H株割当増資で50億HKドル弱調達、買収2件は割高も長期シナジーに期待

現地コード 銘柄名
01171

エン鉱能源集団

(ヤンクワン・エネルギー・グループ)

株価 情報種類

17.58HKD
(6/6現在)

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 中国の石炭大手、エン鉱能源が6月3日大引け後に実施したH株の第三者割当増資は市場のサプライズとなったが、これで今後数カ月間、追加のH株割当増資を行うリスクはほぼ消えた。BOCIは最近の買収2件(炭鉱機械会社とオンライン物流会社)について、価格面ではさほど魅力的な取引とは言えないとしながらも、買収規模は比較的小さく、長期的にはシナジー効果も期待できるとの見方。増資に伴う希薄化と買収2件を反映させる形で、2024-26年の予想EPS(1株当たり利益)を2-3%減額修正した。ただ、現在株価(H株)の2024-26年の予想配当利回りは平均6.4%と、魅力的な水準にあると指摘。目標株価を引き下げながらも、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 エン鉱能源は3日大引け後、H株2億8,500万株の割当を実施し、約49億6,000万HKドルを調達した。この時点で、同社A株はH株より39%高値で取引されていたため、本来であればA株の増資が考えられるが、A株を選択した場合は認可手続きに時間がかかる。BOCIは今回の増資のメリットとして、少なくとも向こう3カ月は、追加のH株増資の可能性を排除できるとしている。

 同社は5月31日、15億5,500万元の出資を通じて、物泊科技(Wubo Technology)の株式45%を取得すると発表した。物泊科技は荷主とトラック運転手をマッチングさせるオンライン物流プラットフォームを運営し、2023年の売上高は219億元、純利益は8,710万元(粗利益率は2%)。エン鉱能源は取引に当たり、物泊科技の前株主から、同社利益が2024年の9,880万元から2028年には1億3,910万元へ増加するとの利益保証を取り付けた。買収価格は物泊科技の2024年予想PER(株価収益率)換算で35倍に当たり、米上場のトラック配車大手、満幇集団(フル・トラック・アライアンス)の現在株価の同18.2倍に比べて割高。ただ、BOCIは前株主による利益保証には、買収後のエン鉱能源(鉄道や港湾を運営する)とのシナジー効果は含まれていないとの見方。さらに、エン鉱能源の「5つの発展戦略」の1つがスマート物流であることに言及している。

 同社はまた、3月上旬に独SMT Scharf AGの株式52.7%を3,220万ユーロで取得することに合意した。SMT Scharfは鉱物・石炭採掘やトンネル掘削など、地下採掘分野のソリューションプロバイダーであり、採炭機械の製造を手掛ける。2023年の純利益(前年比66%減の490万ユーロ)を考えれば、買収価格に割安感はないが、エン鉱能源の「5つの発展戦略」のもう1つはハイエンド機器製造事業となっている。

 BOCIは予想EPSの下方修正を受け、H株の目標株価を引き下げた。引き続き2024-26年の予想平均配当利回りを5.5%と想定し、目標株価を設定。新たな目標値は2024年予想PERでは9.6倍相当となる。一方、レーティング面の潜在リスク要因として、石炭価格が急落する可能性やコストが予想外に膨らむ可能性を挙げている。