半導体関連株はシリコン・サイクルを1年近く先取りして動く

 半導体産業は波の大きい産業です。誰もが強気で、半導体は絶好調がいつまでも続くと思っている時に突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう、半導体産業は永遠に復活しないと思われる半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。

 半導体関連株は不思議なことに、1年近く、シリコン・サイクルを先取りして動く傾向があります。半導体ブームのさなかに、半導体関連株の株価が下がり始めて「変だなぁ」と思っていると、しばらくして急速に業況が悪化し、1年後に半導体不況になっていることがあります。

 逆に、半導体不況のさなかに半導体関連株が急騰を始めることもあります。半導体は成長産業なので、半導体不況で下がっているうちに買っておこうと考える投資家が多いために、そうなるのだと思います。

 以下、1998年以降のシリコン・サイクルを振り返ります。まず、過去1998年以降の世界半導体出荷額の動きを見てください。そこに、過去26年のシリコン・サイクルが表れています。

世界半導体出荷金額(3カ月移動平均):1998年1月~2024年5月

出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくと分かるとおり、世界の半導体産業は右肩上がりの成長産業です。ただし、シリコン・サイクルといわれるブームと不況の大きな波をつくる産業であることも分かります。

 この特色ゆえ、半導体関連株は、長期的には大きく上昇しているものの、短期的には激しく乱高下します。

 以下に、2017年以降の半導体産業のサイクルと株価のサイクルを簡単にまとめました。

シリコン・サイクルと半導体関連株の動き:2017年~2024年5月

出所:楽天証券経済研究所が作成

 表の説明をよく読んでいただくと気付くと思いますが、半導体関連株はこれまでシリコン・サイクルを1年くらい先取りして動いてきました。

【1】半導体ブームの中で関連株が急落した2018年

 シリコン・サイクルでは上昇局面なのに、株価が急落しているのが2018年です。厳密にいうと半導体業界が大ブームに沸いていたのは2018年前半まででした。年後半は、ブームの中心にあったフラッシュメモリ(データセンターやスマホの記憶媒体に使われる半導体)やDRAM(一時的なデータ保存に使われる半導体)の需給が緩み、市況が下落し始めていました。

 さらに、米中ハイテク戦争の影響を受けて、中国での需要鈍化が鮮明になりました。半導体ブームの終焉(しゅうえん)を先取りして、日本の半導体関連株は、2018年は1年間にわたり、大きく下がりました。

【2】半導体不況の中で関連株が急騰した2019年

 2019年になり半導体不況が始まると、株価は逆に急騰を始めました。次のブームを織り込む動きが始まっていました。

【3】半導体ブームの中で関連株が急落した2022年

 2022年はまだブームが続いていましたが、メモリ市況が下落するなどブーム終焉を思わせる事象が現れていました。次の不況を織り込んで、株価は急落しました。

【4】半導体不況の中で関連株が上昇し始めている2023年

 2023年は半導体不況の年ですが、半導体関連株はすでに上昇を始めています。2024年からのブーム復活を先取りした動きと考えることができます。

 実際、2024年に入り、半導体ブームの回復が始まっています。生成AI関連の半導体が供給不足となっています。

 それでは、実際の半導体関連株の動きを、半導体株価指数で見ましょう。

半導体株価指数と日経平均の動き:2012年1月~2024年7月(24日)

出所:2012年1月末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 それでは、ここからさらに半導体株を買っていけるでしょうか? 私が見る限り、半導体関連株は、すでに底値から相当大きく上昇し、割安感がありません。ここからは積極的には投資できないと考えています。

 半導体関連株は1年先のシリコン・サイクルを織り込んで動きます。2025年以降もブームが続くと確信はできないので、半導体関連株については、早めに大きく上昇した半導体製造装置を利益確定売りし、まだあまり上昇していない半導体材料株に選別投資していくタイミングかと思います。

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