暗号資産だけでなくNFTも証券に該当すると言い始めた責任者がハリス氏だ。これだけ、共和党・民主党の暗号資産に対するスタンスに隔たりがある中、機関投資家も11月の選挙の結果が出るまでは暗号資産に手を出しにくい、そうした動きがETF(上場投資信託)フローの減少につながっていそうだ。

BTC・ETH ETFフローとBTC/USD

Bloomberg・Farside Investorsより楽天ウォレット作成

テクニカルから見た9月見通し

テクニカル

BTC/USD(日足)その1

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 BTCはドル建てで史上最高値を更新した3月以降、下降チャネルを形成。8月に下ひげを付けて割り込んだが、結局ダマしに終わりレンジ内に値を戻している。上昇フラッグと呼ばれ、最終的に上抜けを示唆するといわれているが、足元ではレンジの中央付近で方向感も見られず、9月中にレンジブレークしそうには見えない。

BTC/USD(日足) その2

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 もう少し細かく見ると4万9,000ドルから6万5,000ドルまで反発、その半値押しとなる5万7,000ドルでサポートされている。7万ドルからの下落の半値戻しはクリアしており、この5万7,000ドルを割れない限り上目線で良さそうだ。

 一目均衡表で見ると雲の上限で跳ね返され、雲の下限に上値を押さえられていたが、雲の中に入っている。これはしばらく方向感が薄れることを示唆しているが、雲が薄くなる月後半には上下どちらかに振れることとなる。

アノマリー

BTC月別騰落一覧

Bloombergから楽天ウォレット作成

 アノマリー的にはBTCは1年で最も弱い時期に入っており、8月は案の定、陰線となった。8月の陰線となった8回中5回は9月も陰線となっているが、その逆も3回ある、ただ、その3回の上昇率はいずれも1桁台だ。

まとめ

 9月のBTC相場はもみ合い推移か。BTCは半減期後の低迷期に入っており、アノマリー的にも8月9月は1年で最もパフォーマンスが悪いシーズンだ。材料的にも明るい兆しは見えてきたが、まだ方向感が出るには至っていない。

 特に注目は大統領選挙で、この結果が出るまでは機関投資家の動きも鈍そうだ。ただ、9月からいよいよFRBが金融緩和に移行する可能性が高く、BTCは底堅く推移しそうだ。

BTC半減期の価格イメージ