株式投資の世界での「高所恐怖症」とは?

 株式投資の世界では「高所恐怖症」というものがあります。それは、株価が底値からかなり大きく上昇した株を、高いところで買うのが怖くて買えない、というものです。

 先日も個人投資家の方から、「業績も良くこれからも成長しそうな銘柄を見つけたのですが、すでに株価が安値から10倍になっているので、怖くて買えないんです」という相談を受けました。

 確かに筆者も、株式投資を始めてしばらくは、できるだけ安く買おうとしていましたから、株価が安値から5倍、10倍にもなっている銘柄を買いたいとは全く思いませんでした。

筆者の考え方が変わるきっかけとなったファンド運用者の発言

 しかしその考え方が変わるきっかけとなったのが、成長株を中心に投資しているファンドを運営している筆者の知人でした。

 彼のファンドは、株価がすでに5倍、10倍と上昇している銘柄を、高値でどんどん買っているのです。

 筆者は「なぜそんな高いところで買えるの?株価が大きく下がってしまうかもしれないのに」と問いました。

 それに対してファンド運用者である知人は「投資しようとしている会社の価値が、今ついている株価よりも高いと思っているから買っているんだ。だから今の株価が過去どれだけ上昇したかなんて関係ないし、全く気にしていない」と答えました。

 それまで、できるだけ安い株を買おうと思っていた筆者は、頭を強く打たれた気がしました。それからは、筆者もすでに株価が安値から大きく上昇している銘柄であっても臆することなく買えるようになったのです。

実態を伴った上昇かどうかがポイント

 ただ、株価が大きく上昇している株をやみくもに買っていては危険です。株価が上昇している理由が、業績が伸び続けていることにより企業価値が増大しているため、というのであれば問題ありませんが、中には期待先行で株価だけ大きく上昇している「バブル状態」の銘柄もあるからです。

 例えば5年間で売上高や利益が3倍になっているような銘柄であれば、その間に株価が5倍、10倍になっていても全く不思議ではありません。

 でも、売上高も増えていない、利益もほとんど上がっていないという銘柄の株価が5倍、10倍になっているのであれば、それは安易に手を出すのは危険です。

 あくまでも企業業績が伸びることにより企業価値が増加を続けていて、かつ今後も業績の拡大が期待できるような銘柄を選ぶのが重要です。

安くなるのを待っていては、成長株は永遠に買えない

 個人投資家の方に多いのが「逆張り思考」です。株価が大きく上がっているものは買わず、大きく下がったら買う、という考え方です。

 もし、リーマン・ショックのような暴落が起き、業績が伸び続けている銘柄の株価でさえも大きく下落するような状況であれば、逆張りで買い向かう、というのも一つの戦略です。

 しかし、暴落が起きず株価上昇が何年もの間続くようなときは、業績が伸び続けている成長株の株価が大きく値下がりするということはなかなかありません。

 例えばもともと500円だった株価が5,000円になった銘柄を、「1,000円になったら買おう」と思っていたならば、永遠にその銘柄を買うことはできないかもしれません。1,000円まで下がるどころか、1万円、2万円、そして5万円とさらに大きく上昇する可能性の方が高いでしょう。

 もし1,000円まで下がったとしたら、その株は業績がかなり悪化してしまっており、すでに投資対象とはならなくなっているでしょう。

それでも「怖い」と感じるなら

 業績が大きく伸び続けている成長株の株価を見ると、株価が200倍、300倍になっているものも決して珍しくありません。安値から株価が10倍に上昇した後、さらに20倍、30倍になることも大いに考えられるのです。

 それでも株価が安値から大きく上昇している株を買うのが怖いと感じるのであれば、あらかじめ「どこまで下がったら損切りするか」のルールを決め、それを実行すればよいのです。

 怖いと感じるのは、株価が大きく下がって大損をしてしまうという恐怖心があるからです。だから事前に損切りの価格を決めておけば、それ以上の損失は防げますから恐怖心は和らぐはずです。

 また、突然の悪材料出現により株価が大きく下がってしまうこともありますから、一つの銘柄に資金を集中させないようにしましょう。また、決算発表の結果により株価が急落する可能性もあるので、決算発表の直前は買わないようにする、というのも有用です。

 業績が伸び、企業価値が高まれば、長い目で見て株価は上がり続けます。日経平均株価も1950年からみれば400倍になっているのです。安値から大きく上がっているから怖くて買えない、という「高所恐怖症」を克服することで、個人投資家としての成長ができるはずです。

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