コーヒーからドリアンに転作

 複数の報道は、ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国としていますが、ロブスタに限って言えば世界1位です(USDAのデータより)。世界1位のロブスタ生産国であるベトナムは、中国の旺盛なドリアン需要が入り込んだことで、大きな変化にさらされています。

 1990年ごろから続いたベトナムのロブスタコーヒー生産量の長期増加トレンドは、2021年にいったん、終わったと考えられます。2021年比に比べると、2022年、2023年ともに、10%以上、減少しました。

図:ロブスタコーヒーの生産量(上位3カ国) 単位:1000袋(1袋=60キログラム)

出所:USDA(米国農務省)のデータを基に筆者作成

 同国で、ロブスタからドリアンへの転作が進んでいると報じられています。一部の報道は同国のロブスタの生産量が2021年をピークに減少した原因を異常気象としていますが、中国が同国産の生鮮ドリアンの輸入を許可したのが2022年だったことを考えると、ドリアンへの転作進展が、生産量のピークアウトの一因になった可能性が浮上します。

図:ベトナムのコーヒー収穫面積(前年比)

出所:FAO(国際連合食糧農業機関)のデータを基に筆者作成

 上の図の通り、2022年のベトナムのコーヒーの収穫面積の伸び(前年比)は、2007年以降で最低になりました。2022年は、中国がベトナム産の生鮮ドリアンの輸入を許可したタイミングです。生産量の減少と収穫面積の伸び鈍化は、同国でコーヒーからドリアンへの転作が進んだことを示唆しているといえます。

 一部では、ベトナムでドリアンを作って得られる収益は、コーヒーを作って得られる収益の2倍ともいわれています。冒頭で述べた通り、足元の価格が2022年比で1.8倍以上になっているのは、世界ナンバーワンのロブスタ生産国であるベトナムが、中国のドリアンブームによって岐路に立たされていることを、反映していると考えられます。