日経平均と企業業績はパラレルの関係にある中で現在の局面は

 グラフ2における青線、橙線は、日経平均構成銘柄の来期と再来期のアナリスト予想を基に、日経平均の予想EPSを独自に分析したもので、24カ月先のEPSをイメージしたものになります。

 グラフ2において、青線や橙線をPERで表すと14.29倍の線になります。しかし、グラフ1と同じように、日経平均と青線や橙線はほぼパラレルに推移しており、青線や橙線が右肩上がりになると、おおむね日経平均は上のほうに乖離する動きとなっていることが見て取れます。

 8月23日時点の橙線の予想EPSに14.29倍をかけた値は3万2,500円あたりとなっていて、3月5日に急落したときには橙線を下回るまで下がりました。しかし、その後再び上昇し、また上のほうに乖離する動きとなっています。

 グラフ1、グラフ2で見ていただいたように、基本的には日経平均と企業業績はパラレルの関係にある中で、今後についてはどうなるのでしょうか。今後の動きを考えたときには、経験上、以下三つの局面に分けることができると考えられます。

  1. 企業業績が伸びている局面
  2. 企業業績が伸び悩んでいる局面
  3. 企業業績が悪化に転じてきた局面

 足元において、アナリスト予想で上方修正も下方修正も何もなければ、橙線の予想EPSは、分析上1週間で4.3円増えていく形(8月23日時点)となっています。

 アナリスト予想で上方修正も下方修正も何もない場合の値(8月23日時点ではプラス4.3円)を基準として、それよりも高ければ「1.企業業績が伸びている局面」、それ以下だがマイナスにはなっていなければ「2.企業業績が伸び悩んでいる局面」、マイナスになっていれば「3.企業業績が悪化に転じてきた局面」と仮定します。

 経験上それぞれの場合で考えられる日経平均を、8月23日時点の値である3万2,500円で計算すると次のようになっています。

「1.企業業績が伸びている局面」の場合
橙線の予想EPSに14.29倍を掛けた値の10~20%上
→3万2,500円の10~20%上=3万5,750~3万9,000円

「2.企業業績が伸び悩んでいる局面」の場合
橙線の予想EPSに14.29倍を掛けた値~10%上
→3万2,500円~10%上=3万2,500~3万5,750円

「3.企業業績が悪化に転じてきた局面」の場合
橙線の予想EPSに14.29倍を掛けた値~10%下
→3万2,500円の10%下~3万2,500円=2万9,250~3万2,500円

 では、現在はこの三つのうちのどの局面にいるのかですが、「1.企業業績が伸びている局面」にいます。

 8月23日の週は、上方修正も下方修正も何もない場合の4.3円を上回るプラス8.02円となっています。また、8月2日の週~23日の週までの4週間で見ても、週平均でプラス11.04円で、企業業績は大きく伸びている状況にあります。

 このため、現時点での業績から見たときの日経平均の妥当値は、3万5,750~3万9,000円ということになります。

 米国景気の悪化懸念や、為替が円高に転じてきたことにより、株式市場に対してネガティブに捉える見方も増えてきていますが、足元のデータにおいては、まだ企業業績の悪化は感じられず、それどころか逆に伸びている状況にあります。

 今後、いつ企業業績が悪化してくるか、もしくは、このまま悪化することなく伸び続けるのかは分かりません。過去において、株式市場が大きく下落する局面では企業業績の悪化が伴っているので、現時点で「株安に賭ける」というのもリスクがあります。そのため、「株安に賭ける」にしても、企業業績の悪化のシグナルが出てからでも遅くないと考えています。

 いずれにしても、日々の値動きに踊らされて一喜一憂することのないように、俯瞰して見ることのできる何らかの基準を持っておくことは、冷静な状態で投資判断していくためにもよいのではないかと私は考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。